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この春、子どもたちに届いたものは? 子どもの貧困に新しい取り組み

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あなたを想う人は「ここにいるよ。」という気持ちが原動力の新事業


2015年6月に設立されたばかりの団体、子どもの貧困対策センター「あすのば」が、新しい取り組みを始めました。2016年春に新生活、入学を迎える貧困家庭の子どもたちに給付金を支給するという、入学・新生活応援給付金事業です。子どもの成長をみんなで祝う気持ち、あなたを想う人は「ここにいるよ。」という気持ちを給付金に込めて届けよう、というアイディアで事業は始まりました。

学生の街頭募金から始まった活動は大きな成果に


2015年11月から学生たちが主体となって、全国各地で街頭募金活動が始まりました。新聞、テレビやラジオなどのメディアでも取り上げられ、多くの方々から寄付が集まりました。ハフィントンポストの投稿記事に対しても多くのご賛同をいただきました。記事を執筆した私の予想以上に多くの応援コメント、子どもの貧困問題へのご意見をいただきました。ご支援いただき、ありがとうございました。

ハフィントンポスト日本版記事
2016年の春は特別な春にしよう。想いを寄せる人がいると日本の子どもへ、エールを

最終的に、寄付金額は当初目標の600万円を大幅に上回り、798万円の寄付が集まりました。給付金は子どもの年齢に応じて一人3万円から5万円、当初計画の160人から募集人員を200人に増やすことができました。

給付金はどのように届けられたか


支給人数の増員が可能になったとはいえ、貧困世帯の子どもの数全体からすれば、支給人数は決して多くはありません。給付金申請者数は386名に上り、倍率は1.9倍にもなりました。選考委員会での対象者の選考は非常に難しいものになりましたが、198名に給付金を支給されました。

選考では、申請書類をもとに、申請者家庭の給与、手当、養育費などの収入と家賃や住宅ローン、未就労の子どもの数といった家計の負担が考慮されました。申請内容から、貧困家庭の状況を知ることにもなりました。

ある申請者からの電話


給付金の申請には、住民票、所得税非課税証明書の提出が必要でしたが、ある申請者の方は提出していませんでした。事務局から必要書類の提出をお願いしたところ、お母さんから電話がありました。

「給料日前で住民票、所得税非課税証明書の発行手数料600円が払えず、給料日まで待っていただけませんか。」

この方の年収は税込みで75万円、家賃が月2万5千円の公営住宅に子ども3人と暮らしています。この春に2人がそれぞれ高校入学、中学入学を迎えます。申請書にはこのように書かれていました。

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このようなご家庭に、給付金がどれだけの助けになるか、たくさんの方々のあたたかい気持ちが届けられました。

お金で解決する問題ではない、という批判を超えて


このような事業に対しては批判もあります。

現金給付は支給目的通りに使われない可能性がある。効果がないのではないか。

現金給付にはそのような問題がつきものですが、日本のように物資の購入が容易な場合は、最も効率的な方法であるのも確かではないでしょうか。「あすのば」では、今回の給付対象世帯に直接訪問することを検討しています。貧困世帯の実態を知ることが目的ですが、その中で、給付金がどのように使われたかという点についてもフォローし、現金給付の制度自体もより効果的なものにできると考えています。

貧困家庭への経済的支援では、貧困の連鎖を断ち切れないのではないか。

貧困家庭の子どもは、大人になってからの収入も低くなる、という「貧困の連鎖」に対して、親の所得水準よりも、親の倫理観、教育に対する熱意が、子供の将来には大切ではないか、という意見があります。

確かに、親の考え方や価値観が子どもに与える影響は大きく、収入の多寡よりも子どもの学力や将来に影響を与えていると思います。高収入の家庭であっても、子どもが高い学力を身に付けられるとは限りません。しかし、たとえば、年収75万円で母親のパート収入だけで生活している家庭であったら、親が教育熱心になりたくてもなれないまま(もしくは、親が教育に対する理解を深めることもできないまま、という場合もあるでしょう)、学校生活に必要なお金を工面するのに精一杯なのではないでしょうか。

日本の子どもの教育費用は、家庭の負担割合が多く、教育にお金がかかります。奨学金制度の充実など、さまざまな提案はありますが、まだまだ時間がかかる問題です。制服代を期日までに支払うのにも苦労しているような、貧困の連鎖の中にある家庭の親に対して、子どもへの教育に対する熱心さが足りないと批判する前に、どの家庭の子どもも入学や新生活を喜べるように、手を差し伸べることが先なのではないでしょうか。

子どもの貧困、解決へはこれからです


「あすのば」では今回の入学・新生活応援給付金事業を通じて、貧困家庭の親や子どもたちの声に耳を傾け、新たな活動へとつなげていきます。4月には参議院厚生労働委員会にて、小河光治代表理事が参考人として意見陳述をしました。また、6月には設立1周年のつどいが開催されます。

今後の活動にも、皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

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野口由美子(ブログ Parenting Tips