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長老の出番

2014年04月25日 17時38分 JST | 更新 2014年04月26日 21時50分 JST

昨日まで北海道にあるボクたちの豆畑に行ってました。

今年もカフェのデザートメニューで使う豆(黒大豆や小豆)を

お店のスタッフの「手を汚し」て豆を作る予定です。

遊びでやっているんですか?と聞かれますが、

畑で豆を作ることは、遊びとは言わないけれど、

たしかに、お金儲けとは一切関係ありませんねー。

豆を作ることはひとつの手段であり、

「手を汚さなくては得られないものを得ること」が、

目的だと思っています。

さて、4年目の今年は、黒大豆と花豆を中心に、

1ヘクタール強、作付する予定です。

さらに、東京で豆を食べているお客さんたちに、

「こんなとこで、こんなことしてんのあたしたち」

とハタケを紹介し、豆づくり体験ができる遠足も

やろうかと予定しています。

予定です、予定です、

と歯切れが悪くなってしまうのは、自然相手のことだからです。

『青田褒めらば馬鹿褒めれ』。

青々とした稲穂は出来が良さそうに見えても、

収穫時にはどうなるかわからない。

最後の最後まで何が起きるかわからんぞヨ。

ほんとにそうなんです。

1年間、手間と経費をかけてやったとて、

やるせない理由でパーになることが自然相手にはある。

そんとき、ヘラヘラ笑って流すマインドを持ちなさいよ。

と、そんな意味の言葉です。

そういえば。

ちょっと話はそれます。

先だって、ある若い女性と打ち合わせをしてました。

親をとても大事にしている女性で、

美人なうえに学歴と職歴も申し分ない。

(本人はそんなこと無いと謙遜してましたけど)

親も娘さんのことをとても誇りに思っているらしかった。

とても穏やかで性格の良い女性ですが、

親の期待に応えたい、という気持ちがとても強いことが、

少し気になりました。

いまは親元を離れて仕事に明け暮れる彼女ですけど、

「結婚は、ちゃんと親の望む形で済ませたいんです」

とわりときちんと言ったので、ボクは小さく驚きました。

ワタシの希望は二の次にして、

というニュアンスがあったからです。

彼女はどうみても才色兼備ですから、

「みんな、あなたのことをほっとかないでしょう」

とボクはなんとはなしに言いました。すると、

「イエ」

と短く吐き、

「何遍も何遍も親の世話ですが、お見合いを繰り返しているんですけど、

ちっともうまくいきません」

最近は親も諦めているみたいですけど、

とまた短く言い、

「親の期待に応えたいと思いつつも、

なんだか、その通りには全然いかないの。

ワタシがワガママなだけなんだけど」。

そう話し終えると、突然、

今にも降り出しそうな顔になったので、ボクは大きく驚きました。

敗戦国が急に豊かになり、

この豊かさを築いた世代の価値観と、

脆い現実に揺れる価値観にサンドされたボクらは、

乾いたパンに挟まれたコンビーフみたいなものです。

こういう親の価値観と自分の価値観の間に挟まった、

その淋しさが、案外、いろいろなところで

いまの若いヒトたち(男女問わず)を

苦しめてるんじゃないかという気がしました。

自分は自分、とさっさと色んなレールから下りてしまったボクは

周りからは気楽に映り、話しやすいだけなのかもしれません。

いまの自分は親のおかげ、

いまの仕事も、友人も、幸福も、どこか親のおかげ、

と感じているヒトにとって、

生きる哀しみは、貧困や死別ではなく、

借り物人生を歩いているという実感のない実感なのかもしれません。

(大袈裟ですが)

彼氏にも、旦那さんにも、職場のヒトにも、

妻にも娘にも、

周りにいる近しいヒトにほど伝えにくい苦しみが、

暗渠になった川のように見えない形で潜伏しているとしたら、

モノは溢れていても、なんともやりきれない社会、

というのはわからなくもありません。

すべての結果にはしかるべき原因があり、

自分に不利な因子を慎重に取り除けば幸福である、

というインフォメーションは、

愛情という形で親から子へ伝達されますが、

それはあくまで一方的な情報だから鵜呑みにするなよと、

長老みたいなだれかが言うべきなのかもしれません。

「物事というのは、複数の因子が時間軸上で、

たまたま折り重なって起きるものであり、

どんな事柄だって自分の思うとおりになるものなんて

ひとつもないんだから、

心配することはないんじゃないかな」。

ボクは彼女に言おうと思いましたが、

みっともないのでやめました。

そういうことは長老みたいな誰かが言うからこそ効くものです。

「ボクはボクの人生だから、

誰のことも気にせず、好きに楽しく生きてきたし、

これからもそうするつもり。

もし君がよかったらだけど、なんか一緒にやってみる?」

そう言うと、ハイ、と彼女は言いました。

長老みたいな誰かの出番は多い気がします。