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宇宙を相手にしたら、肌の色や性差なんて、塵みたいなもの

映画「ドリーム」(原題:Hidden Figures)を見て

2017年09月28日 09時55分 JST | 更新 2017年09月28日 10時30分 JST
Getty Images

就任直後のトランプ大統領が、イスラム教徒らの入国を一時禁止する大統領令に署名し大論争になっていた同じころ、JAXAの黒川 怜樹さんから、NASAにおけるダイバーシティの取り組みについてお話しを聞く機会があって、それがとても印象に残っていた。

すでにNASA の宇宙飛行士訓練生の50 パーセントが女性であることは知られているが、黒川さんによればいち早くイスラム教徒の宇宙飛行士を採用したのもNASAである。なにしろ周回軌道上を高速飛行する宇宙ステーション上の話だ。

一日に5回、メッカの方角に礼拝しなければならないイスラム教徒にとって、礼拝中も秒速でメッカの方角が変わるし、そもそも無重力なので地に頭をつけ祈りのポーズをすることさえ不可能だ。

その他、宇宙食の問題などを含めイスラム教徒の戒律と宇宙活動の折り合いがつかない困難を、生活上の問題などについて宗教上の勧告を発するイスラム法学者の協議会と交渉して新しいガイドブックを作成し、結果、シェイク・ムザファ・シュコア飛行士を筆頭に、イスラム教徒の宇宙飛行士が実現している。

この秋に日本でも公開される映画「ドリーム」(原題:Hidden Figures)を見て、なるほど、黒川さんの話していたNASAにおけるダイバーシティの原点はここにあるのかと納得した。

1960年代初頭、アメリカが推進していた有人宇宙飛行計画で、黒人の女性数学者たちが多大な貢献を成し遂げていたという、これまで語られなかった史実を描いた映画だ。

まだ人種差別が色濃く残り、黒人用の女性トイレも建物に存在しない時代。白人の同僚たちによる地味~な嫌がらせにも屈せず、たゆまぬ努力と驚くべき忍耐力で様々なハードルを突破し、宇宙開発になくてはならない才能として認められていく3人の女性の生き方は、あらためて人間が過去に成し遂げてきた大切なメッセージを今に伝えてくれる。

宇宙を相手にしたら、人間の肌の色や性差、国の違いなんて取るに足らない塵みたいなものだ。

未知の世界への壮大な挑戦に大切なのは、差別や偏見にとらわれず、同じ夢を共有し、その夢の実現のために可能な限り多彩な才能が力を発揮することなのだ。

コンピューターがまだ本格運用されていない時代に、超難解にして高度な計算ができる「人間コンピューター」として、NASAは戸惑いながらも優秀な黒人女性を受け入れ、見事にそのミッションを達成した。

彼女たちを排除したままであったら、アメリカは有人宇宙飛行計画でソ連と競うことはおろか、追いつくこともできなかったであろう。

そのことを十分なほどに知っているNASAだからこそ、現代においてもあらゆる地球上の組織の中で、最もダイバーシティを重視し、それを妨げる要因の排除に力を注いでいる。

NASAの公式ホームページにはこのように書いてある。

「(ミッション実現のため)我々は性別、人種、その他のあらゆる差異に関わらず、ありとあらゆる才能を集結し、莫大な多様性をもつ思考と鍛錬を有する、ワクワクするほど革新的な人材を構築している」

先人たちが乗り越えてきた闘いの歴史とその成果を見れば、今、アメリカで起きている白人至上主義運動や排外主義が、いかに陳腐で退化した発想であるかがわかるだろう。