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初のホワイトハウス会見取材で目にした「異様な光景」と、ロシアゲートに揺れるアメリカ

2017年06月10日 01時36分 JST

ホワイトハウスの中に入るのは初めてである。「サンデーステーション」で、トランプ大統領の会見取材が許可されたのだ。外から眺めては、いつか入ってみたいと思っていたのだが、夢がかなって実際に目にした状況はかなり異様なものだった。

ローズガーデンと呼ばれる中庭は大統領執務室の前にあり、そこで行われる記者会見はテレビでよく見る光景だ。中庭に行くと、ホワイトハウスのレポーターたちが席について中継の準備をしている。私がその異様さに気づいたのは会見直前だ。まず閣僚、幹部、スタッフたちが出てきたのだが、ものすごい人数が着席する。大統領のスピーチ台を前にして、5列くらいが身内のスタッフで占められていて、メディアが座れるのはその後ろになり、大統領まではかなり離れた位置になる。これでどうやって質問するのだろう。

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私の後ろに写っているのがすべて身内スタッフ

次に異様だったのが、会見冒頭だ。その日はトランプ大統領がパリ協定離脱について声明を発表することになっていた。しかし、予定より30分ほど遅れて、まず紹介されたのはペンス副大統領だ。そして、延々とトランプ大統領のこれまでの功績を話したあげく、「それでは皆さんお迎えしましょう、アメリカ合衆国大統領、ドナルド・トランプです!」と高らかに紹介。身内スタッフの盛大な拍手の中、執務室からトランプ大統領が現れた。これが会見? 見ると、メディアはシラッとして座っている。

さらにトランプ大統領自らの自慢話が続き、パリ協定の離脱を発表すると、また盛大な拍手。この人たちは、まだ選挙キャンペーンをやっているのか。そして、声明発表が終わったとたん、記者たちが一斉に立ち上がり叫び始めた。「パリ協定離脱で本当に雇用は増えるのか?」「コミー元FBI長官の公聴会について一言!」しかし、彼らの前には鉄壁の5列にわたる身内スタッフが起立して拍手をしているから、まったくトランプ大統領に声は届かない。記者の質問には一切答えず、大統領は大拍手の中、執務室へと戻っていった。

これが今のアメリカなのかと思った。伝えられているメディアとの決裂、そして内向きなトランプ政権を象徴する場面だと思った。オバマ大統領時代は声明発表の際も、メディアの質問に丁寧に答えていたという。残念ながら私があこがれていたホワイトハウスの姿はそこになかった。

パリ協定離脱とともにアメリカを揺るがしている、いわゆる「ロシアゲート」で、コミーFBI元長官の公聴会がついに行われた。意外だったのだが、アメリカでは「ロシアゲート」という言葉が日本のように一般的に使われていない。「ウォーターゲート」になぞらえるには、まだ確たる証拠もそろっていないことからメディアも慎重になっているのか、「Russian Investigation(ロシアに関する調査)」という言葉を使っている。果たして、「ロシアゲート」という言葉を使うほどの証拠が提出されるのか、コミー元長官の公聴会は全米の注目を集めた。

アメリカ大統領史の専門家で弁護士のジェームズ・ローベナルトさんは、ウォーターゲート事件についても調査を重ね、本を出版している。彼によれば、今回の公聴会でコミー元長官が証言をしたトランプ大統領との会話は「決定的証拠」にはなりえないのではという。

「今回の場合の決定的証拠は、大統領選でのトランプ陣営とロシア側の介入の共謀を、捜査機関が結びつけることです。

ウォーターゲート事件は内部の政治スパイ活動でした。アメリカ国内の政党同士の対決です。一方、今回のポイントは外国勢力が国内選挙に介入したことです。単なる外国勢力というだけでなく、我々の歴史的な敵国です。外国勢力の関与と国内選挙介入はずっと深刻です」

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ローベナルト氏のオフィスにて

ローベナルトさんはトランプ大統領の弾劾の可能性も含めて、「大変時間がかかるだろう」という。

「ニクソン大統領のときも2年かかりました。しかし、捜査は続きます。大統領が追い込まれ、自分を守ることに躍起になり、窮地に追い込まれると、仕事は進まなくなります」

ニクソン大統領が辞任に追い込まれたのは、民主党本部に再選委員会の関係者が侵入し、盗聴器を仕掛けようとしたウォーターゲート事件そのものではなかった。決定的証拠は、追い込まれたニクソン大統領が自ら行った、隠ぺい工作とその録音テープだったのだ。

なにより、とローベナルトさんは言葉に力を込めた。

「『ウォーターゲート』という歴史から私たちが学ぶことができるのは、権力による隠ぺいは、時に犯罪よりも悪質だ、ということです」

「ロシアに関する調査」はまだ始まったばかりである。