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【スペイン・サンティアゴ巡礼】"人工的な自然"とゴーストタウン

2017年03月08日 02時45分 JST

世界でもっとも有名な巡礼地のひとつである、スペイン北西部のキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ。

日本人女性と結婚し、ハネムーン代わりにそのサンティアゴを目指して巡礼路を歩くことにした、ドイツ人のマンフレッド・シュテルツ氏の手記をお届けしています。

巡礼10日目。心打たれる景色に出会いながらも、その「異変」が気になる彼は......?

10th day 〈Azofra → Villamayor del Rio, 33.4km〉

ほかの旅人たちがすでに歩き出すなか、僕たちは町のバルでコーヒーと巨大なクロワッサンで朝食をとった。

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空のペットボトルに補充した宿の水が少し匂ったので、小さな商店で水を新しく購入。その商店は、暗くて、奥行きがあって、信じられないほどたくさんの、そして古びたものが売られていた。

妻はちょっと元気を回復したようだ(もちろん昨日のライスのおかげに決まってる!)。僕たちはハイスピードで歩き出した。ほかの旅人たちをどんどんと追い越して、あっという間に約10km先の次の町シルエニャ(Ciruena)が向こうに見えてきた。

麦畑が僕たちを取り囲んでいる。遠くにはワイン畑とトウモロコシ畑。見渡す限り、人の手の入っていない土地は見えない。もし「自然を楽しみたい」と思うのなら、カミーノじゃないところへ行ったほうがよい、と僕は思う。

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蝶もいないし、蜂もいない。母親の小さな庭ですら、たくさんの蜂や、そのほかの虫たちが夏中花のまわりで忙しそうにしているのに。このあたりではきっと大量の農薬が使われていて、彼らは死に絶えてしまったに違いない。

しばらく歩くとシルエニャに到着した。比較的新しい家が立ち並んでいるが、人の気配はなく、まるでゴーストタウンみたいだ。

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町を通り抜けようと足早に歩いていると、タバコをくわえて道ばたにすわっていた老人が「サンティアゴ?」と尋ねてきた。僕たちが頷くと、まるで反対方向を指さす。不審に思って地図をチェックすると、ああ、間違っているのは僕たちのほうだった。ありがとう!

開けた土地を引き続き行く。少し高台にさしかかって、雪をかぶった山と、次の町サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ(Santo Domingo de la Calzada)が見えてきた。

周囲に広がっている産業エリアを抜け、町の中心へと差しかかったところで休憩を取ることにした。バルに座り、コーヒーとオレンジジュース、サンドイッチを食べる。僕も妻も、まだ体は本調子じゃない感じだった。

町を抜けると、再び畑が広がり、小さな村々が続いた。風が少し強くなってきた。しかし空は青く、太陽は僕たちの背中を照らし、道はずっと前に続いている。道には僕たちの影が差している。風が木々を揺らして、ふわふわとした、まるで雪のような種を飛ばした。

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僕も妻も足を止めた。「雪」は陽光の中、空の青と、木々の緑をバックに舞って、前言撤回、まるで絵画のように美しい景色だった。妻は本当に幸せそうで、そんな彼女を見て僕もうれしくなった。

ラ・リオハ州から州境を越え、カスティージャ・イ・レオン州に入ったあたりで宿を取ることにした。が、ガイドブックにおすすめされていたアルベルゲは閉まっていた。Mein Gott!  もう28kmも歩いて来ていて、かなりくたびれていたのに、次の町は3.7kmも先だ。

太陽がじりじりと照り付けるなか、僕たちは仕方なく再び歩き出した。さっきの感動はどこかへ消え失せてしまっていた。

やっとのことで次の村にたどり着いて、アルベルゲに転がり込んだ。部屋は......空いてるとのことだ! ありがたい。5€をベッドに、8€を夕食に、3€を朝食に、計16€を支払う。僕たちは部屋に入って荷物を下ろし、シャワーを浴びて洗濯をした。素敵な庭がある、なかなかいい宿だった。

少し昼寝をしたら、もう夕食の時間だ。野菜スープ、サラダ、肉にポテト、パン。どれもフレッシュで美味しく、野菜は自家栽培だとオーナーが言った。

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部屋にはほかに、アメリカ人のカップルがいて、少しおしゃべりを楽しんだ。ワインのグラスを片手に庭でくつろいでいる旅人たちもいたが、僕たちはもう眠ることにした。ああ、なんだか長い一日だった。

9日目の手記を読む

※この手記は、妻で編集者の溝口シュテルツ真帆が翻訳したものです。妻の手記はnoteで公開しています。