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女性の社会進出は少子化の原因なのか? ~少子化を止める二つの方法~

2014年12月17日 17時46分 JST | 更新 2015年02月15日 19時12分 JST
Compassionate Eye Foundation/Three Images via Getty Images

先日、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏が「保育環境を整えれば子供を産む、という大ウソ」という記事を公表した。少子化は専業主婦が増えれば解決する、という趣旨の記事だ。

女性が社会進出をしたから少子化が進んだ。

こういった話が当たり前のように言われていたのは随分前の事だと思うが、長谷川氏の主張はこれを逆に書いているだけだ。果たしてこれは正しいのだろうか。

■確かに少子化の原因は女性の社会進出だった。

根拠もなく意見をぶつけても意味がないので、少子化と社会進出を考える際にベースとなる研究成果を読み解いてみたい。

以下の記事は女性の社会進出と出産について、真正面から取り上げた研究だ。

RIETI - 女性の労働力参加と出生率の真の関係について-OECD諸国の分析と政策的意味

分析結果として4つの項目が挙げられている。これを簡単に紹介すると以下のようになる。

1.女性の社会進出で少子化は進むが......

2.仕事と家庭(家事・子育て)が両立出来れば出生率は改善し......

3.女性の社会進出による出生率の低下は両立度の引き上げで緩和可能で、仕事と家庭の両立が十分なら出生率への影響はゼロになる。

これに加えて、

4.1980年以前から女性の社会進出が進んでいた国は両立度が高く、1980年以降から女性の社会進出が進んだ国の両立度は現在も低い。

......という結果となっている。

4については、元々仕事の戦力として女性の割合が多い国は両立度を上げなければ仕事にならないので早期に対応していた、ということだろう。現在両立度が低い国も社会構造の変化で対応せざるを得なくなっている。これはまさに現在の日本だ。

今後は急激な両立度の引き上げ、女性の社会進出が求められるが、それ自体がまた軋轢を生むことは間違いない。先日の小渕大臣辞任もその歴史的な流れの一つではないか、というのが先日書いた小渕優子大臣の辞任が、日本経済と女性の社会進出に関係が無さ過ぎて頭痛が痛い。の主旨の一つでもある。

■少子化を止める方法はたった2つ。

さて、分析結果の1だけを考えれば、客観的に見ても長谷川氏の主張は正しい。女性が仕事をする。子育てをする人が居ない。だから子供の数が減る。因果関係としても間違っては居ない。

そして解決方法が2つある事も分かった。一つは女性の社会進出を逆流させて専業主婦を増やすこと。もう一つは女性が働きやすくすること。仕事と家庭の両立が可能なら出生率への影響は無くなるという事は、女性が働きやすい環境を、という方向性は少子化対策として正しいと言える。なお、働きやすい環境には4つの要素が関係する。家族環境(夫の家事参加度合)、職場環境(就業時間や場所の柔軟性)、地域環境(託児施設)、法的環境(育児休業など)の4点だ。

女性が働きやすい環境を作るという点については世間一般のコンセンサスは概ね取れていると思われる。時代遅れの象徴と言える政治家であっても「表向き」は、女は家に居て子育てをしろという人はほとんど居ない(3歳まで子供を抱き放題と言っていた安倍総理ですら女性の社会進出を掲げている)。

これは一つに人口減少による労働力の確保という点もある。保育園の整備等には手間もコストもかかる、そんなことをやらなくても女性が子供を育てればいい、その分男が稼げばいい、という考えもあるだろう。しかし少子化対策をやる理由は人口を維持し、労働人口を確保するためでもある。

人が減っても幸せに暮らせるなら全く問題は無いと思うが、それが難しいという事は明らかだ。高齢者を支えるワカモノは急激に減っている。労働人口が減り始めた状況で、女性は家にいれば良いというやり方は少子化対策として矛盾の極みであり、そもそもこのやり方で少子化が改善されても意味が無いという事になる(人口減少は既定路線なので、人口が急減することを前提にした対策も当然必要)。

■産休・育休と再就職の関係。

長谷川氏は記事の中で、アメリカは育児休業が短い、子育ての環境が良くない、なのに少子化にはなっていない、という点を指摘しているが、これについても研究結果では雇用の流動性という視点から答えを出している。

再就職が容易なアメリカやカナダでは育児休業はさほど重要ではない。子育てで離職してもまた次の仕事を探せば良いからだ。しかし、日本のようにいったん離職すると再就職が難しい状況では産休・育休が特に重要だと指摘する。

