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「配偶者控除」の行方-「税制」は、社会の姿を写す鏡:研究員の眼

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近年、税制改革の論議で俎上によく上がるのが「配偶者控除」の見直しだ。

政府は本格的な人口減少時代の労働力を確保するために女性の活躍を推進し、その就労を後押ししている。

しかし、パートやアルバイトなどで働く女性が、配偶者控除の「103万円の壁」という年収要件があるために、就労時間を自己規制しているケースが多くあることから、見直しが検討されているのだ。

来年度の税制改正に向けては、配偶者控除の全面廃止、共働き世帯にも適用する「夫婦控除」の新設、パート主婦世帯の減税枠の拡大が提案された。前の2案は早々に見送られ、今は年収要件を150万円に引き上げる案が検討されている。

所得税の改革は改正前後で税収が変わらない中立的改革が基本とされているが、国民一人ひとりにすると増減税が交錯し、賛否が分かれることは必至だ。

近年では女性の労働参加率が高い国ほど出生率も高いという傾向が見られ、マクロ的には労働時間調整を課すような配偶者控除は廃止すべきだろう。

しかし、実際に子育てしている多くの専業主婦が、安心して仕事ができるような保育所整備などの就労環境は十分とは言えない。

日本において女性就労の促進が出生率を高め、少子化の歯止めになるためには、男女が共に仕事と子育てを両立できる環境整備および男性の働き方改革と家事・育児などのケア労働に対する意識改革が不可欠だ。

配偶者控除ができた1961年当時は、大多数が専業主婦世帯だった。その背景には工業化に伴う雇用労働の増加と職住分離があり、家事・育児などの無償労働を主に女性が担う性別分業による近代家族の主流化があった。

1990年代半ばには共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、現在では共働き世帯が6割以上を占めている。

女性の高学歴化や産業のサービス化、ICTの発達による多様な働き方の拡がりが女性の社会参加を促し、「共働き世帯」化というライフスタイルを推し進めているのだ。

「自立型」の共働き世帯を形成するには個人単位課税が望ましいが、近年では男性の経済力の低下や経済成長の鈍化などから「相互補完型」が増えている。

一方、高収入者同士の同類婚による共働き世帯との世帯間格差が拡大しており、その是正には世帯収入の合計に対する世帯単位課税が必要だ。結婚を促し出生数の増加を図るには、フランスのような世帯人員で分割する世帯単位課税が有効だろう。

配偶者控除の見直しが、税体系全体との整合が難しいことは確かだが、対症療法を重ねた弥縫策であってはならないし、社会経済環境の変化に応じた抜本的な税制改革ビジョンと軌を一にしなければならない。

「税制」は国民が共有する価値観を表し、国が目指す社会の姿を写す鏡でもあるからだ。

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(2016年11月29日「研究員の眼」より転載)
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土堤内 昭雄