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イクメンも子どもたちも、わんぱくで、たくましく育ってほしい。 - NPO法人イクメンクラブ 代表理事 長谷川潤

2014年08月15日 22時54分 JST | 更新 2014年10月12日 18時12分 JST

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長谷川潤(はせがわじゅん)

1969年生まれ 神奈川県出身。東北大学教育学部卒。広告会社勤務の傍ら、父親を中心とした有志が集まって立ち上げた「イクメンクラブ」の活動を2006年より始める。現在ではすっかり浸透した「イクメン」という言葉を広め、2011年4月 特定非営利活動法人として法人格を取得。NPO法人「イクメンクラブ」代表理事。

著書:絵本「炭やきじいさん」(付録「炭窯のつくり方」「炭のできるまで」)

http://www.ikumenclub.com/

「イクメン」という言葉を生み出し、2010年には「新語・流行語大賞」にも選ばれるまでに認知を高めた「イクメンクラブ」。この「イクメン」という言霊を世の中に浸透させることで、父親の育児参加を促し、少子化を始めとした社会の課題を解決していこうと考え、プロジェクトを立ち上げた長谷川さん。現在では言葉を普及するステージから次のステップへと進まれているとのこと。「イクメン」の変遷と共に歩まれているからこそ見えてきた現在や今後の取り組みについてお話いただきました。

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OYAZINE(以下Oと略):「イクメン」という言葉が出始めた頃は新米パパの印象が強かったように感じるのですが、その言葉の響きもすっかり行き渡った今、活動を続けられる中で抱かれた新たな想いや方向性などについてお伺いできますでしょうか?

長谷川さん(以下長谷川と略):今でも新米パパのケアやフォローもちゃんと次の世代にバトンタッチしていかなければいけないと思っているので、今後もメンバーのパパ予備軍と共にいろいろなプロジェクトを立ち上げていこうと考えています。ただ、僕も含めて当時新米パパだった親父たちも設立から8年という年月の間に子どもたちと一緒に成長し、その見渡す景色も様変わりしている。そんな中でおのずとその活動にも広がりや深さが生じて来ています。

また、正直に言うと当時「イクメン」という言葉に世の中が抱く"子育ても家事も一生懸命頑張って、カッコよくてキレイな" というイメージと僕ら実像との間にギャップを感じていました。メンバーには体育会系でスポーツをやっている者が多くてカッコイイっちゃカッコイイんだけど、実体はもっと親父臭い男たちだったんです。で、みんなの中でこれはやっぱりお父さんならではのものにしていくべきだ、お母さんの代わりじゃないよね、っていうことをNPOとして活動し出す辺りから改めて共有しました。

そのときみんなの共通言語のように頭にイメージされたものが昔やっていた食品会社のCMコピー「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」というフレーズだったんです。アレが今の世の中にちょっと欠けて来ているような、たくましさというか、わんぱくさ加減じゃないかなというような想いをみんなすごく感じていたんです。で、僕らはやっぱりそっちでいきたいね、っていうのがあって活動の方針を少し絞っていったという経緯はあります。

O:何かモノが流行るときって最初にワーっと流行って、その後一瞬下火に見えるようで、実はそれはもう浸透するときだったりして、そういう時期こそ地道に具体的な活動をする存在というのは大きいと思います。

長谷川:僕らにとってブームって言われるのは凄く残念なことです。でもやっぱり「イクメン」ブームって言われちゃったりする訳です。「イクメン」は特別なものじゃない。子育てに前向きなお父さんはもうすでに「イクメン」なんだから、それは一般用語でいいかなと思っている。で、僕らはその中でもちょっと親父たちのこだわりみたいなものを大切に活動していこうね、という風にしているんです。ブームみたいなことでいえば熱量的には下火みたいになって来ているかも知れないけれど、ちゃんと根強く実体をつくっていくというところは地道に頑張っていこうかなと思っています。

O:イクメンクラブで実施している、親父たちこだわりの活動についてもう少し詳しくお伺いできますでしょうか?

長谷川:今取り組んでいる活動は主に3つ。1つ目は「イクメンキャンプ」という1泊2日あるいは日帰りで親子でこだわりのアクティビティーを追究するもの。今年も8月30日(土)、31日(日)に茨城県大子町(だいごまち)で開催します。

HTTPS://WWW.FACEBOOK.COM/EVENTS/1432643430351522/

2つ目はお台場ビーチで「親子対抗はだし運動会」というのをやっています。これは裸足で砂まみれで遊ぶということもなかなかしづらくなって来ているので、みんなで海辺で裸足になって家族の絆を深めようとNPO法人日本ビーチ文化振興協会と始めたんです。

最後の3つ目は「パパっと料理教室」という食のイベント。「イクメンクラブ」の活動はさまざまなご縁で始まることが多いです。そこで互いに話し合って一緒に何か出来そうですね、ということはやってみるようにしています。なるべく、地道に長く続けて行けるようマイペースで取り組んでいます。

O:長谷川さんご自身は若いころから子どもや教育といった分野に関心があったのでしょうか?

