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ユニットバス・クッションフロア・蛍光灯からの脱却

あまりに均質化したこの室内風景を「おかしい」と思うことが大切なのではないか

2017年09月18日 16時42分 JST | 更新 2017年09月18日 16時42分 JST

前回の続きです。

『「ハレ」と「ケ」の建築』と同じく、日本では建物の中でも「ハレ」の空間の美しさに比べ、「ケ」の空間がおざなりにされすぎではないか、というお話。

考えられる理由としては・・・

日本の家はプライベートな場所であり、よっぽど親しい人でないと家に招くことはない。 ホテルやレストランなどの内装が美しいのは空間を含めた体験を売っているので当たり前だが、家の中はプライベートな場所なので見栄えを気にする必要はない。 一方、イギリスでは家は社交の場で、気軽に人を招くので、他人の見た目を気にする必要がある。

もっともらしく聞こえるのですが、判断の軸は「他人」で良いのか?と思います。

Garbage In Garbage Out(ゴミばかり入れているとゴミばかり出てくる)

という言葉がある通り、醜悪なものしか見ないと美しいと感じる感性すら鈍ってしまいますし、そもそも自分の目に入るすべての景色、起きている時間の何割かを過ごす家の中の景色を景色(View)としては見ておらず、空間がそこに住む人に与える感覚を五感を使って感じられなくなっているのではないかと思います。

アレックス・カー氏の『ニッポン景観論』にこういう画像が載ってますが(*1)、まさにこれのインテリア版。

Alex Kerr

バチカンのサン・ピエトロ広場(現状)©Alex Kerr

Alex Kerr

バチカンのサン・ピエトロ広場(改善)

大型駐車場ができたことによって、実に便利になりました。アスファルトは危険ですから、ご注意ください。 ©Alex Kerr

*1・・・写真とキャプションは"日経ビジネスオンライン:『この景色は「嫌だ」と思うことが大切です』より引用。

始終ピコピコ鳴っている部屋中に溢れる家電から流れる電子音、ユニットバス・トイレ・家電などあらゆる機器に貼ってある注意書きシール、「木目調」ビニール製クッションフロアにオフホワイトの壁紙クロス、青白い蛍光灯がコウコウと光る室内・・・

日本全土に溢れた、あまりに均質化したこの室内風景を「おかしい」と思うことが大切なのではないかと思います。

「おかしい」と体の内側からの叫びが聞こえてこないのであれば、前回の記事の通り、今はひと昔前ならインテリア雑誌で眺めることしかできなかったような家に気軽に泊まれる時代。 「非日常」を求めて短期の旅行をするのではなく、「上質な日常」を過ごすため長期の滞在をして宿泊先で普段と同じように家事をしたり仕事したりしてみると、空間が自分の体や心に与える影響に気がつきます。 実際、私が空間が持つパワーに気づいたのは、月の半分は海外にいた会社員時代に無味乾燥で真っ白の箱でしかないサービスアパートに長く住みすぎた時でした(*2)。

*2・・・参照:『空間が持つパワー』『記憶に残るのはどんな感情を抱いたか』

よく言われることですが、衣・食・住の中でとりわけ「住」の優先順位が高いイギリス、住環境の成熟度は高いですが、みながみな初めから美的センスを持ち合わせているわけではありません(*3)。 何が違うのかと言うと、

1. 「人と一緒でいたい」という願望があまりなく、個性的なことが良いとされているので、服でもインテリアでも自分の好みにするのが当たり前

2. 不動産売買は中古住宅が大半を占めるが、リノベーション業界でワンストップ型のプレーヤーのシェアが極めて少なくほぼ全てがオーダーメイド型である(*4)

3. 1.と2.の結果、素人が自分でやるので失敗も含め経験値が高く、一生のうちに何度もリノベーションを繰り返す人も多い

4. 建築家やインテリアデザイナーなどプロは、工事業者からも建材メーカーからも独立した立場でアドバイスし、あるレベル以上の層はプロのサービスの価値を理解している

が挙げられます。

*3・・・参照:『「北欧インテリア」って何?』『ゴスロリとちゃぶ台ひっくり返し』『自分のスタイルを見つける方法』

*4・・・参照:『日英リノベーション業界比較』

4. 建築家やインテリアデザイナーなどプロは、工事業者からも建材メーカーからも独立した立場でアドバイスし、あるレベル以上の層はプロのサービスの価値を理解している

は、重要です。 イギリスの住宅建設業者は住宅難で需要が多く悪徳業者が横行しているので、プロは悪徳業者から客を守る役目を果たしますし、タイルやフローリングなど建材から家具や小物に至るまでほぼ全てのメーカーが建築家やデザイナーにトレードディスカウントとして割引価格を提供しているので、調達ボリュームによっては雇った方が安上がりということも十分ありえます。

世界的に先進国では大量生産・大量消費の前時代モデルから離れ、「自分らしさ・上質・こだわり・丁寧・ハンドメイド」などがキーワードになっていて、日本も例外ではありません。

ユニットバス・クッションフロア・蛍光灯のユビキタスインテリアから脱却する時代がやってきたと感じます。

(賃貸の話ですが、この対談が面白かったです SUUMO: 賃貸カスタマイズ&DIY

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