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クマムシ固有のタンパク質に放射線からDNAを守る作用

2016年11月04日 00時21分 JST | 更新 2016年11月04日 00時23分 JST

クマムシから発見された新規タンパク質をヒト培養細胞に導入すると、放射線耐性が向上した。

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クマムシは極限環境に耐える能力でよく知られている。

STEVE GSCHMEISSNER/SPL/Getty

緩歩動物、別名クマムシは、体長0.1〜1mm程度の水生無脊椎動物で、イモムシとハダカデバネズミの中間のようなずんぐりした姿をしている。クマムシは究極の耐性を備えた生物で、ほぼ完全な脱水状態や宇宙空間など、さまざまな極限環境に耐えることができる。

今回、緩歩動物の数ある超絶能力の1つについて、その源の一端が明らかにされた。有害なX線に対する抵抗力をもたらす保護タンパク質がクマムシゲノムに見つかったのだ。さらに、その「抵抗力」は、ヒト培養細胞にも導入可能であることが示された。この研究成果はNature Communicationsに9月20日付で掲載された(参考文献1)。

研究を主導した東京大学の分子生物学者、國枝武和は、「X線耐性は、この動物が過酷な脱水に適応した際の副産物と考えられます」と話す。過酷な脱水は生体内の分子に大打撃を与え、X線のようにDNAを切断することもあると國枝は説明する。

研究チームは、緩歩動物がそのような過酷な条件からどのようにして身を守っているかを明らかにしようとした。國枝によれば、クマムシの遺伝子を哺乳類細胞に導入することで、その遺伝子の役割が調べやすくなるという。そこで研究チームはまず、ストレス耐性の特に強いヨコヅナクマムシ(Ramazzottius varieornatus)という種のゲノム塩基配列解読に着手した。次に、ヒトの培養細胞を操作してクマムシ体内のパーツ(部品)を産生させ、クマムシに抵抗力を与えている要素を特定した。

最終的に國枝らは、Dsup(Damage suppressor)というクマムシ固有の新規タンパク質が、放射線や酸化ストレスからヒト培養細胞のDNAを守り、X線によるDNAの傷害が約40%抑制されることを発見した。

ゲノムの宝物の発見

クリシャンスタード大学(スウェーデン)で緩歩動物を研究する進化生態学者Ingemar Jönssonは、「DNAの保護と修復はあらゆる細胞の基本的な構成要素であって、がんや加齢を含む多くのヒト疾患において主要な問題となっています」と語る。

このことから、國枝らの今回の研究成果は「医学的にとても興味深い」とJönssonは言う。ヒト細胞のストレス抵抗力を強化できる可能性を秘めており、いつの日か、放射線治療を受ける患者の利益となる可能性があるのだ。

國枝も今回の研究成果について、放射性物質を扱う施設で労働者を放射線から保護したり、あるいは火星のような極限環境で作物を栽培したりするのに役立つかもしれないと話す。

別の緩歩動物種のゲノム塩基配列解読(参考文献2)に協力したノースカロライナ大学チャペルヒル校(米国)の生物学者Bob Goldsteinは、今回の研究について、興味深く巧みなものだと評価する。そして、著者らの「今後もこうした発見が次々となされるだろう」という予測を妥当なものと考えてもいる。

「緩歩動物は、多種多様な極限環境に耐えることができます」とGoldsteinは言う。つまり、緩歩動物は身を守る術をいろいろ持っていると考えられるわけだ。「私たちはまさに、緩歩動物のゲノムにある宝物を探り始めたばかりなのです」とJönssonは語る。

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161104

原文:Nature (2016-09-20) | doi: 10.1038/nature.2016.20648 | Tardigrade protein helps human DNA withstand radiation

Jason Bittel

参考文献

  1. Hashimoto, T. et al. Nature Communications (2016).
  2. Boothby, T. C. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA112, 15976-15981 (2015).

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