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対馬の仏像返還発言を否定した韓国文化省とその報道

2013年09月30日 23時31分 JST | 更新 2013年11月30日 19時12分 JST

『サーチナ』が掲載していた「韓国文化省、仏像返還発言を否定 日本への抗議準備=韓国報道」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

 

「長崎県対馬市の寺から仏像2体が盗まれ、韓国が返還に応じない問題で、劉震竜(ユ・ジンリョン)文化体育観光相」は「27日、韓国・光州で開かれた日中韓文化省会合で下村博文文部科学相と会談し」ました。

それを受けて「日本のメディア各社は会談後、下村氏の返還要請に劉氏が前向きな発言をしたと」報道しましたが、「韓国メディアは30日までに、日本の報道を否定する韓国文化体育観光省の見解を伝えた」というものです。

「報道によると、日本から仏像の返還を求められた際、劉氏は『司法当局の判断を待っている。国際ルールが順守されるべきだ』と発言したが、日本側がこれを恣意的に解釈し、日本メディアもわい曲して伝えた」としています。

「また、仏像の話題は会談の正式な議題ではなく歓談で出たもので、日本による一方的な公開は『欠礼にあたる』と主張した」ともしています。

そして「同省は、準備が整い次第、日本政府に抗議する方針で、日本のメディアにも報道を自粛するよう求める」そうです。

2 政府とリーク

こうした政府とマスコミとのなれ合いは良くある話で、結構政府は様子見的な意味合いで意図的に情報をリークして、世論の反応を見ることがあります(消費税関連のニュースなどがその典型でしょう)。

そして、国民の反対が思ったほど強くなければ、あわよくばそのまま既成事実化を狙うこともあります。政府にとって、都合が良いのは、反応が良くなければ、あくまで流れた情報はデマだと否定してしまえばそれで済んでしまうところで、正式発表をしたわけでも何でもないので、それ以上批判されることもありません。

また、省庁にとって都合の良いこと、自分たちの手柄になるようなことも意図的にマスコミにリークする傾向があります。これは半分以上報道されることを期待して、情報を流しているわけですが、今回の事案はこれに当てはまるのではないでしょうか。

3 グローバル化

あくまで私の推測にすぎませんし、文科省側かどこまで意図したかはわかりませんが、おそらく韓国側から予想外に良い反応が返ってきたので、うれしくなったしまったというところが本当のところではないかと考えます。

ただ、今回こうした報道が流れたことは明らかな日本政府のミスと言えるかと思います。というのは、あくまで日本国内のことであれば、こうした慣れ合いの上になされた報道なので、批判する報道機関もなく、あまり問題も起こりません。

しかし、韓国の様にいろいろ日本に難癖をつけてくる国(韓国が旭日旗を刑罰対象とする改正案を検討していることについて)を対象に、しかも国際化がこれだけ進んだ現在簡単に他国でどんなことが報道されているか知ることができる現在、国内向けのニュアンスで報道していれば済むという話ではありません。

4 外交

今回の失敗は大きく2つあると考えます。1つめは交渉過程を晒してしまったこと。外交(交渉)は駆け引きなので、自分の手が相手に分かってしまえば、当然それだけ不利になります(自分で盛り上げた「反日」に縛られる韓国外交)

2つめが、韓国に余計な仏像返還反対世論を巻き起こしてしまったことです。今回、韓国の文化体育観光省は、激しい反発を受けてしまったわけで、これで韓国側は簡単に妥協できなくなってしまいました。

5 最後に

最近本当に思っているのが、以前は「政府は○○という方針を決定した」という報道がなされれば、それが既定路線で、そのとおりとなることが多かったわけですが、最近では国会審議でひっくり返ることもあり、どこまで本当にそうなるかわからないことが良くあります。

それはそれで仕方がないので、そうした流れを報道してもらえば済む話ですが、最近の政府からの様子見のリークはそうした状況を利用して、途中で政策を引っ込めることも厭わなくなってしまっている様です。

政府が否定した段階で、「誤報」なわけで、そうした報道を行ったマスコミは検証なり訂正なりを本来であれば流すべきなのでしょうが、リークという形を自己の正当化としているのか、マスコミが自分の過ちを認めることが潔しとしないのかわかりませんが(ネットの影響力とマスコミの責任逃れ)、私は殆ど見かけたことがありません。

取材ではなく、リークという形に頼って報道しているマスコミと、マスコミにリークという形で慣れ合っている日本政府の綻びがこんな形で現れたともいえる事件で、いろいろ興味深かったが故の今日のエントリーでした。

(※2013年10月1日の「政治学に関係するものらしきもの」より転載しました)