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西口洋平 Headshot

ステージ4のがん患者が、がん患者のためのサービス作りに挑戦する

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不定期でブログを投稿させていただきます、西口洋平と申します。

妻と小学生のこどもを持つ、一般的な37歳男性です。

「ステージ4のがん」であることを除いては。がんだと宣告されたときに、おぼえた孤独感。仲間がいない。家族のこと、仕事のこと、お金のこと・・・相談できる相手がいない。同じ境遇の人が周りにいない。ほんとにいなかった。

それなら自分で仲間を募るサービスをつくろうと、ネット上のピア(仲間)サポートサービス「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう~」を、2016年4月に立ち上げました。

子どももいて、地元には親もいる。仕事やお金......心配は尽きません。そんな僕みたいな働き盛り世代で、がんと闘う人たちをサポートしたい。そんな思いから、抗がん剤による治療、副作用と付き合いながら、仕事と並行して、地道に活動を続けています。

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これまでのコラム
#1 「ステージ4のがん」と告知された日
#2 がん告知から2か月半、休んでも会社は回っていた。
#3 「がん」になって、何かしたいという気持ちが芽生えた

取材記事
36歳の末期がん患者が、娘に残すために始めた「最後の仕事」
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仕事に復帰してしばらくは、とにかく食事に気をつけて、体に悪いものは摂らないということを、徹底していた。ほぼ毎日お弁当を食べ、野菜中心の食生活を送り、食後には青汁を飲み、しいたけエキスを飲み、そして、お肉とお酒は控えていた。あ、牛乳も。
夜ごはんも外食は避けて家で食べる。食後には野菜のジュースを飲み、早めに寝る。

「ステージ4のがん」という深刻な病気とは裏腹に、体は軽いし、仕事もできる。治療にも慣れてきたころには、少し余裕も出てきて、食べたいものを食べたいし、飲みたいものを飲みたいと思うように。最初は隠れてちょびちょび、という感じだったが、「何に隠れているんだ?」という気持ちになり、夏の終わりごろからは、お肉も食べるし、お酒も飲むようになった。ただし、ほどほどに。

そういったタイミングでのビジネスコンテストへのチャレンジで、気持ちも前を向きはじめていた。


■1次選考突破、でも壁にぶち当たる

最初は、イチがん患者として感じた「不」とは何かを考えるところからスタート。もちろん、がんという病気を取り巻く様々な環境や社会的な問題などは、まったくの無知であったわけで。まさしく、自身の想いだけでの出発となった。

1次選考は書類審査のみ。ビジネスの中身よりも、想いを重視します、みたいな感じだったので、言葉通り想いをだけをのせて提出し、無事に通過。1次選考通過者は、数回に分けて研修に参加し、ビジネスプランをブラッシュアップさせ、最終審査にチャレンジするというもの。ここからが本当のはじまりとなる。まあ、甘く考えていたところがあったわけで、大きな壁にぶち当たった。

仕事の合間を見つけて研修に参加し、新しいビジネスを立ち上げることの意味やそこでの自身の成長、本当のニーズとは何か、ビジネスとは何かなど、様々な観点から知識や考え方、心構えを学ぶ。そして、参加者同士の交流はもちろん、お互いのビジネスに対する指摘やアドバイスなどは、研修ごとに行われ、その都度、へこまされてしまう。いや、へこまされるのではなく、自身のできなさ加減に、勝手にへこんでいたんだと思う。


■声を聞いて真のニーズを導き出そう――課題が見えてきた

まだビジネスアイデアが固まらない中、2016年の年初に最初のプレゼンタイムが設けられる。参加者同士で発表し合うだけではあるものの、もちろん緊張する。ビジネスを真面目に考えている、志が同じ人たちからフィードバックをもらえる非常に良い機会だ。

でも、ぼくはその日、抗がん剤の治療のため病院だったため、友人に任せることに。本音としては、なんとしてでも参加したかったが、年明け早々で治療の日をズラすことができなかった。

プレゼン内容と指摘や質問などをすべて録音し、あとで音声データを送ってくれることになっていたので、左腕に点滴を打ち、汗ばんだ右手でスマホを握りしめるという感じ。担当の看護師さんにもその緊張が伝わってしまい、リラックスしてくださいと声をかけられる始末だった。

最初の連絡はLINEでのメッセージ。「終わった」「良かった」と。簡単すぎて、今ひとつ状況をつかめずにいた。その後、音声データが届くものの、うまく再生できずイライラ。看護師さんの言葉がまた頭をよぎる。次のメールでなんとか再生でき、内容を聞く。プレゼンが終わり、指摘をもらえる時間に。

ここで耳はダンボになる。そういうときに限って、点滴の交換になったりするわけで。質問やアドバイスをする人はたくさんいた。そして、考えなくてはいけない問題もたくさん出てきた。そう、大きな収穫があったのだ。

その最たるものは、いろいろな立場や状況の人の声を聞き、声を聞き、声を聞き、とにかく声を聞き、本当のニーズは何なのか? を深堀りすることであった。

この日を境にし、ぼくらはいろんな場所に顔を出し、話を聞き、新たな人を紹介してもらっては話を聞く、を繰り返した。そこで感じたのは、いくら調べても出てこない情報が、足を使えば得られるということだった。そして、そういった会話の中から、当初とはまた違う感情がぼくの中に生まれてくるのであった。


■行動を起こせば、気持ちが前をむいていく

ひょんなきっかけではじめたチャレンジ。最初は右も左もわからず、まぁやってみようという感じだった。研修の自己紹介では、当事者として事業を考えているということを伝えるために、がんであることをカミングアウトしないといけないし。最初からすごい前のめりかというそうでもなかったと思う。

もちろん、仕事もしているわけで、そのバランスも考えてないといけない。そもそも、そんなに器用じゃない性格で、ここの折り合いなんかも考えながらで、前向きになる要素は少なかった。

でも今振り返れば、やり進めていく中で、物事は着実に前進する。それを目の当たりにすると、うれしいし、達成感もあるし、誰かのためになっているとも思える。面白くなるし、より良くしたいと思うし、どんどんのめりこんでいく。いつの間にか、ずっと考えている。そんなスパイラルになっていた。そう、前向きになっていた。

また、因果関係のほどはよくわからないが、抗がん剤の効きもよく、腫瘍の増大も見受けられないということで、主治医からもビックリされていた。何もしなければ、半年の命だったのに、だ。

前を向くきっかけは、行動をしたこと。のちのち、そう思えるようになったことは、キャンサーペアレンツの活動にも大きな影響を与えることになる。

(つづく)

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