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「異性愛、法律で禁止へ」高校生が映画を通して描く、セクシュアルマイノリティの生きづらさ

2016年12月08日 15時20分 JST

NPO法人映画甲子園主催 高校生のためのeiga worldcup 2016 の結果が先日発表されました。

自由部門の優秀作品賞を受賞したのは、愛知県立昭和高等学校の「The Other Side」という作品。

扱うテーマは「セクシュアルマイノリティ」です。

映画はこちらから見ることができます。

映画紹介文

性的少数者への差別や偏見をテーマにしました。登場人物達の抱える生きづらさがより身近に伝わるように世界観を工夫しました。

冒頭から引き込まれるものでした。

テレビに映るテロップには「異性愛 法律で禁止へ」の文字。

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(映画「The Other Side」より)

「2年前の自然受精禁止法の成立に続き、2月16日、欧米諸国に続いてここ日本でも異性愛者禁止法が国会で成立しました。この法案により、今まで法的には犯罪とみなされていなかった異性間の交際、また、交際している男女の同居が法的に禁止されることとなりました。」 

背景としては、人口に対して同性愛者が異性愛者より多く、精度の高い人工授精によって、自然出産より安全で健康な子どもが生まれる確率が高い社会。

つまり、マジョリティである同性愛者が安全な人工授精によって子どもを授かるより、異性愛者の自然妊娠・出産の方がリスクが高いことから、この異性愛者禁止法が成立しているという設定でした。

異性愛者がマイノリティであり、社会から抑圧されている中、物語ではある高校の教室で一組の男女がお互いを好きになります。周囲に異性愛者だとバレないよう、二人はお互いに同性の偽名をつけあい、同性のカップルを装いながらLINEや電話で愛を育んでいく。

しかし、二人の関係は長くは続きませんでした....

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(映画「The Other Side」より)

この映画の中の、同性愛が"普通"である社会で一組の男女のカップルがお互いを好きになっていく過程を見ていると、今私たちが生きる現実の社会と対比していまい、結局異性愛は美しく、素晴らしい、異性愛至上主義のようなものを描いているのかなと、ふと思ってしまっている自分がいました。

しかし、この映画が伝えたいのはそんなことではありませんでした。

好きになる性、性的指向が「多数派ではない」たったそれだけで社会から抜け落ちてしまう。差別や偏見にさらされ、自分で自分自身のことを否定してしまう、そんなマイノリティの生きづらさをリアルに描写しており、クライマックスでは、現実と同じようにシンプルな解決方法などなく、それでも尚前進する。高校生を生きる彼ら自身が考えるあるひとつの答えが提示されています。

次の世代が歩きやすいように

実は私もこの愛知県立昭和高等学校の出身であり、しかも映画研究部にも少し所属していました。

今回、映画研究部でこの映画の脚本を書いた当事者の高校生が私に連絡をしてきてくれたことで、映画のことを知りました。

彼は高校でもゲイであることを特に隠すことなく生活しているそうです。私が通っていた頃は自分のセクシュアリティに気づきつつも、なかなか周囲にはオープンにはできずにいたので、彼の勇気は本当に素晴らしいなと思います。

ここ数年で「LGBT」という言葉がメディアでもよく取り上げられ、一種のブームのように語られてきていますが、はたして当事者は自分らしく生きられるようになってきているのだろうかと思うと、時々わからなくなることがあります。

例えば、同世代の自分の周囲では徐々に意識が変わってきているように感じることもありますが、とはいえ一橋大学院でゲイの学生が自死した事件等も現実にはまだまだ起きています。職場の同僚が同性愛者・両性愛者だったら嫌だと答える人が35%もいるという調査もあります。(日本労働組合総連合会「LGBTに関する職場の意識調査」2016年6月-7月)

もちろん、今こうして私が自分らしく生きていると思えていることや、ブログを書いたり、LGBTについて発信できているのも、次の世代が歩きやすいよう、先人たちが道を切り開いてくれたからこそだと思います。

今すぐに目に見える形ではないかもしれないけれど、一歩一歩着実に前に進んで行くことで、その次を歩く人たちの足どりが軽くなっていたり、選択できる道が増えていたり、自分自身を否定しないですむようになっていたらいいなと思って、そう信じて活動しています。

そんな中、自分も通っていた高校で、いま自分らしく学校生活を送っている人がいる。それだけでなく映画という手法でまた次の道を繋いでいる。こんなに素敵なことはないと思いました。

わたしの「ふつう」とあなたの「ふつう」は違う。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。

同じく愛知県つながりで、先日話題になった人権週間に合わせて制作された啓発ポスターには、こんな言葉が書かれています。

わたしの「ふつう」とあなたの「ふつう」は違う。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。

例えば自己紹介で「松岡宗嗣です。7月29日生まれで、A型のしし座です。」と、血液型や星座を言うのと同じように「ゲイです。」と、言っても言わなくてもどっちでも良い、それくらいセクシュアリティが多様であることが"あたりまえ"になるといいなと思います。

高校生が描く、力強い30分のメッセージ。映画「The Other Side」はこちらから見ることができます。

(ちなみに、同校の「いる夏、いない夏。」という別の作品も入賞しています。こちらから見ることができます。)