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「モバイルファースト」から「モバイルオンリー」へ インターネットの最新動向

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「モバイルファースト」は当たり前になってきた。そしてサービスによっては、さらに「モバイルオンリー」に絞る流れも出始めている。

数年前まで、ほとんどの主要なインターネットサービスはPCサイト向けが中心であった。
ところが爆発的なスマホの普及を受けて、モバイル向けから優先して開発し、その後でPCサイト向けを手掛ける、いわゆる「モバイルファースト」が主流になってきた。このモバイルファーストの成功事例としてはフェイスブックが挙げられる。

図1に示すように、3年ほど前にはモバイルオンリー・ユーザーがPCオンリー・ユーザーの1/4しかいなかったのが、最近では逆に、モバイルオンリーの月間アクティブユーザー数が7億2700万人以上とPCオンリー(1億6000万人)の4~5倍近くと膨れ上がっている。
その結果モバイル広告売上も急成長を続け、昨年の第2四半期には広告売上全体の76%も占めるようになったのだ。

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図1 フェイスブックの月間アクティブユーザー数(2015年第2四半期決算発表)は15億5000万人で、そのうち46.9%に相当する7億2700万人はモバイルオンリー・ユーザーである。デスクトップ(PC)を併用している人も加えたモバイルユーザー数は13億8500人となり、全体の約90%も占める。

日本の主要ネットサービスでもモバイルシフトが加速化している。

ニールセンの調査でも明らかにしているように、PCからアクセスするユーザーが減り、逆にスマホからのユーザーが急増している。日本のトップ10サービスを見てもほとんどが、この1年間近くでPCユーザーを平均して10%も減らしているのに対し、スマホからは平均して20%も急増させているのである。

大半の主要サービスにおいては、すでにスマホユーザーがPCユーザーの倍近くになってきており、すごい勢いでモバイル主流に代わってきている。この流れはまだ続きそうだから、「モバイルファースト」は当然として、サービスによってはPCオンリー・ユーザー(スマホアクセスをしないユーザー)を切り捨てて、モバイル・ユーザーだけに絞った「モバイルオンリー」が出てきてもおかしくない。

図1のフェイスブックの場合でも、PCオンリー・ユーザーは全体の約1割に落ち込み、さらに減り続けているのだ。すでにこれまでも、メッセンジャーや配車アプリなどのように、最初からスマホ向けだけを前提にしたサービスはたくさん生まれてきている。しかしこれからは、PC向けが前提と思われたインターネットサービスでも、PCユーザーをパスしてモバイルに特化する動きが活発化しそうである。

ここで、「モバイルオンリー」サービスの事例を見ていこう。

今年にもサービス開始を予定している英アトム銀行(Atom Bank)は、まさにモバイルオンリー銀行である。銀行版Uberとして注目され、スペインの大手銀行BBVAからも出資を受けている。

銀行と顧客間の取引チャネルとしては、これまで支店やATM、Webサイト(オンラインバンキング)などが中心であった。

でも最近はFinTechの追い風も受けて、スマホを介したモバイルバンキングの取引件数が急上昇している(図2参照)。英銀行協会もモバイルバンキングによる取引件数が、その他のすべてのチャネルによる取引件数総計を2020年までに上回ると予測している。

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図2 モバイルユーザーだけを対象にする銀行が登場してくる。モバイル(事実上スマホ)チャネルの銀行取引件数が年々急増しており、数年以内に他のチャネルすべての取引件数総和を上回ると見られている。そこで、スマホチャネルしか備えないモバイルオンリー銀行が年内にも立ち上がる

それならばと、支店やATM、Webサイトでの銀行取引を提供しないで、モバイルアプリからしか取引させない銀行を立ち上げようとしているのだ。ログインはスマホを介した生体認証で行い、まずは顔認識と音声認識で始め、指紋認識も加えていきたいという。

