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「勇気ある少数意見」があなたを動かす。地球を動かす。

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ハフィントンポスト共同創業者のアリアナ・ハフィントン(右)と筆者

新人記者時代、ファンキーな釣り人と出会う


朝日新聞社を辞めて、2016年5月1日付でハフィントンポスト日本版の編集長に就任しました、竹下隆一郎です。

14年勤めていた会社を去って、ネットメディアに転職した理由を最近聞かれます。実は、新聞に対する、ちょっとした違和感は、2002年10月27日から感じていました。新人記者だった私は、赴任先の宮崎県でファンキーなおじいさんの釣り人と知り合いました。その人は、草むらから海辺の防波堤に忍び込み、海岸から海の遠くまで突き出た防波堤の先端まで行って魚を釣っていました。

先端付近の水深は15メートル。海の上の「歩道」のような防波堤の上を歩いていけば、「船を出さなくても深いところで釣りができる」。ズル賢いやり方だったのですが、釣った魚を近所のお年寄りにおすそ分けすると喜ばれるというのです。

その原稿を書いて見せたら上司に怒られました。「おい、この記事を読んで真似をする人がいたらどうするのだ。水難事故にあったら責任が取れるのか」。

正論です。私は大幅に書き直して、釣り人に水の事故の危険性を訴える記事にしました。でも、私は覚えているのです。あの時、上司は私の下書きを読んでいる時、ニヤっとしたのを。ファンキーなおじいさんの生き様に心を動かされたのを。

読者を信じれば、コンテンツは面白くなる


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新聞は、10年~20年前まで、みんなにとって「大きな情報源」でした。朝日新聞とテレビを見て1日のニュース摂取は終わり、という人もいたでしょう。それはとてつもない影響力であり、大手メディアが保守的とかエリート主義とかではなく、仕組み上慎重にならざるを得なかった。

できるだけ誤解を与えないようにする。あるいは、賛成派と反対派をとりあえず載せておく。ファンキーな釣り人はいらない。

ハフィントンポストは日本版ができた2013年からのファンで、読者を信頼しているメディアだと思っていました。読者は異なる意見と出会っても、「本当かな」と自分でほかのメディアの論調も調べたり、Twitterを見て別の人の意見を参考にしたり、Facebookでシェアをして友達の反応を確かめたりするはずだ――そんなことを前提に作っているから、ファンキーな意見、変わった意見、今まで埋もれていた意見、マイノリティーの意見、独創的な意見を載せる。

時には、聖人とされるマザー・テレサが独裁者と疑わしい交流があったことや、質の悪い医療行為をしていた可能性を問題提起したり、同性婚を支援している僧侶の話を紹介したりします。あるいは、イスラム過激派によるフランスの新聞社「シャルリー・エブド」襲撃時件では、ハフポスト日本版編集部がアメリカの編集部とは異なる編集方針を貫きました。そんな「切れ味ある意見」「異論」を許すところをさらに伸ばしたい、「唯一の情報源であった時代」の慣習が依然として残る新聞社のままではできないと思い、編集部にjoinすることになりました。

両親が二人とも女の人だったら


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長谷川 愛《(不)可能な子供:朝ごはん》2015年=森美術館提供

4月上旬、よく晴れた日。東京・六本木の森美術館でひらかれている「六本木クロッシング2016展」(2016年3月26日-2016年7月10日)に妻の母親と行ってきました。

《(不)可能な子供》という上記の作品を見てみてください。実在する女性同士のレズビアンのカップルに、「もし子供が産まれたら」と仮定して、架空の「家族写真」を作って展示しています。「今後iPS細胞の研究が進めば、同性間でこどもがつくれるかもしれない。果たして許されるのか」と問題提起をしているのです。

森美術館キュレーターの荒木夏実さんは「(LGBTQの人たちほど)自分たちの性や体に真摯に向き合っている人たちはいない。そうしたことを表現した作品をみると、自分自身も『女性であること』ということに、どこまで真剣に向き合ってきたのだろうか、と考えさせられる」と言います。

