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渋谷区パートナーシップ条例から1年、でもLGBTモデル自治体は淀川区を推します!

2016年03月20日 14時45分 JST | 更新 2017年03月20日 18時12分 JST

3月に入って、渋谷区の同性パートナーシップ条例成立からもうすぐ1年なので、何かコメントを、という取材がありました。渋谷区の条例の影響力は確かに大きく、ほとんどのメディアで大きく取り上げられ、これをきっかけにしてLGBTに関する取り組みを始めた企業もあります。私も渋谷区の社会への影響力は本当に素晴らしかったと思っています。

しかし、自治体の取り組みとして全国のモデルにすべきなのは、渋谷区ではありません。日本のLGBTモデル自治体は、大阪市淀川区がいいと私は考えています。虹色ダイバーシティは企業向けの講演やコンサルティングが注目されがちですが、実は、同じく大阪のNPOであるQWRCと共同で「淀川区LGBT支援事業」を受託しており、自治体の取り組み支援にも熱い思いを持っています。

「淀川区LGBT支援事業」特設ホームページ

http://niji-yodogawa.jimdo.com/

では、なぜ淀川区か?それは、以下のような理由です。

1、 受益者が多い

淀川区はLGBTに関する電話相談や、当事者が集まるお茶会「コミュニティスペース」の運営をしています。

週に2回の電話相談には年間1,000件以上の着信があり、そのうち100件以上の相談を受信しています。初年度からこれだけの着信があり、相談の半数以上が初回相談というのは、電話相談としては非常に珍しいそうです。

コミュニティスペースは月に2回実施していますが、初年度は292人、2年目は(現時点までで)485人が参加しました。自治体が運営する安心感もあって、10代から60代まで、幅広い参加者があります。LGBTかつ精神疾患など、ダブル、トリプルのマイノリティ性を持つ人も多く参加しています。「ここなら自分のような人も受け入れてもらえる」と話してくれる人もいて、この場所が社会とのつながりの最後の砦になっている人も多いと感じています。

対して、現時点で、渋谷区、世田谷区のパートナーシップに関する公的書類の発行数は、足しても2桁と聞いています。淀川区の事業は実際の受益者の数で桁が違います。

2、 職員の理解度が高い

淀川区は「全職員」が2時間半のLGBT研修を受けています。生活保護、子育て支援、障害者支援、公衆衛生の担当者から、放置自転車撤去の担当者まで、全員です。LGBT支援事業の旗振り役は民間出身の区長でしたが、今はほぼすべての職員がLGBTに関する基礎知識があり、施策の必要性を理解しています。だから当事者も安心して相談ができるのです。

LGBT基礎知識をもっと広げたいと、当事者ではない職員が、学校やPTA、中小企業等に対して出前授業をしたりもします。こんな自治体はなかなかないと思います。

「レインボー出前講座」

http://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000332089.html

たまたま近くに、職場の問題を専門にする虹色ダイバーシティ、教育・医療・福祉を専門にするQWRCという、全国でも指折りの実績を持つLGBT支援団体があり、気軽に意見交換できる「地の利」があることも淀川区の強みです。

3、 地域住民も取り組みを理解

淀川区のLGBT施策を一般の住民がどう見ているか、ですが、昨年淀川区で調査を実施したところ、回答者の約8割が取り組みに肯定的であるという結果が出ました。これは非常に高い数値だと思います。

「LGBTアンケート調査報告」

http://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000335725.html

結果の中で興味深いのは、2割の人が区の広報紙でLGBTに関する言葉を見た、と回答していることです。2013年に「淀川区LGBT支援宣言」をしてから、淀川区はたびたび広報紙でLGBTの話題を掲載していました。おそらく高齢者ほど、区の広報紙をしっかり読んでいて、それで啓発が浸透してきているのではないかと思います。これは2年、3年と、地道な取り組みを続けた成果です。

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自治体の施策は、地域住民の健康や命を守るためにあります。LGBTの生涯にわたる課題は、イジメ、メンタルヘルス、自死、就職差別、貧困などであり、まさに健康と命に関するハイリスク層と言えるでしょう。パートナーシップ条例や同性婚では、LGBTの生涯の課題の、ほんの一部分だけにしか対応できないのです。

「淀川区LGBT支援事業」をやってみて痛感しているのは、LGBT施策は、首長や一部の職員だけの取り組みではとても足りない、ということです。障害者に関する基本的な配慮を全部局の職員が知っているように、LGBT支援も自治体職員の日常業務の一環にしなければ、と思います。

実際、淀川区には全国から40を超える自治体職員や議員の視察、問い合わせが来ているそうで、その中にはLGBTに関する取り組みがニュースになった自治体、渋谷区、宝塚市、那覇市、横浜市なども含まれています。もうすでに淀川区はLGBTモデル自治体としての機能を果たしていると言えるでしょう。

ちなみに、3月はいわゆる「就活」スタートのタイミングでもあり、LGBTの就活に関して、どう配慮したらいいのかという企業からの相談も増えています。

虹色ダイバーシティでは、就活にあたって面接官に配慮して欲しいことを5分でまとめた動画を作成し、YouTubeで無償公開しました。是非就活に携わる方は、こちらをご覧頂ければと思います。

【就活・面接官向け】5分で分かるLGBT基礎知識

日本語字幕も付けましたので、聴覚障害の方や会社で音声が再生できない方は、YouTubeの日本語字幕をオンにしてご覧ください。