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日本初「ヘルスケアREIT」の誕生と不動産証券化の役割

2014年11月06日 22時18分 JST | 更新 2015年01月06日 19時12分 JST

経済の好循環実現を目指すアベノミクスを受けて昨年大幅高を記録したJ-REIT(不動産投資信託)市場は、引き続きオフィス市況の改善や不動産価格の先高感などを背景に堅調に推移しています(*1) 。上場銘柄数は今年3社増えて46社となり、9月末には市場時価総額が初めて9兆円の大台を超えました。

こうしたなか、来月5日に有料老人ホームなどヘルスケア施設への投資に特化した「日本ヘルスケア投資法人」が、47番目のJ-REITとして東京証券取引所に上場予定です(*2)。「ヘルスケアREIT」は、民間資金を有効に活用し質の高いヘルスケア施設の供給拡大を目指す政府の成長戦略のもとに誕生し、今回の上場は日本初です。

もっとも、「ヘルスケアREIT」は今後の成長が期待される投資領域である一方、オフィスビルや賃貸マンションなどに投資する従来のJ-REITと異なる投資リスクを抱えています

まずは、ゆっくりと1つ1つ成功事例を積み重ねることで、投資家や施設運営者(オペレータ)、施設入居者の信頼を着実に高めていって欲しいと思います。

ところで、先日、老人ホームやデイサービスなどを運営する社会福祉法人の方と「ヘルスケアREIT」に関して意見交換をする機会がありました。

その際、「ヘルスケア施設は介護サービスや食事などいわゆるソフト面の評価が肝だと投資家の皆さんはよくおっしゃるが、我々オペレータの立場からすれば施設スペック(ハード面)もとても大切である」、「自らの運営理念を実現するため、床材をはじめ理想のスペックへの拘りはたくさんあるが、施設を提供してくれる個人地主の方や施行会社とコスト面で折り合わないことも多い」と伺いました。

施設運営力が問われるオペレーショナルアセットの中でも難易度の高い「ヘルスケア施設」ですが、資産価値を維持していくには、単なる箱貸しではなく施設のオーナーとしての工夫も問われるということでしょう。

いまやJ-REITは不動産投資市場の中核プレイヤーであり、今後はヘルスケア施設を順次取得することで、所有と運営の分離や売買市場の確立、情報開示を通じた市場透明性の拡大など、大きな社会的責任を担うことになります。

さらには物流不動産市場のように(*3)、J-REITがオペレータと協働し彼らのニーズを反映した施設のリニューアルや開発を通じて、不動産証券化の役割のひとつである良質な社会ストックの形成にも貢献できるのではないでしょうか。

私たち投資家も「ヘルスケアREIT」を評価する際には、データ上の運用利回りや収益安定性だけでなく、入居者や現場で働く人々に喜ばれ快適に過ごすことのできる施設スペックへの拘りや工夫などにも注目する必要がありそうです。

*1 東証REIT指数の年初からの上昇率は9%である。
*2 「日本ヘルスケア投資法人」は大和証券グループをスポンサーとし、上場時の運用資産は14物件・132億円である。
*3 物流不動産市場では、J-REITのスポンサー企業がテナントニーズに合わせた高機能物流施設を開発し、安定稼動後にJ-REITが取得することで、物流市場の効率化に寄与している。

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株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 主任研究員

岩佐 浩人

(2014年10月31日「研究員の眼」より転載)