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「失敗は武勇伝」と生徒は笑った。チェンジメーカー育成目指す、軽井沢の全寮制・国際学校「ISAK」

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2014年8月24日、長野県軽井沢町に私立の全寮制の国際学校「インターナショナル・スクール・オブ・アジア軽井沢」(以下、ISAK=アイザック)が開校した。あれから2年、15カ国・地域から集まった一期生49人は3年生になった。

ISAKは、世界のあらゆる分野で幅広く活躍できる、リーダーシップを発揮できる人材の育成を目指している。個人や法人らの寄付によって学校運営の資金を集め、文科省より日本の高等学校として、また卒業後に世界中の大学へ進学できる国際バカロレア認定校として指定を受け、授業はすべて英語で行われている。

各国から集まった生徒たちは、どんな日々を送っているのか。ダイバーシティを尊重しチェンジメーカーを目指す教育プログラムとは? 3年目のISAKをレポートする。


図書スペースの一角

■歴史の授業、自分たちで学びプレゼンする第一次世界大戦

10月の午後、肌寒くなってきた軽井沢のISAK。図書スペースなどが増設され、3学年の生徒が揃いスタッフも増えた学校は、開校時よりも活気にあふれている。まずは歴史の授業に足を運んだ。

2年生の授業は、「第一次世界大戦」を題材に、時系列で1914年から1年ごとに歴史の変遷を総括するグループワーク。20世紀の歴史を分析し、「戦争の原因と、戦争がもたらしたもの」について学ぶという。


IB(国際バカロレア)校には数種類の教材があり、先生が何を使うかを選ぶ。

この日は、1914年に起きた出来事を3〜4人の担当グループが発表。当時の出来事や産業や技術、軍力、女性のパワーなど、課題となる切り口について調べて、地図や写真などで作成した資料をもとにプレゼンする。

3人による約30分間のプレゼンを聞きながら、他の生徒たちはパソコンやiPad、ノートなどを使い自分なりの方法でメモを取る。もちろん授業は英語、日本人の女子生徒もメモを見ながら英語で発表していた。プレゼンのアプローチも様々で、幕末を学んだときは当時の主要人物になりきりロールプレイングしたこともあったという。


左から、日本、スロバキア、ミャンマー出身のグループが約30分間、英語でプレゼン。他の生徒たちに教えることで、生徒自身が学んでいく。

様々な国・地域から集まった生徒たちと歴史の授業をする上で、大切にしていることは何か。ISAK開校時から世界史を教えているアメリカ人のブレンダ・ハシャム先生は、「教室の中で、生徒と教員、生徒同士の信頼関係を築くことを大切にしている」と語った。


アメリカ・ケンタッキー州出身のブレンダ・ハシャム先生。各地のIB校で教えてきたベテラン歴史教師。

「真実、事実、情報……。歴史は1つの正しい答えがあるわけではありません。先生は答えを教える存在ではなくて、生徒たちと一緒に質問の答えを探求していきます」。いろんな人の意見を聞いて、議論をして、エビデンス(根拠)をもとに分析を重ねていく。それが歴史の授業だという。

「価値観が違う生徒たちの意見が対立したことは?」と尋ねると、「ありません」と一言。「例えば、ベトナム人の生徒が、中国について祖父や授業で聞いたことを話したとします。それだけではなくて、クラスにシェアすることで、みんながどう思うか意見を聞くんです。みんな自分が学んできたことと違う視点が知りたい。平和主義の子もいれば、そうでない子もいる。いろんな意見を持ち寄ることを許されている場所なんです」と語った。

■リーダーシップ教育、年2回のプロジェクト・ウィークで課題活動

またチェンジメーカーを育成するために、ISAKでは春と秋の年2回、2〜3年生を対象に1週間のプロジェクト・ウィークを実践している。その間、授業はすべて休講となり生徒は課外活動に専念する。生徒が一から活動内容を計画し、プロジェクトと向き合うなかでリーダーシップを身につけていく。

生徒たちは、身近な暮らしで出会ったテーマを課題に選んでいるようだ。あるグループは、自身の保健所見学や保護活動をきっかけに、殺処分ゼロを目指す「動物愛護」に取り組んでいた。また海外グループは、地元の高校と英語の授業を通じて交流したことで静かな生徒たちに驚き、「日本の生徒にも、双方向のディスカッションの場を」と地元の中学生を対象にしたワークショップを企画していた。

彼らは、プログラムで学ぶIDEOの「デザイン思考」を活用して課題をリサーチし、解決に向けたアクションに取り組む。活動資金はクラウドファンディングで募ることもあるという。


「最終目標は、殺処分ゼロ、動物保護法を変える」と語るヤスとミナミ。


「日本の教育プログラムに変化を」中学生のワークショップを企画するグループ。(左から)レックス(日本/オーストラリア)、プラン(タイ)、ビクター(スロバキア)、ジャスラージ(マレーシア)

■「失敗は武勇伝」DAICON、ビジネスコンテストへの挑戦

ここで、失敗をバネに前進するチーム「DAICON」の取り組みを紹介したい。1年生のときに4人のメンバーで結成されたDAICONは4月、NES(高校生のための起業ビジネスコンテスト)で最優秀賞に選ばれた。