この点については企業側の対応について以下のように指摘する。

問題は企業側の協力だが、育休に対する企業負担が大きいと職員採用時に女性を差別したり、育休を取ろうとする女性を差別する可能性がある。企業の負担感を増すことなく、多くの人が育児休業を取りやすい社会環境を作りだすことが、極めて重要である。

~中略~

企業にインセンティブを与えるため、育休取得実績に基づく補助金制度をとり入れるほか、優良企業を奨励・宣伝するといった方法も考えられよう。

「女性の労働力参加と出生率の真の関係について-OECD諸国の分析と政策的意味」 経済産業研究所

この2つの指摘は当たり前の話であると同時に、今後の少子化対策の方向性も示している。母親や子供だけではなく、企業にも補助金や税制でバックアップをするというやり方もある一方、再就職しやすい事はそれらと同等の効果がある、つまりお雇用の流動性がセーフティネットになる、という一面も明示されているからだ。

■セーフティネットは「お金と流動性」。

今年の春頃には子育て支援の予算が4000億円足りない、という話が散々報じられる一方で最近では円安対策で兆単位の支出が取りざたされている。そういう砂漠に水を撒くような無駄は全部止めて子育て支援にお金をつぎ込めば良い。企業文化を変えるためにも意味不明な補助金や助成金、減税も全て廃止して産休・育休の取得支援に税金を使えば良い。

多くの夫婦が、子供が生まれた後に考えることは「家を買いたい」ということだ。自分は普段FPとしてそういう相談に多数のっているからよく分かる(住宅購入が正しいかどうかは別にして)。収入の高い夫婦にとって、海外旅行もブランド品も車もさほど興味はないが、教育費と住宅購入はダントツで支出の優先度が高い。出産・子育ての支援は消費拡大へ確実に貢献出来る(だから国は住宅ローン減税等で莫大な予算をつぎ込んでいる)。

徹底した子育て支援が、結婚して子供が生まれて消費が拡大して雇用が拡大して結婚しやすくなって......というサイクルが生まれるきっかけになるのではないか。

その上で雇用の流動化という、お金のかからないセーフティネットも進めるべきだ。産休・育休に加えて、辞めても再就職出来るという二重のセーフティネットがあれば安心して子供を生むことも出来るのではないか。

雇用が不安定な方が安心なんてバカじゃないか、と思われるかもしれないが、「雇用の安定」は別の言い方をすれば「雇用の固定」だ。固定度合があがり、入れ替わりが困難になるほど企業は途中離脱の可能性が高い女性を嫌うようになる。つまり解雇以前に雇用してもらえないという事だ。解雇を規制は出来ても雇用を強制は出来ない。解雇規制は一度雇われた人には高い壁となるが、これから雇われる人にも高い壁となる。

雇用の安定度が高すぎる日本では出産をする女性は、女性というだけでハンデを負っている。妊娠した人が冷遇されるマタハラにはそれが生まれるだけの土壌があるからということだ。今の環境では企業にとって妊娠した女性は辞めさせる事が正しいということになる。

企業が産休・育休の取得を嫌がる理由は、短期間だけ人を雇うことが手間やコストの面のみならず、法的にも困難を伴うからだ。したがって産休育休にともなう金銭的な補助と手間・法的リスクの緩和はセットで行うべきだろう。

■選択の自由は文化的な生活の基礎。

最低限の文化的生活を送るための条件として、子供を産んだら仕事を辞めないといけないという状況は許されるのか?という選択肢の問題もある。専業主婦でも共働きでもそれは本人が選べばいいことだ。国や政治家に生き方を強制される筋合いは誰にもない。更に付け加えれば辞めた後に自身のタイミングで再就職出来る、という選択肢も加わればより良いだろう。

国の役目として、子供を産みたいとおもった時に産める、さらには子供産んだほうが楽しい人生を送ることが出来る、そう思えるような環境づくりをすることが国のやるべき最低限の役目だろう。

働き方については以下の記事も参考にされたい。

元フジテレビアナウンサーが主張する「専業主婦が増えれば少子化は解決する」という意見がいまさら過ぎて頭痛が痛い。

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研究結果では日本の仕事と家庭の両立度は、調査対象となっている18か国中ギリシャについで二番に低いと指摘されている。そしてギリシャは財政破綻し、日本の財政状況は世界で一番悪化している。仕事と家庭の両立という、一見するとごく小さな話が国の行方に関わっていると考えるのは大げさ過ぎるだろうか。自分にはそう思えてならない。