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築地再生への道~市場問題PT報告書を読み解く②

2017年06月13日 00時25分 JST | 更新 2017年06月13日 00時25分 JST

築地市場が高い知名度と長い歴史を持った卸売市場であり、「圧倒的ブランド力が作りだす"にぎわい"と食の技・流通の拠点」であることを正面から評価している点に、市場問題PT報告書(※1)の最大の特徴があると言ってもよいでしょう。

今回は、築地再生の中心となる「築地ブランド」の価値と課題について言及した部分を紹介します。

1 「築地ブランド」の価値

築地市場に特徴的な価値は「築地ブランド」である。これは、卸による豊富な商品揃え、多様な買受人を対象に商売をする仲卸の目利きの技、場外市場と一体となったにぎわい、長い歴史と都心に近い好立地などに支えられている。その経済的価値は高い。

市場問題PT報告書27ページ)

市場問題PT報告書では、「築地ブランドは、これまで『のれん代』としての経済的な価値が計算されてこなかったが、日本において唯一市場がブランドとなっている例であり、その経済的価値を正当に考慮するべきである」(同報告書28ページ)としています。

「築地ブランド」は、観光で人を集める力もあります。築地市場は世界的にも有名な生鮮市場です。CNNが選ぶ「世界の生鮮市場ベスト10」では、バルセロナ(スペイン)のボケリア市場に続く第2位です。場外市場と一体となったにぎわいは、多くの観光客を集めています。

また、「築地直送」が料理や飲食店の店先に掲げられ、それが魅力になるという面でも「築地ブランド」は大きな力を持っています。食の技、流通の拠点として高い評価が定着しているため、店先に「築地」の文字を掲げることでお客さんを惹きつけるのです。

「築地ブランド」は、仲卸を中心とした食材の目利き(品質と値段設定)の技によって支えられています。銀座・赤坂・青山など食通の店から近く、これらの様々な料理屋との関係が築地市場の仲卸の目利きの技を育んでいるのです。

この観点からも、「築地」という立地がブランドを生み育てるために決定的な役割を果たしていることがわかります。

①仲卸が築地市場の中心である。

築地市場の特徴は、仲卸を中心とした食材の目利き(品質と値段設定)の技である。

②仲卸と料理店などとの相互関係が築地に目利きの技をはぐくむ。

銀座・赤坂・青山など食通の店を後背地に持ち、これらの様々な料理屋との関係が築地市場の仲卸の目利きの技を支えている。この観点からも、築地という立地が決定的な役割を果たしている。

市場問題PT報告書28ページ)

2 「築地ブランド」の深刻な問題-仲卸業者の減少

「築地ブランド」の担い手は仲卸業者である。市場の取扱量の減少傾向の中、仲卸業者の減少傾向はとどまらず、このまま何らの対策も講じなければ、仲卸の多様な目利きの技が失われる。(市場問題PT報告書30ページ)

(1)平成元年から半減した仲卸業者の数

仲卸業者の数は、平成元年1080、平成15年882、平成28年558です。平成15年から平成28年の13年間に324の業者が廃業しています。年間平均では25の業者が廃業したことになります。

この傾向が続くと仮定すれば、10年後には更に250減少して、仲卸は308となります。築地市場での営業を継続していても10年後には308しか残らないという計算になります。

一方、豊洲移転の場合には、豊洲移転に際しての廃業、新しい市場での経営費用負担増による廃業によって、仲卸の廃業がさらに加速することが予想されます。

(2)豊洲移転では急速に、築地改修でも緩やかな減少と想定

「築地ブランド」の担い手は仲卸ですから、仲卸業者の減少は、「築地ブランド」の維持にとって、極めて深刻な事態です。

市場問題PT報告書は、「仲卸業者数は、豊洲移転では急速に、築地改修の場合でも緩やかな減少は避けられず、市場の価値は低下する」としており、豊洲移転の場合でも、築地改修の場合でも、「仲卸業者の営業改善の努力と、東京都の経営戦略に基づいた支援策が必要である」(同報告書31ページ)としています。

市場問題PT報告書は、豊洲移転と築地改修のどちらを考える場合にも、現在の築地市場の価値を知り、その課題と向き合うことが必要だという姿勢を明確にしています。

築地の価値は「築地ブランド」によって高められている。仲卸業者数の減少は、仲卸の個性と多様性の減少であり、築地ブランドの衰退をもたらす。「築地ブランド」の維持発展の観点からの経営戦略が必要である。(市場問題PT報告書30ページ)

新規参入のため透明性の高い許可制度の運用を行うよう改善が必要である。仲卸業を廃業する業者が生じた場合は、透明性のある手続で募集を行い、東京都が適切と判断した者の参入を認めることを原則とし、仲卸業者の新規参入を促進し、仲卸の個性と多様性の確保に努めるべきである。 (市場問題PT報告書31ページ)

(続く)

※1 2017年6月5日付「市場問題プロジェクトチーム第1次報告書(案)」

<「弁護士大城聡のコラム」からの転載>