当初、企業向けに高校生のインターンシップを提供するビジネスプランを構想していたDAICON。メンバーの清原三雅さんによると、2月の中間審査会で「明日までにやり直し」とダメ出しされチームは大きな危機を経験したという。

「もう一度チームで話し合ったらすごく揉めちゃって。僕は可能性あると思ってたんですけど、話し込んでいくうちに企業が(アルバイトではなく)高校生を雇うメリットがないとわかって、根本からプランが崩壊しちゃったんです。翌日の発表の直前になってもビジネスプランが浮かばなかった! だから正直に、『チームが崩壊しました。何もプランがありません!』って言ったんです」


DAICONメンバーの清原三雅さん

その素直さが審査員に響いたのか、中間審査会でなぜか「正直賞」の10万円をもらったDAICONは、もう一度ビジネスプランを一から考えた。同時に自分たちの特性を見直したという。そこで見えてきたのは、日本有数の観光リゾート地・軽井沢にいること。そして、39カ国の生徒が集まるISAKにいて、英語も中国語も話せる、多様な背景を持つ人たちが身近にいることだった。

あらためて観光業にフォーカスし、地元のお店や観光協会、観光客らを対象にニーズ調査を実施。軽井沢の観光が抱えている課題を、翻訳のサポート、外国語の情報サイト、特産品の周知などと整理し新たなビジネスプランを練り上げた。意気揚々と臨んだ3月の予選で落選。しかし、なんとか敗者復活戦で決勝進出を決める。

決勝までは、実績作りに専念した。お店の翻訳を手伝い、実際にメディアを立ち上げサイトに載せ、軽井沢の特産品を集めたオンラインショッピングサイトも作るなど、大会のテーマ「コミュニティにインパクトを与える」に注力した。決勝で、一つひとつの成果をまとめて丁寧に説明した結果、最優秀賞を受賞した。

「DAICONのDNAみたいな感じで、最初は落ちちゃうんですけど、それでも諦めずに、無理やりでも行っちゃう。失敗してもいい、というマインドセットがチームにある。失敗が武勇伝になっていて、みんな誇らしげに話しています」

その後も、地元の飲食店のレシピ開発のコンペでは、予選で落ちても決勝に乗り込んで優勝をつかむなどトライ&エラーを実践している。東京理科大学の学生らと一緒に、軽井沢の観光のために企画した「足水」プロジェクトは大失敗。清原さんは「メインロードから離れていて、2日間で10人くらいしか来なかった」と笑ってふり返る。


東京理科大学の学生と企画した「足水」プロジェクト。

■LGBTの生徒もサポート「当事者もいる。日常的に語り合える環境を」

カリキュラムだけでなく、学校の環境も変化している。8月からは生徒のサポートをする新たなフェローも数名も加わった。UWCに加盟するノルウェーの大学でメンタルヘルスやLGBT保健政策を学んだベネズエラ出身のロレーナ・エスピノツァさんは、LGBTなどの性的マイノリティに関する理解を深める活動のほか、当事者やアライ(支援者、理解者)ら20名以上が参加し映画を観たりする秘密のグループもスタートさせた。


8月に来日したISAKフェローのロレーナ・エスピオノツァさん

エスピノツァさんは「ISAKには当事者もいますし、秘密のグループでカミングアウトしている生徒もいます。学校はオープンマインドですがLGBTについて正しく理解していない子もいます。今後は、日常的に語り合える環境を作っていきながら、中期的には“だれでもトイレ”を設けるなどハード面の整備もしていきたい」などと展望を語った。

■UWC正式加盟、代表理事の小林りんさん「進化し続ける学校でありたい」

ISAKは10月、世界各国から選抜された高校生を受け入れる民間教育機関UWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)への加盟が決定。日本初の認定校として、2017年度には各国でUWC選抜試験に合格した外国人高校生約30人が入学する見通しだ。

ISAK代表理事の小林りんさんが、UWC加盟や今後の展望についてコメントを寄せた。日本の教育についても「社会にとって大切なのは、生徒の個性と同じくらい、学校の選択肢に多様なオプションがあること」と綴っている。たしかに、ダイバーシティは、画一的で一方通行になりがちな日本の教育制度にも必要なのだろう。

………

UWCへの加盟が決まったことで、生徒たちのダイバーシティがより広く深くなり、世界中からサステイナブルに学校のミッションに寄り添う教師陣が集うようになり、(現時点では日米に限られてしまいますが)卒業生の進路が家庭の経済事情に左右されなくなることを、大変うれしく思っています。

ただ、ISAKはまだスタートラインに立ったに過ぎません。卒業生たちが、数年後、数十年後に、世界各地の様々な分野でそれぞれの変革に挑んでくれている日の為に。私たちは、毎年がプロトタイプであるという精神を大切に、常に進化し続ける学校でありたいと強く願っています。

よく「ISAKをもう1校創るのですか?」と聞かれますが、私たちは、ISAKが複数できることが重要だとは思っていません。社会にとって大切なのは、生徒の個性と同じくらい、学校の選択肢に多様なオプションがあることだと思います。既存、新設を問わず、新しい取り組みをする学校関係者の皆さんを、間接的かも知れませんが少しでも応援させていただけたらうれしいです。

………

※ISAK:2017年度に入学する4期生の出願についてはこちらから。

》関連記事:小林りんさん「2週間で子供は変わる」ISAKサマースクール

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