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「コアコアCPI」とは? 政府のデフレ脱却判断に採用へ【争点:アベノミクス】

2013年07月09日 17時42分 JST | 更新 2013年09月07日 18時12分 JST
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A man puts a package of snacks in a grocery basket at Ameyoko market in Tokyo, Japan, on Friday, May 31, 2013. The national price gauge fell 0.4 percent in April, matching the median estimate of 29 economists in a Bloomberg News survey. Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg via Getty Images

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5月全国消費者物価指数(除く生鮮、コア)が前年比0.0%とマイナスを脱し、デフレ脱却の局面が近づいているとの声が一部のエコノミストから出ているが、政府はエネルギー関連を除いた「コアコア指数」で判断する方針を明らかにしている。コア指数の上昇には、単純に需要の強まりと判断できない「訳ありケース」が含まれているからだ。デフレ脱却判断のハードルが高くなり、結果として消費増税判断に影響する可能性もある。

<コアCPI上昇、比重大きい電気料金の値上げ>

5月コアCPIがマイナスから抜け出し、6月以降の全国コアCPIがプラスに転換して、次第に上昇するとの見方が、エコノミストの中では多くなっている。

今年末には前年比プラス0.5%─0.6%程度まで上昇する可能性を指摘する声もある。

ただ、この中には電気料金の値上げ分が相当に含まれている。すでに5月から関西・九州電力が値上げ、7月以降は東北、四国電力も含め10%前後の値上げとなる。

<デフレ脱却、政府は慎重に判断>

これに対し、政府では本当の意味でのデフレ脱却の判断には、慎重な見方をとっている。中身の精査とともに、生鮮食品だけでなく変動の大きいエネルギー関連製品や、公共料金なども除いて、デフレ脱却を判断していく方針だ。

このため、通常の「コアCPI」ではなく、値上げの影響が大きい電気料金を除く「コアコアCPI」を使って判断する。

そのうえで政策当局幹部は「一時的ではなく、後戻りしない物価上昇でなければデフレ脱却とはいえない」としている。

そのコアコアCPIだが、5月時点でまだ水面下。前年比マイナス0.4%と、3、4月の0.8%から下落幅を縮小してきている。

このままのペースで縮小を続ければ、年内には上昇に転じるとも予想できそうだが、「物価下落幅が本当に縮小していくのかといえば、そう簡単ではないだろう」(政府筋)というのが政府部内で見方だ。

そこには、表面的な動きとは別の構造が隠されている。

<転換した大型テレビの価格戦略、CPIに影響>

これまでデフレ傾向を促進している"中心選手"と見られてきた大型テレビの価格に下げ止まりの動きがあり、それをデフレ脱却の大きな現象として指摘するエコノミストの意見が多くなっている。

だが、実態はどうも違うようだ。CPIの調査対象と推定される売れ筋テレビがこれ以上価格を下げても売れないとところまで安値となり、価格競争がハイエンド商品に移行するという現象が広がっているという。

実際、大手家電量販店の関係者は「売れ筋の32インチ液晶テレビは、もはや相当安くなってしまった。買い替え需要はむしろ、32インチと同じような価格に下がった37から40インチに移行している」と打ち明ける。

<マックの新価格戦略、CPI採用品目で値上げ>

また、5月全国CPIに大きく影響したと思われるある有名企業の価格戦略の展開があった。日本マクドナルド<2702.OS> の新商品の投入だった。

CPI調査では、チーズバーガーやハンバーガーを対象として採用している地域が多い。同社は「顧客の購買動向を分析した結果、ハンバーガーやチーズバーガーを値上げしたが、一方でチキンマックナゲットやポテトSサイズは値下げし、その他価格据え置きの商品もあり、商品全体ではわずか0.3%程度の値上げにすぎない」(広報)と説明する。

つまり、CPIに反映される商品は値上げしたが、その他の商品で値下げし、統計上は実態以上に物価が上がった形になっている可能性があるということだ。

同社では「話題の1000円バーガーも曜日・個数とも限定のいわば試みの商品」であり、消費者のデフレマインドの変化を見極める段階にあるといえそうだ。

一方で、円安が輸入コストの転嫁を通じて川上から川下製品へとじわじわと物価を押し上げている状況もある。電気料金のほか、パンやハムなど食品、そしてタブレット端末やブランド品まで円安の影響で軒並み値上げラッシュとなる。

<真のデフレ脱却へ、2つの課題>

この先、デフレ脱却につながるかどうかは、2つの課題を乗り越える必要がある。

一つは、人々の期待インフレ率の上昇だ。日銀が2%の物価目標を達成できるとしているのも、この期待インフレ率に働きかける自信があるとしているためだ。

バークレイズ証券によると、内閣府の消費動向調査から試算した家計のインフレ期待は2.5%に上昇、家計の期待形成がインフレ方向に傾斜し始めた可能性がある。

しかし、ここでは「1年後の物価見通し」を聞いていることから、来年の消費増税をはじめ、電力料金や食料価格の上昇など家計にとってのコスト増が背景となっている可能性を指摘。「安定的なインフレ期待の引き上げとは言いにくい。これらのノイズが続くため、景気見通しの改善に裏付けられた「良い期待インフレ率の上昇」を抽出することはかなり難しい」(チーフエコノミスト・森田京平氏)としている。

もう1つは、所得の増加だ。これなくして物価上昇が先行するリスクは広く懸念されている。

RBS証券では「07年までに経験したような労働分配率の低下が、今もなお続いているのであれば、家計部門への還元はなく、賃金改善を伴ったインフレ率の上昇は期待できない」と指摘する。

もっとも6月日銀短観で非製造業を中心に13年度人件費計画が増加している点などから「現在は、当時のような新興国を意識した人件費圧縮はさほど大きくない」(チーフエコノミスト・西岡純子氏)とみており、少なくともコアCPIで見たデフレ脱却といえる状況は、今年後半には実現すると予想している。

<デフレ脱却判断の慎重化、消費増税の判断に影響も>

このようにコアコアCPIを基準にデフレ脱却時期を判断した場合、脱却を政府が宣言するタイミングは、コアCPIを基準に判断する場合よりも、かなり先送りされる公算が大きい。

そのことは、政府が秋にも判断する消費税率の引き上げ判断に対し、微妙な影響を与える可能性がある。安倍晋三首相周辺のリフレ派と呼ばれる学者や専門家が、増税実施の判断にはコアコアCPIの上昇定着を伴うデフレ脱却の確認が必要と主張しかねないためだ。

(ロイターニュース 中川 泉 編集;田巻 一彦)

[東京 9日 ロイター]