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シリーズ 脱北者の脱南物語④ 「海外にある脱北者支援NGO」 玄麦

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中朝国境地帯の監視強化をはじめ、中朝関係の悪化等が原因となり、ここ1-2年、北朝鮮を逃れる脱北者たちの数は激減した。結果的に、中国内で潜伏生活をする脱北者の状況も厳しくなった。当面の間、脱北者問題が注目を浴びなくなる状況が続くであろう。

とはいえ、周知のごとく、すでに3万人以上の脱北者が韓国に定住しているし、そのうち、第三国へ再移住する人びとも増えた。要するに、脱北者コミュニティは韓国、ヨーロッパ諸国、北米、オーストラリア、日本などの国と地域で形成されている。人が集まれば、何らかのグループや結社が組織される。つまり、これらの国や地域では当事者ならびに脱北者を支援するNGOが結成されている。いうまでもなく日本のNGOである「北朝鮮難民救援基金」もその一つである。今回(最終回)は、欧米諸国の脱北者関連NGOについて少し考えてみたい。

+欧米の脱北者関連NGO


ヨーロッパには「在ヨーロッパ朝鮮人総連合会」という当事者組織が、難民資格で定住した人々を中心に組織化されている。そして、脱北者が多く暮らす英国には「在英朝鮮人協会」や「Korean Information Centre」などがある。フランスにも「在仏朝鮮難民後援会」などが活動を展開しているらしい。

北米にはカナダのトロントやアメリカの西海岸、東部など韓国系の移民者が多く暮らす地域では、いくつかのNGOが活動を展開している。すでに紹介した通り、オーストラリアにも「在豪北韓移住民後援会」が結成されて、短期留学やワーキングホリデー事業の推進などを韓国社会と協力しつつ行っている。 

+生活情報交換から教育支援活動まで


その主な活動は、異国で生活する上で必要な情報交換をはじめ親睦を図ることが目的である。しかし、なかでも私が関心を寄せている活動は、次世代の若者たちに対して行う人材育成事業である。韓国に一時的にでも滞在した脱北者たちが韓国を離れて第三国に再移住する理由には様々なものがある。平たく言えば、差別や偏見がないところで暮らしたいというのが理由だが、より具体的に話を聞いてみると、親(自分たち)の世代は我慢せざるを得ないが、子どもたちにはそのような不条理を体験させたくない。

だから、北でもなく南でもない第三国で朝鮮半島出身者として普通に暮らしたいだけであるという声が聞こえてくる。「脱北者(民)」「セトミン」「北韓離脱住民」などの呼び方にも不満を持っている。(注:それを知りつつも、本シリーズでは便宜上「脱北者」と使ってきた。)呼称については、適切な表現を当事者自らも模索しつつ「ウリサラム」(私たち)と呼んだり「自由北韓人」や「脱北自由民」と呼んだりもする。

「北韓」という表現が使われる場合は、彼(女)らがすなわち韓国経由であることを表すか、「韓国に帰属していることをアピールしている」ともうかがえる。私とソーシャルネットワークでつながっている脱北者たちの韓国政治や北朝鮮関連問題への発言でそのことが目立つ。

最近では次世代の人材育成に力を入れるNGOの事業も増えてきた。韓国政府も脱北者の若者に対する特別海外研修枠を設けている。

+当事者組織のむずかしさ


脱北者関連のNGOは、当事者たちによる自助的な組織もあれば、韓国系コリアンのコミュニティや教会組織とのつながりが強いNGOもある。人権NGOなどのプログラムやキャンペーンとして動いている場合もある。私はヨーロッパで結成されているNGOのように、当事者たちによる組織が増えることが大切、と考える。しかし、関連組織のホームページなどに書き込まれている当事者間の論争や書き込みを見る限り、活動がスムーズに行われているようではない。端的にいえば、代表性の問題がしばしば現れてくる。

例えば、「なぜ、Aがこの組織のリーダーになったのか、それはおかしいとか、Bという輩は私たちを政治利用している」などの不満がしばしば表面化してくる。今では北朝鮮を逃れた脱北者たちのバックグランドはかなり多様である。高学歴の人もいればそうでない人もいる。平壌などの都会で比較的富裕な暮らしをしていた人もいれば辺境の貧困層出身もいる。

同じ北朝鮮出身者であっても、お互いのつながりは希薄であるし、むしろ互いに警戒することも日常茶飯事だ。結果的に組織が分裂したり、活動そのものが停滞・解散してしまう場合も見られる。当事者間の信頼関係が形成されていないために、誹謗中傷するような書き込みが散見される。とても残念だが、このようなことがオープンに行われているのもデモクラシーが保障されている地に暮らしているから享受できるのかも知れないと思ったりもする。

+ホスト社会の役割


すると、コリア系のコミュニティや脱北者を受け入れるホスト社会の政府、NGOに必要なことは何だろうか。定住支援に限っては、何よりも、当事者間の活動がスムーズに展開されるように仲裁したり、サポートしたりすることに尽きると思う。主役はあくまでも当事者。ホスト社会は移住者問題における脇役、という視点が必要だ。

その点、日本の市民、コリア系住民やそのコミュニティ、さらに日本にある脱北者支援NGOの役割は何だろうか。北朝鮮問題をとりまく内外情勢や脱北者問題の推移の再確認が必要な時期であり、それに基づく今後の活動方針を決めることが不可欠であると私は考える。

(文/玄麦/北朝鮮難民救援基金NEWS Jan 2016 № 098より加筆・修正し転載)

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