長谷川:僕の大学の卒業論文のテーマは「勤労女性の育児観と仕事観」でした。ただ、さかのぼると小学校4年生のときの夢が「立派な子どもをつくりたい」っていうちょっと怪しげなものでした(笑)。いつも子どものことは大好きでいてくれる両親が夫婦喧嘩をする姿が悩みの種で、そんな影響もあるかも知れません。あと、当時流行っていた学園ドラマにはまり、小学校の先生になりたいという憧れもありました。

その後、大学へ進学する際には当時みんな偏差値で輪切りにされていく時代でもあったので、それに反発して、俺は何のために大学に行くんだみたいなことを結構真面目に考えました。で、やっぱりそのとき考えたのが教育だったんです。それで教育学部へ進学しました。

大学時代の僕の教育に対する想いは塾講師のアルバイトに注ぎ込みました。これがすごい面白かった。学生たちが主体となって運営しているような塾で、それを束ねる塾長がパワフルで熱い。カリキュラムや合宿も手づくりで、先生同士の交流もすごい楽しかった。そこで学校の先生ってこんな感じなのかなってちょっと自分の中で見えた気がしたんです。今振り返れば、学校の先生になってやれることってまた全然違うって思う。教員免許を取って先生になるという選択肢もあったけれど、そんな経験もあって、違う世界も見てみたいなと。それで広告会社ならば教育という分野でも何か世の中に変化を与えられるのではないかという想いから、広告会社を片っ端から受けて、今の会社に入社しました。

O:これからの「イクメン」はどうなっていくんだろうということにとても興味があるのですが、長谷川さんの感じていらっしゃることをお聞かせ頂けますでしょうか?

長谷川:僕自身が地元の鎌倉で里山の保全活動みたいなことをずっと10年くらいやって来ています。そこには四季折々の素晴らしい自然の姿があって、そこに感動する日々を送る中で、これをやっぱり次世代の子どもたちに伝えていきたいなという強い想いがまず根底にあります。地元の子どもたちを集めて「父と子の里山体験」というのを続けているんですが、それを地元だけじゃなくてもうちょっと広げていこうと考え、「イクメンキャンプ」につなげました。

地域のために頑張る父親のことを「イキメン」と呼んでいます。父親の関心領域というものは、子どもの年齢と共にどんどん大きくなっていく。始めは親と子の1対1の関係だったのが、近所づき合いからやがて幼稚園、小学校へとコミュニティーが広がっていきます。で、ゆくゆくは世の中のためにできることっていう風に活躍のステージが変わるんですね。自分の子育てはもちろんだけれども、地域のためにちょっと頑張って父親の力を役立てていこうよというような機運は加速させていきたいと思っています。

もう一つ、「"こどもごころ"という聖域を守る」のはこれからの父親の役目なんじゃないかなと。今の世の中って大人社会が入り込み過ぎていると感じるんです。残念ながら子どもの世界の中にも。大人の事情って、やっぱり経済で動くので合理性や効率性が結構重要なキー。それは世の中を動かしていくためには大切なことだけれども、それが行き過ぎていろんな世界を支配しちゃうのは良くないと思っていて、特に子どもの世界に。ここは聖域だと思っているんです。ここを守りたいね。"こどもごころ"を守ることによって、逆に大人の中にも子どもの頃に持っていたような価値観、マインドってものが取り込まれていくんですよ。そのことがとても重要だと思っています。

なので「イクメンキャンプ」でのメニューもそうですけど、ご飯は炊飯器のボタン1つでも炊けるんだけども、もともとは木をくべて熱をつくって、水がぐずぐず沸いてお米が美味しくなるんじゃん、っていう。ゴールに一直線じゃなくて、スピードが命じゃなくて。そこは何か知っといてもらいたいな、という。体で覚えといてもらいたいなっていうのはありますよね、お父さんたちにも大切にしてもらいたい部分なんです。

O:最後に今後の「イクメンクラブ」の活動についてお伺いできますでしょうか?

長谷川:「イクメンキャンプ」の一環なんですけども今、僕たち「イクメンの森プロジェクト」っていうのを始めたんです。メンバーのご縁で、神奈川県に森を所有していらっしゃる林業家との出会いがあり、そこの森を活用して日帰りの「イクメンキャンプ」を行なっています。子どもが元気よく育つ森の環境整備で、1回目は木を伐採する体験をしてもらい、2回目は植樹体験。3回目は山菜を採ってその場でてんぷらにしました。こういう活動を続けていくことで、自然の森を楽しむということだけでなく、生業としての、林業としての森っていうのをぜひ体感してもらいたい。これは将来的に僕らの大きな活動の幹というか、柱の一つになるでしょう。

O:本日は楽しいお話をありがとうございました。

長谷川::ありがとうございました。

(この記事は、2014年8月にインタビューした内容をもとに構成されています。)

編集/ライター 堀内 麻希