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自分の生きる「道」を知り、しっかり歩む人こそが、ニッポンをもっとクールにしていく

2013年07月11日 23時57分 JST | 更新 2013年09月10日 18時12分 JST

クール・ジャパン。クールなニッポン。自分で自分のことをクールと言ってしまっている恥ずかしさがありますが、ひとまずは、それもいいんじゃないでしょうか。

失われた数十年、日本の人たちは自信を失っていました。長らく誇りにしてきた経済規模で世界第二位から転落し、人口減少、少子高齢化、長引く不況、年金不信と老後の不安、そして原発事故。

日頃から自分の欠点を気にかけている人がさらに大失敗をしでかしたら、「どうせもう、オレなんて・・・」と自信を失ってしまうのは当然。そんなときは、「自分にもこんなにいいところがたくさんあるじゃないか。良かった時代の頃を思い出そう」ということで、自分をなぐさめて自信を取り戻すことが、これから前向きに進んでいくために、まずは不可欠です。

政府が時間をかけて進めてきたクール・ジャパン政策は、日本が蓄積してきた過去から現在の文化資産の価値を再発見し、「ニッポンが自信を取り戻す」段階にあると思います。食文化、各種コンテンツ、おもてなし、ものづくりなど、強みのある分野で海外発信をして「ニッポンの良いところ」に対する自信を少しずつ取り戻す。未来への一歩を踏み出すためには、まず自信を持たなければ始まりません。

でも、ひとたび自信を取り戻したら、いよいよ前に進むべきときです。そのときはクール・ジャパンの「クール」を動詞で読みたい。

クール・ジャパン。ニッポンをもっとクールにするということ。

いつまでも古き良き時代を振り返ってばかりいられません。今すでにある良さや強みを再発見するだけでなく、これからもっと良いところを作り、強みを伸ばしていくことが必要です。

お寺というと、古き良き時代の代表格のようにも考えられますが、お寺はクール・ジャパンを支える可能性に満ちています。 クール・ジャパンには目に見える価値と、目に見えない価値があると思います。目に見える価値としては、お寺は「伝統の文化・価値観」として発信すべきものを持っています。古刹・名刹の壮麗な伽藍や優美な庭園など、海外から日本を訪れる旅行者が最も楽しみにしているものの一つではないでしょうか。

しかし、クール・ジャパンの目に見えない価値の面でも、お寺は未来に向けて貢献できることがたくさんあります。

ニッポンをもっとクールにする。そのためには、何を差し置いても、まず「人」です。新しいニッポンを引っ張っていくリーダーを育てていかなくてはなりません。原発事故にせよ、気持ちを入れ替えて過去の失敗から学び、二度と繰り返さない未来を創っていくことです。

「国宝とは何物ぞ。宝とは道心なり。道心ある人を名づけて国宝と為す」(国の宝とはなにか。宝とは、道を修めようとする心である。この道心をもっている人こそ、社会にとって、なくてはならない国の宝である)と最澄さんも言っておられます。国の宝は、人です。

さて、国の宝である人づくりの環境をもっと良いものにしようと、教育制度改革も進められています。グローバル化の時代ですから、英語教育の強化も必要でしょう。「クールなニッポン」を発信するには、国際コミュニケーション力も磨かなければなりません。しかし、もっと大事なことは、発信するものを自分自身の中に持っているのかどうかということ。ニッポンの本来的な価値観や強みに関する教育も、併せて強化していく必要があります。

そのような教育は、政府だけでできることではありません。教育は本来、地域コミュニティの関係者が皆で取り組むべきことであり、特に知識やスキル以外の、人としての生き方や価値観といった道徳教育は、公教育にまかせきりにできるものではなかったはずです。以前は寺子屋など、お寺がその分野で果たしてきた役割も大きかったでしょう。悲しいかな、現在のお寺はそのような役割を十分に果たせていませんが、お寺も今こそ自らの役割を再認識し、過去の伝統を守るばかりでなく、今を生きる人が「道心」を育み、自らの生きる「道」を見つけるためのパートナーとしての役割を取り戻すべきだと思います。

私たちの主催する未来の住職塾には、昨年と今年で全国200を超える参加寺院が集い、これからの社会において求められるお寺の役割を探求する学びを深めています。私たちは、これからのお寺においては「新たな絆を結ぶご縁のコミュニティ」としての役割が大切になってくると見ています。そして、そのようなコミュニティの中で、人々が時間をかけて生きる「道」を共に学ぶことを願っています。

自分はどこからやってきて、何者であり、どこへ向かっているのか。最澄さんの仰るように、自分の生きる「道」を知り、しっかり歩む人こそが、ニッポンをもっとクールにしていくのではないでしょうか。