こうしたモバイルオンリー銀行を、フランスの大手通信業者Orange(フランステレコム)も立ち上げると、このほど明らかにした。Orange Bankの開業は2017年に予定している。

菓子メーカーDoritos(ドリトス)は、「モバイルオンリー」のキャンペーンに注力し始めている。

ミレニアム世代に代表される若年層に絞った効果的なキャンペーンを実施するためである。昨年夏に実施した例では、著名なソーシャルメディア・インフルエンサーと組んで3Dビデオを制作し、同社の特定スナックを購入した者だけにビデオを視聴させる。購入者の特定をQRコードで実施するのでは当たり前すぎる。

そこで図3のように、実際に購入しスナック(コーンチップ)をスキャンさせることにより、購入者であることを特定していた。

このように、多機能化しているスマホの特性を活かした面白い仕掛けを用意して、若いユーザー層に話題を拡散させて、実際に購入してもらおうとしているのだ。

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図3 菓子メーカーDoritos(ドリトス)のスマホユーザー向けサービス。QRコードではなくて実際のコーンチップをスキャンできる仕掛けを提供している。商品購入者には、3D用メガネが無料配布される

差別化社会が生み出すモバイルオンリー・ユーザー、米国では社会問題に


このようにPC向けを切り捨て「モバイルオンリー」に絞りこむことによって、より優れたサービスやキャンペーンを効率よく展開していこうとする流れは、加速化するであろう。

またここ数年、続々と生まれている新しいネットサービスとなると、最初からPCを相手にしないでスマホアプリが中心である。このため、多くの若者にとっては、PCなんか無くてもかまわないのかもしれない。
モバイルオンリー・ユーザーは時代の先端を走るクールは人たちと思っていたのだが・・・・。

ところが米国では、モバイルオンリー・ユーザーは差別化社会が生み出した落とし子と見なされ、社会問題になりつつあるのだ。
昨年末(2015年12月)にPew Research Centerが公表した調査結果は、かなり衝撃的なものであった。

家庭でのブロードバンド利用率は一本調子で増え続け、2013年に70%のピークに立ったのだが、その後減りはじめ2015年には67%に落ちた。家庭でのブロードバンド利用者とは、家庭のパソコン(PC)でインターネットを利用している人たちである。

このような人たちはほとんどが、PCとモバイルの併用者である。ブロードバンド利用を止めるということは、PCインターネット利用も終えることになる。結果としてモバイルオンリー・ユーザーになってしまうことだ。

問題は、ブロードバンド利用を止めた人へのアンケート結果である。

必ずしもモバイルでインターネットサービスの用が足せるようになったから、ブロードバンドを止めたわけではないことである。ブロードバンドを止めた理由として、40%もの回答者はブロードバンド通信料やパソコン(PC)が高価であるためと答えている。図4に示すように、低所得者や低学歴者の恵まれない人ほど、この2年間で急激にモバイルオンリー・ユーザーになってしまい、家庭でのパソコンインターネット利用ができなくなっているのだ。

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図4 モバイルオンリー・ユーザーは必ずしも先端ユーザーではない。米国では、低所得者を中心にモバイルオンリー・ユーザーが増えてきている。

実は米国人の約2/3(69%)は、家庭からPCによるブロードバンドアクセスができないと、就職活動やヘルス情報収集、その他の重要な情報アクセスで大変不利であると答えている(2010年の56%から大きく増えている)。

確かに、90年代以降インターネットに蓄えられてきた膨大な知的資産や政府などの公的サービスの大半は、パソコンから効率よく利用できるようになっている。リーマンショック以降に貧富の格差が拡大し、パソコンとの併用を望みながらも、経済的な理由でモバイルオンリー・ユーザーにならざるえない低所得者層が増えているということだ。

そうした人は大画面による効果的なオンライン学習も受けられないし、各種情報収集でも不利になっている。この情報格差が貧富の格差のさらなる拡大を引き起こすと、Pewは警鐘を鳴らしている。

(2016年1月15日「media pub」より転載)

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