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証人尋問で「詐欺師」の本性をあらわにした贈賄供述者

投稿日: 更新:
HIROTO FUJII
時事通信社
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10月1日、2日の両日、名古屋地裁で、藤井美濃加茂市長事件の贈賄供述者中林正善の証人尋問が行われた。

この2日間の尋問で、中林の「詐欺師」たる本性が露わになったと言ってよいであろう。

1日目は、検察官の主尋問。

分厚い質問原稿をほとんど「棒読み」して質問する検察官と、よどみなく答える中林、まるで、芝居の「台詞合せ」のようだった。内容は、ほとんど、検察官調書と同じ。中林は、調書を丸暗記していたとしか思えない。

しかし、そのような「作り上げられた中林供述」ですら、その内容は、市議会議員への受託収賄の贈賄供述、市長への事前収賄の贈賄供述の体をなしていない。

そして、中林が、その「詐欺師」の本領を発揮したのが、1日目の主尋問の最後の場面であった。

検察官に、融資詐欺で勾留中に贈賄の自白を始めた理由について尋ねられ、

担当刑事から、やってしまったことは消せないけど、ゼロになって帰ろうと言われたので、心から反省しようと思いました。全部話さないと本当の反省にはならないと思ったんです。一日でも早くゼロになって社会復帰したいと思って、すべてを話さなきゃいけないと決心しました。

と話した後、何度も声を詰まらせながら、

刑事さんから「うそつき父ちゃんじゃ娘さんに顔を合わせられないぞ、なんかあるんだったら全部話をしろ。」と言われて、贈賄のことを自分の方から話そうと思いました・・・

などと、涙ながらに話したのである。

2日目の反対尋問では、弁護人の私から、まず、中林が行った犯罪の内容について確認した。

融資詐欺は、インターネットで業者に頼んで作ったハンコを使って、地方自治体の部門長や病院理事長とかの名義の文書を偽造し、架空工事をでっち上げて融資を受けた融資詐欺の被害額が数億円ある。

そして、それと同時期に、勤務先の病院で事務長の立場で合計1億5000万円を横領していた。一度途中で発覚し、それまでの横領額の一部を返済したあと、残りは分割返済することにして、そのまま病院に勤務していたが、しばらくしてまた横領を始め、年間5~6000万円ものお金を、借金の返済や、キャバクラやクラブでの豪遊代に使ったとのことだった。

これだけの多額の詐欺、横領の犯罪を立て続けに行ってきた中林が、「やったことを全部話して、反省して、ゼロからやり直そう」と考えて、贈賄の自白を行ったというのである。

そのことを確認した後、我々弁護人のほうから、中林の「詐欺師」の本性を示す「隠し玉」を突き付けた。

警察署の留置場で中林の隣の房にいたA氏が、名古屋拘置所に移監された後、まだ警察署にいる中林と文通を続けていたのだ。そのA氏は、中林の全く反省のない詐欺師ぶりに呆れ果て、美濃加茂市役所の藤井市長宛に手紙を送ってきてくれた。弁護団は、急遽、名古屋拘置所でA氏に接触し、証人尋問の前日に、中林の自筆の手紙を入手したものだった。

中林の手紙には、実は、起訴された2100万円分の詐欺以外は立件されず執行猶予になることを期待していたことが書かれていた。担当の検事からも、「絶対に藤井には負けないから、中林さん一緒に戦ってくださいね!」と言われ、良い情状を酌んでもらって、執行猶予になることを狙っていたが、藤井弁護団が4000万円の融資詐欺を告発したことで実刑が確実になったと弁護人から知らされ、落胆したことが書かれていた。

そして、中林は、自分の事件の裁判も終わっていないのに、外国人を店に紹介して上前をはねる人材派遣事業を目論み、手紙の中でA氏の内妻に資金管理の仕事を頼めないかと打診していた。

融資詐欺・贈賄で勾留中の身でありながら、抜け目なく、他人を手足に使って、いかがわしい事業を行うことを画策しているのである。

反対尋問の中で、私から、中林に、主な手紙の内容とその趣旨について一つひとつ確認した。

中林は、手紙の記載をほぼ認めた。前日の主尋問での贈賄自白の経緯について訊かれた時の涙が「詐欺師」独特の演技であったこと、そのような行為を平然と行う人間であることが、公判廷で明らかになったのである。

その後、藤井氏に現金を渡した理由、依頼の趣旨などについて訊いた。

4月2日のガスト美濃加茂店で10万円を渡した理由については、美濃加茂市への浄水プラント導入に関して、市議会議員だった藤井氏に、「議会で質問してもらいたい、役人に対して働きかけてもらいたいと思った」と述べているが、中林は、肝心の、議会での質問が浄水プラント導入にどのように結びつくのかについて全く説明できず、藤井氏に頼みたいことと市議会議員の職務がどのように関係するのかも、全くわかっていなかった。

中林は、4月25日の山家住吉店での20万円の趣旨、請託の内容についても、まともに答えられず、さらにボロボロになっていった。

1日目の検察官の主尋問に対しては、「議員のときも、今までと同様に、議員辞職後も、そのまま影響力をもって、市長になったら市長の力で導入をお願いしたい」と述べていた。

しかし、「議員のときも、今までと同様に」と言っても、市長選挙への立候補の意思を固めたというのであれば、間もなく議員辞職することになり、僅かな議員在任中も、選挙のための準備に忙殺されるのであるから、議員として浄水プラントの導入に関して何かをやってもらえるとは到底思えない。

この点について訊かれると、中林は、「これまで通りやってほしい、何か問題があった時に対応してほしいと思った。」と繰り返すだけだった。

「議員辞職後も、そのまま影響力を持って」というのも、議員辞職後に影響力があったとしても、市議会議員の職務とは関係がないので、それを期待してお金を渡したとしても、賄賂の問題にはならない。

この点について訊いても、「議員辞職後も、次回の市議選で必ず当選するから影響力が残ると言われた。」と言うだけで、答になっていない。

そして、「市長になったら市長の力で導入をお願いしたい。」と言っていることについても、市長に就任した場合に、どのようなことをやってほしいと期待していたのかを訊いても、全く答えられず、最後には、「市長として役人に働きかけてもらいたいと思った」などと、あっせんを依頼したかのように述べた(公務員たる市長に、所管部署への「あっせん」を依頼したのであれば、「あっせん収賄」の問題になるが、この場合の「不正行為のあっせん」が要件となる。本件では不正行為など検察官も何ら主張していない。)。

要するに、これらの中林の供述を前提とすると、そもそも、現金の授受の有無にかかわらず、この事件は、検察官が起訴している受託収賄、事前収賄が成立する余地がないのである。

今回の中林の証人尋問で、本件での藤井市長が有罪となる可能性は限りなく低いものになったと考えてよいであろう。残された問題は、「現金の授受」も含め、検察官の主張がすべて否定される「完全無罪」を勝ち取ることができるかどうかである。

もちろん、私は、その点についても確信を持っている。

(2014年10月5日「郷原信郎が斬る」より転載)

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