インドのレイプ犯100人にインタビューした女性研究者「彼らはモンスターだと思っていた。でも...」

彼女は22歳の時、刑務所に通い始めた。
2015年に発生したコルカタでのレイプ事件で犠牲者を追悼するために開かれた式典
2015年に発生したコルカタでのレイプ事件で犠牲者を追悼するために開かれた式典
Rupak De Chowdhuri / Reuters

残虐なレイプ事件が多発しているインドで、とある女性研究者がその理由を解き明かそうとして始めた研究が注目を集めている。

彼女は首都ニューデリー生まれのマドゥミタ・パンデイ氏。イギリスの大学院で犯罪学を専攻し、22歳だった2013年からインドの刑務所に通い、これまで100人以上のレイプ犯とのインタビューを重ねた。パンデイ氏が研究者の情報サイト、カンバセーションに自身の研究について投稿し、関心が広がった。

レイプ犯はどんな人々だったのか。ワシントン・ポストに掲載されたインタビューで、パンデイ氏は「彼らは"モンスター"だと考えられているが、そうではない」と語っている。

研究を始めたきっかけは、2012年末、世界に衝撃を与えた事件だった。この事件ではニューデリーのバスに男女が乗車していたところ、女性が運転手や乗客の男6人から集団で強姦され鉄棒を性器に挿入されるなどして死亡、男性が重傷を負った。

あまりにむごい犯行に、インド全土では抗議デモが行われた。2017年にこの事件の被告4人は殺人や強姦の罪に問われ死刑が確定している。1人は未成年、1人は刑務所内で死亡した。

2012年末に発生したバスでの強姦・殺人事件で被害者を追悼する人々
2012年末に発生したバスでの強姦・殺人事件で被害者を追悼する人々
Anindito Mukherjee / Reuters

「人々は皆、同じ疑問を持ちました。なぜ彼らはそんなことができるのか。我々は彼らをモンスターとみなしました。とても人間のできることではないと考えたからです」

しかし、パンデイ氏は「彼らは決して特殊な人というわけではなかった。ただ生い立ちや思考の方法が、彼らをそうさせただけ」と指摘する。インタビューした100人超の犯人のうち、高校を卒業したのは数えられるほどで、ほとんどが十分な教育を受けずにドロップアウトした人々だった。

また、インドでは女性の地位が低すぎる問題も指摘している。多くの女性が夫のファーストネームを呼ぶことさえ許されないという。さらに、性教育が学校で行われず、家庭でも教えないということも大きな問題だという。

インタビューをした犯人のほとんどが、言い訳をするか、自身の行動を正当化し、レイプがあったこと自体を否定した。カンバセーションでは、物乞いの5歳の女の子をレイプした罪で服役中の49歳の男は「彼女は処女ではないので誰とも結婚できない。出所したら彼女と結婚するつもりだ」と語ったという衝撃的な体験も書かれている。

インドでは、年間3万4651件(2015年)のレイプ事件が報告されているが、大きく報じられるのはほんのわずか。さらに、事件の90%近くは報告されていないとパンデイ氏は指摘する。

結びにパンデイ氏はこう綴っている。「インドでは、犯人への罰のあり方、あるいは厳罰化や犯人の更生が盛んに議論されている。しかしインドが本当に必要としているのは、社会の集合意識を修復し、女性の人権や男女同権への認識を広め、守ることだ」。

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