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「私たちの世界を変革する」持続可能な開発目標ってどんなもの?(第十一回:目標6)

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前回は、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」※の目標7についてご紹介しました。今回は、目標6について紹介したいと思います。

※「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」:2016年から2030年までの15年間に、日本を含む世界のすべての国々が達成すべき目標。貧困・格差、気候変動などの課題について17の目標が定められている。「誰一人取り残さない」がキャッチフレーズになっている。

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「私たちのように農村部に住んでいても、都市の富裕層のように、蛇口をひねって安全な水を使うことができるようになるということですね」と話し目標6を喜ぶ住民(マダガスカル)
@WaterAid/ Ernest Randriarimalala

世界では、6億5000万人が安全な水を使うことができず、人口の3分の1にあたる23億人が適切な衛生設備を利用することができません。安全な水と衛生設備を利用できないことによる下痢が原因で、1日約900人の子どもたちが命を落としています。

水のターゲットは2015年を待たずに達成された(2015年までの開発目標であった、ミレニアム開発目標(MDGs)の水・衛生は「水と衛生設備を利用できない人口の割合を半減させる」。)と言われていますが、その実態は、人口の多い中国とインドでの安全な水へのアクセスが改善されただけで、サブサハラアフリカでは改善が見られないままの国も多くありました。

衛生設備については、MDGsのなかで最も進捗が遅れているターゲットと言われており、このままの進捗スピードでは、サブサハラアフリカの衛生設備のMDGsターゲットは、あと100年たっても達成できない、という試算もあります。

MDGsではこのような結果だった水・衛生ですが、実はMDGsのなかでは、水・衛生はあまり目立っていませんでした。MDGsの目標7「環境の持続可能性確保」の下に水・衛生のターゲットが置かれており、しかも、MDGsが作られた当初は衛生設備がどこにも入っておらず、この分野で活動するNGOなどがアドボカシーに取り組んだ結果、衛生設備が追加された、というほどでした。

そのため、SDGsの策定プロセスでは、水・衛生分野で活動するNGOや国連機関などが、独立した水・衛生の目標が立てられることを求めてアドボカシーに取り組み、2015年9月にSDGsが採択され、目標6が正式に決まった際には、「水と衛生の注目度が2000年と比べて大きく変わった証し」と喜んだものでした。

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水・衛生分野に特化したNGO ウォーターエイドは、SDGsについて、水・衛生が独立した目標になったことに加えて、下記の点からも評価しています。

  • MDGsでは「利用できない人口の割合を半減」だったが、SDGsでは、ターゲット1でユニバーサルアクセスが明記されている。
  • ターゲット2で、女性および女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに注力することが明記されている。
  • MDGsでは取り上げられていなかった「衛生習慣」がターゲット2に明記されている。

【目標6 ターゲット1・2】

6.1 2030 年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。

6.2 2030 年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設と衛生習慣へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う

こうやってみると、目標6の達成の見通しは明るいように見えますが、実はそうとも言い切れません。2016年7月にニューヨークで開催されたハイレベル政治フォーラム(SDGsの進捗のフォローアップを国際レベルで取りまとめる会議)に参加したウォーターエイドのスタッフは、「SDGsの17の目標について、統合して対応するのではなく、いくつかの目標を優先的に選んで取り組もうとしている国がある。

ハイレベル政治フォーラムでは、他の目標に比べて目標6の注目度が低かった。」と話します。特に衛生設備については、23億人もの人がアクセスできないにもかかわらず、「トイレは個人レベルまたはコミュニティレベルの課題」という認識が強く、国をあげて優先化されることが少ないという課題があります。

そのような中、目標6、特に衛生設備に取り組む重要性を発信することを目指し、2016年8月、株式会社LIXILグループが「衛生環境の未整備による社会経済的損失の分析」を発表しました。

2015年、劣悪な衛生環境によって世界が払ったコストは約22兆円にものぼるという調査結果をもとに、政治的リーダーシップのもとで衛生設備の普及拡大が進められるよう提言しています。

また、外務省のウェブサイトでも紹介されているとおり、SDGsの目標はお互いにリンクしています。

(目標1)水くみに使っていた時間を生産活動に充てて収入を得られるようになったり
(目標3)水・衛生のアクセスが改善されることによって、下痢にかからなくなったり
(目標4)学校にトイレができて女の子たちが通いやすくなったり
-このように目標6は、他の目標にもつながっています。

経済的に見てもSDGs達成という点で見ても重要な目標6。後回しされずに取り組まれるようにするためにも、ぜひ多くの皆さまに「目標6(水・衛生)は重要」ということを発信していただきたいと思います。

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学校にトイレができたことで、学校に安心して通えるようになったと話す女子生徒たち(ガーナ)
@WaterAid/ Nyani Quarmyne/ Panos

特定非営利活動法人ウォーターエイドジャパン
事務局長
高橋 郁