展示では、憲法の話題も触れられていました。日本の憲法では結婚について「両性の合意のみに基いて成立(する)」と書かれてあります。これだけを読むと、結婚っていうのは「男」と「女」、つまり両性じゃないといけないのかな、とも読めますし、いやいや、2人の個人としての「合意」が大事ですよ、という「個人の自由」とお互いの「平等」を強調したものだ、と考えることもできます。絶対的な「経典」のようなイメージがある憲法も、LGBTをテーマにしてみると、様々な解釈が出来る「不完全なもの」にみえてくるから不思議です。

LGBTや障害者のアートからは、「人間の体」という究極的なものさえ疑うラディカルさがあります。その批判精神を出発点にすることで、自分の存在や社会制度の違った面が浮き彫りになる。もっと制度やルールから自由に物を考えよう!という気になる。勇気を出して作品を発表したり、作品に「顔出し」をしたりする姿に、心を動かされる。少数意見には、パワーがあるのです。

危険なワナが潜んでいる!


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「少数意見を大事にしよう」「多様性を尊重しよう」――。今まで私が書いてきた言葉は一見ポジティブです。しかし、そこには「危険なワナ」も潜んでいます。あなたはあなた、私は私、それぞれ違う。そう言った瞬間にお互いが無関心になる恐れもあります。

だから私たち人類は、選挙の投票によって、あるいは時には不幸にも上から押しつけるイデオロギーによって、もしくは異なる歴史や文化を持つ国を束ねたEUという歴史的実験によって、多様な意見を「まとめよう」としてきた。バラバラな人間をなんとか連帯させるためです。

しかし、それは時には息苦しい。強い人が必ず出てきて、大きな声で抑圧してくる。あるいはEU内部にテロリストを生んだように、とてつもないモンスターが出てくる可能性がある。

私はネットにまだまだ期待しています。ネットはスペースが無限大。いくらでも、意見や記事を、バラバラのまま載せられます。もちろんTwitterやFacebookで同じような意見ばかりタイムラインに流れてくる問題はある。でも、たとえばハッシュタグを使ってあとで意見をまとめて読んで、バラバラの意見を一覧できる。あるいは検索をしてみて、ふと自分とは違う意見に出会うこともある。ネットは、バラバラをバラバラのまま統一させる不思議な魔力があります。

そういえば、地球は動いている


いきなり話が小さくなりますが、私は仕事の飲み会が苦手です。実質的な仕事の延長だったり、そこで話し合われたことが正式に決まってしまったりすることもあり、スタッフや取引先も行かざるを得ない。私の場合、子供のお迎えや宿題の手伝いを、同じように働いている妻に押しつけることになってしまう。

たとえば、私はハフィントンポストで飲酒と日本文化の記事を書き、「#仕事の飲み会をやめたとき」というハッシュタグを提案して、仕事の「飲み会」で困った体験をみんなから集めてみたい。いや、「飲み会でこそ恥ずかしがり屋の人も意見がいえる!」「たまにはいい」という声もあるはず。

ハッシュタグを使って検索をすれば、自分とは違う少数意見がみつけられる。いや、そもそも自分の方が少数意見かもしれない。「整った意見」を言わなくても、単なるつぶやきでも、ネットは受け入れてくれます。違う意見が同時に存在し、強制的にまとまらないでもいい仕掛けは、ネットでまだまだ出来ると思うのです。

ハフィントンポストは「ちょっと違うけど面白い」人たちの意見や行為に注目します。そこから建設的な会話を生むお手伝いをして、日本版だけではなくハフポストUS版やUK版、韓国版、インド版、アラブ版など世界14か国・地域の仲間に声をかけて、「勇気ある少数意見」を広く届けます。そしてその手段は「記事」だけではありません。動画、Facebook、Twitter、ネイティブ広告、360度動画、ネットの生中継、チャットアプリ。手段を選ばず、「それでも地球は動く」(ガリレオ・ガリレイ?)とつぶやき続けます。なぜなら、そうした少数意見にこそ、日本や世界の仕組みを変え、成長へと導くヒントがあると心の底から信じているからです。

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