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足指・爪のケアで身体機能改善、年間8万円の医療費削減効果も

膝や腰の痛みの改善のほか、行動が前向きになるなどメンタル面への効果と行動変容も見られた。

2017年09月29日 12時16分 JST | 更新 2017年09月29日 12時21分 JST

認知症や糖尿病などの高齢者に適切な足指の爪切りなどをすることで、足指力や膝間力が向上し、医療費削減にも効果があったとする研究結果を大阪大学大学院医学系研究科の山下和彦特任教授がシンポジウムで伝えた。膝や腰の痛みの改善のほか、行動が前向きになるなどメンタル面への効果と行動変容も見られた。ケアを受けた人の年間医療費は、受ける前と比べて約8万円下がっていた。

9月25日に大阪市内で開かれた「足と歩行を守るシンポジウム」(同研究科バイオデザイン学共同研究講座主催)で報告した。山下氏は医用生体工学、高齢者福祉工学などが専門。高齢者の健康支援、転倒防止などの研究も行っており、転倒リスクと身体機能評価のための足の機能計測システムを医療と連携しながら開発している。この日は岩手県で2014年から3年間行った高齢者へのフットケアの効果の研究などについて話した。

対象は高血圧や糖尿病、高脂血症や変形性膝関節症、認知症などの疾患がある岩手県内の高齢者75人。このうち要介護認定を受けている人は65人。足の問題としては、外反母趾や巻き爪、爪の肥厚や変色、ウオノメやタコなどがあった。正しい爪の切り方や足指のケアなどについての「メディカルフットケア」の専門知識を持つ看護師らが爪切りなどの足のケアを月に1回、5か月間継続して行った。

■「転倒リスクあり」の人の向上率高く

山下氏がフットケアの前後で計測した結果、右足指力が向上した人は全体の34%(「維持」を含めると84%)、左足指力は40%(「維持」を含めると85%)。全体のうち「転倒リスクあり」と判定された人たちで、右足指力が向上した人は37%(「維持」を含めると91%)、左足指力は48%(「維持」を含めると92%)で、山下氏は「転倒リスクラインを下回った人たちの向上率が高かった」とコメントした。

膝間力では、内膝間力が向上した人は51%(「維持」を含めると92%)、外膝間力は22%(「維持」を含めると66%)。このうち「転倒リスクあり」と判定された人たちで、内膝間力が向上した人は72%(「維持」を含めると100%)、外膝間力は48%(「維持」を含めると93%)。山下氏はフットケアによって足圧分布が変わって足指の接地などの改善につながったことを示し、「今まで体をしっかり支えられなかった人が支えられるようになってくるのが分かる」とした。

足の外見の変化としては、分厚かった爪が薄くなったり、変色が改善した。山下氏は写真を示しながら「5か月間でこれだけ変わってくる。しっかり身体機能が上がってきて、認知症の症状があった人もしっかり足圧分布が改善した。また、女性は見た目がきれいになるのでサンダルを履いて出掛けるようになった人もいた」と話した。

■「行動が前向きに」「気分が楽しく明るく」

アンケート結果では、「フットケアにより身体の変化があった」は68%、「足部・足爪に変化があった」は50%で、膝や腰の痛みの改善に効果があったという回答がそれぞれ48%、38%あった。メンタル面へのプラス効果が見られる回答もあり、「行動が前向きになった」は56%(「やや前向きになった」含む)、「気分が楽しくて明るくなった」は83%(「やや明るくなった」含む)など。地域のスポーツ大会やボランティア活動に参加するなどの行動の変化もあった。

■フットケア受けた人の医療費が減

フットケアに参加した34人の医療費を見ると、フットケアを受けた後の医療費が受ける前と比べて年間8万816円減っていた。一方で、ケアを受けていないが講演を聞いただけの145人では、医療費が3万5494円増えていた。「転倒リスクあり」「なし」と判定された人たちの医療費は年間でそれぞれ13万2799円、1万4969円下がっており、山下氏は「医療費が特に下がっている人は、転倒リスクが高く足の機能が下がっていて、足の痛みも出ている人たち。そういう人にフットケアをすることで医療費の改善効果が見られた」と話した。

◆山下氏の話で面白かった部分のまとめ

・国内に14万人いる大腿骨頸部骨折の9割が転倒によるもの。

・中高年者の6割以上が足部・足爪に問題がある(発症率は世界とほぼ同じ割合)。2025年の高齢者数に換算すると、2100万人が足に問題を抱えていることになる。

・転倒防止には下肢筋力や歩行機能、バランス機能の維持向上のアプローチが重要。そのためには評価が要る。

・国内に2570万人いる変形性膝関節症の患者のうち、痛みはない1790万人に介入することで医療費の削減につながるのでは。

・食べ物と糖尿病の関係。飽食の時代と言われるが、調査を見ると摂取エネルギーと炭水化物は低下傾向。運動や生活習慣、体質などが関係してくるので、そこの見直しが大切。

・国は「慢性期医療(生活習慣病関連)にかかる医療費を公的保険外のサービスを活用した予防・健康管理にシフトさせること」が重要とするが、その部分をどう構築していくかが今後の課題。

・最後まで自分の足で歩き、自分らしく生きるには、歩けること、足部がしっかりしていることが大事。「様々な病気があってもいい。ココロも体も元気に歩ける」ために①予防②インソールなどで対策③フットケア、足部治療④再発防止とアクティビティ向上。

・しかし足の現状を見ると、外反母趾や魚の目・タコ、感染症などがあったり、体重のかかり方が悪いために膝や腰が痛くなっていたり、糖尿病などによる足潰瘍ができていたりと、「足部の状態は深刻」。

・効果的な足部・足爪ケアをすることで歩行機能、身体機能が改善する。結果としてQOLも向上し、医療費削減につながる。

山下氏にはロハス・メディカルに連載を頂いていました。こちらもどうぞ

高齢者の身体機能改善について(ロハス・メディカル2010年6月号)

歩行機能計測の重要性について(ロハス・メディカル2010年11月号)

ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

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(2017年9月28日「ロバスト・ヘルス」より転載)