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「3年育児休業」の問題点 -シングルファーザーのつぶやき(土堤内昭雄)

2013年05月24日 17時48分 JST | 更新 2013年07月23日 18時12分 JST

安倍政権が、3本目の矢として掲げる「成長戦略」の中核として、女性の活用を打ち出した。具体策には、保育所待機児童の解消や育児休業(育休)の3年延長がある。「3年育休」については賛否両論*があるが、私は基本的に反対の立場だ。その理由は次のとおりである。

第一に働く人(主に母親)のキャリアにとってマイナスになると考えるからだ。企業におけるビジネスツールやスキルの変化は著しい。休業期間中のスキルを維持するための支援プログラム等もあるが、3年の育休後の復職は厳しいと言わざるを得ない。結果として、女性の育児役割の固定化や二人目以降の出産の躊躇に繋がり、「3年育休」は少子化対策や女性の力を活かすことにはならない。

第二に、業務環境が大きく変化する中、企業にとって3年間の育休取得者を雇用し続けることは、そのコスト負担と人員配置の不確実性から事業リスクがあまりに大きい。そのリスクを考えると、企業は女性人材の採用を控え、女性全体の雇用率が低下することが懸念される。また、企業は女性の重要ポストへの起用を避け、女性の補助業務化が進む。「成長戦略」として女性の能力を活かすためには、女性が補助業務ではなく、企業の意思決定など中枢業務に参画することが必要である。

第三に、少子化が進み一人っ子が多数を占める中、子どもの社会性を養う上で乳幼児の頃から保育園等で集団保育を受けることが、子どもの成長・発達にとって重要だからだ。生後1歳頃までは母親の育児の代替は難しいかもしれないが、子育ての社会化と親による子育てが、親子双方の成長を促し、子どもを育てる喜びと成育環境の向上が期待できる。それは、介護保険サービスの利用に加えてインフォーマルな家族介護が介在することで、高齢者の生活の質の向上が図られることと同じだ。

私は、「成長戦略」として女性が力を発揮できる環境整備にはもちろん賛成だが、その実現手段としては、「3年育休」という育休の延長を図るより、その取得率の向上を政策的に支援すべきだと考える。また、男女共に正規職員としての短時間勤務を推進し、職場でのワークシェアリングを実現すべきだ。

ワーク・ライフ・バランスは、「仕事と子育て」の両立支援に留まらず、今後の大介護時代には中高年(特に男性管理職)の「仕事と介護」の両立が大きな課題になる。その解決にもワークシェアリングによる短時間勤務制度が有効だ。育児休業・介護休業の長期化推進ではなく、男女が共に働き方を見直し、育児や介護をしながら働き続けられる勤務制度を実現することが、少子高齢化時代の真の「成長戦略」である。20年間にわたり仕事と子育てを両立させてきたシングルファーザーのつぶやきである**。

 

* 読売新聞のオンラインアンケートでは、賛成42%、反対58%(5月7日現在)だった

** 土堤内昭雄『父親が子育てに出会う時~「育児」と「育自」の楽しみ再発見』(筒井書房、2004年)

(この記事は、「ニッセイ基礎研究所 研究員の眼」5月7日の記事の転載です)