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卒業式のスピーチ ~「失敗を恐れないということ」~

2014年03月16日 17時12分 JST | 更新 2014年05月15日 18時12分 JST

皆さん、ご卒業おめでとうございます。

晴れて卒業を迎えられた皆さんに、僭越ながら私から祝辞を述べさせていただきます。


明日より、皆さんは様々なフィールドでご活躍されることと思います。

しかし、それは母艦を離れ大海原に漕ぎ出す小舟のようなもの。

無限の可能性があるとともに大変な挑戦の連続でもあります。

そんなスタート地点に立つ皆さん、きっと聞かれたことがあるでしょう。

失敗を恐れるな」という言葉。

私も若い時には――いえ、まだまだ行けると本人は思っていますが――よく言われたものでした。

私もこの言葉には同感で、皆さんもぜひ失敗を恐れずどんどん挑戦していって欲しいと思います。

ただ、注意して欲しいことがあります。

失敗を恐れない理由として「どんな失敗も成功の糧になるから」を挙げる言説を時々目にします。

確かに、失敗したことによって次の成功に寄与する経験や発見につながることはあります。

失敗の反省も必須でしょう。

ですが、よくよく考えてみてください。

結局成功につながるなら、それは「失敗」でしょうか?

言い換えますと、どんな失敗も成功の糧になるのだとしたら、失敗なんて存在しないのではないでしょうか?


私も今まで少しばかり生きてきて分かったことがあります。

それは、人生にはやっぱり「本当の失敗」があるということです。

もうどうにもならないほど辛く、悲しく、後悔しか残らず、次につなげようと思っても同じチャンスはもう来ない。

すさまじく無駄で、無意味で、空虚な、そんな時が。

もしかすると幸運にもこういう経験をせずに済む方も居るかもしれませんが、やはりこうした「本当の失敗」「痛烈な挫折」を想定しないのはひどく楽観的と言わざるを得ません。

厳しいことを言えば、要するに「失敗が糧になる」という考え方は甘すぎるのです。

「失敗を恐れない」と言いつつ、その実態は「本当の失敗なんてない」と高をくくっているわけで、それは「失敗を恐れていない」のではなく「失敗の可能性を見て見ぬ振りをしているだけ」なのです。

思いがけずいつかは成功につながるかもしれない、知らないうちに力になってるかもしれない、そういう意見もあります。

100年、1000年の長いスパンや、人類・社会といった大きな視点で見れば、確かにいつかはどこかで実を結ぶかもしれません。

ですが、数々の偉人の伝記を見てもその成功が必ずしも生前に評価されているとは限りません。本人にとっても充実した生涯だったかどうか怪しい方は少なくありません。

少なくとも有限である個人の生涯という範疇では「成功体験」が得られない可能性は十分にあるのです。

本当の失敗はこのように本当に厳しい存在です。

怖いですね。


でも、その上でなお私は「失敗を恐れるな」と皆さんに伝えたいのです。

それはもちろん「成功の糧になるから」ではありません。

簡単な話、「外れクジを引く覚悟がないと当たりクジは引けないから」です。

宝くじを買わないと1等3億円は当たりませんが、この時に「絶対3億円当たる」と信じて買う人はまずいません。

それと同じで、挑戦しないと成功しないんです。

でも挑戦する時には失敗するリスクも同時に抱いていることになります。

そして「失敗」は外れクジと同じで、次の当たりに何ら寄与しない、箸にも棒にもかからない可能性を想定する覚悟が必要です。

前回外れあるいは当たりを引いたからと言って、次に当たりが出る確率は変わりません。

でも「失敗は成功の糧になる」と信じるのは、ここで「外れクジが出たから次は当たりやすい」と考えるのと同じです。

もちろんどう思ってようと当たりクジが引けたらいいのですが、ついに大外れをひいてしまった時、または外れを連続で引き続けてしまった時に、こういう思考でいると、ある時容易に恐慌状態に陥ってしまいます。

例えば、

ずっと失敗ばかり、きっと次も失敗なんだ...」とか。

いわゆる失敗を恐れる状態です。

もう挑戦する気力が無くなってしまっています。

しかし、これも「外れクジが出たから次も外れクジ」と考えているという、冷静に考えればおかしい話なのです。

あるいは、

ずっと失敗してるけど次こそは絶対成功するはず。一世一代の大勝負だ!」とか。

こうした一世一代の大勝負というのも失敗を恐れてないように見えて、「失敗してもせいぜい次の1回だけ」に限定しようとしている点で失敗を恐れている思考です。

要は失敗し続けるのが怖いんですよ。

結局失敗に終わった時に次のクジを引く余力を無くしてしまいますし、成功してもそういう勝負を続けていればいつかは破綻します。


そう。

成功した時に、失うのを恐れて過度に萎縮したり、気が大きくなって無謀な挑戦をしてしまったり。

失敗した時に、連続の失敗を恐れて過度に萎縮したり、ムキになって無謀な挑戦をしてしまったり。

理屈では分かっていても、人の心はついついこうなりがちなのです。

結果、心理的あるいは物理的に二度と挑戦ができない状態に自身を追い込んでしまいます。

当たりクジを引く秘訣、知ってますか?

それは「クジを引き続けること」です。

具体的には「クジを引く機会を持つこと」と「次のクジを引く余力も残すこと」の2点に尽きます。

しかし、先ほどの状況ではどちらかがダメになって、クジを引き続けられなくなってしまいます。

非常にもったいないことです。

こうなってしまうのは最初に正しく「失敗」を見つめないせいで「失敗観」が歪みやすいためと私は思います。

だから皆さんには是非正しく失敗に向き合って欲しいんです。


失敗も人生の味の一つ。


失敗する気で挑戦して下さい。

そして失敗したとしても、その次も挑戦できるように生き延びて下さい。


このように「適度に失敗を恐れること」が、

失敗し続ける覚悟を決めること」が、

本当の「失敗を恐れないこと」だと思います。


Keep fighting and stay alive!


皆さんの人生の旅路に幸多からんことを。

以上です。

ありがとうございました。


P.S.

お久しぶりです。

何となく時期的に卒業式ネタです~。

TEDなどスピーチもの見てるとこういうの書きたくなってしまいますね(/ω\)

(2014年3月15日の「雪見、月見、花見。」より転載)

新年の決意を実現するための、5つのヒント