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差別の歴史を芸術喚起。物議を醸すノルウェーの「人間動物園」

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キャプション:「コンゴの村」と書かれた門 Photo: Asaki Abumi

5月15日、ノルウェーの首都オスロにあるフログネル公園で「コンゴの村」と称される「人間動物園」が幕を開けた。16日に現場を訪れたところ、子連れのノルウェー人たちが興味深そうに藁や木材で立てられた住居の中を覗き込んでいた。自ら住居の中に座り、撮影をしている者の姿も。会場の門には、企画展の経緯が記されている。100年前の母国での差別への異なる価値観を知り、驚き、思わず声をあげる者の姿も見受けられた。

100年前の1914年、憲法制定100周年を記念して、同公園では国の発展の歴史や文化を紹介する様々なイベントが行なわれた。その一環として、「ネガーの国」、「コンゴの村」と名づけられた区画に、大人、子ども、男性、女性を含む約80人のコンゴ出身のアフリカ系異人種がコンゴの民族衣装を着用した状態で住まわされたという。主催者側によると、当時の国民総人口200万人の内約140万人もの人々が人間動物園を訪れたとされる。異人種を「見世物」にした人間動物園は、憲法制定記念行事の中でも最も人気があったアトラクションだったそうだ。紛争国から多くの避難民を受け入れている現在の平等先進国のノルウェーからは想像がつかない光景といえよう。

入り口の門の柱には、主催者が企画遂行に取り組んだ理由が英語で書かれている。要約するとこうだ。「当時の見物客の多さと、イベントの人気の高さにも関わらず、この差別の歴史な理由はなぜか国家の歴史から忘れ去られていた。私達は世論を喚起するためにこのプロジェクトを実行する」。

門柱の反対側には、ノルウェーが誇る亡き小説家クヌート・ハムスンの詩がノルウェー語で紹介されている。「100年後には全てが忘れ去られてしまっているのだろう」と。

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100年前のアトラクションが可能な限り忠実に再現されている。中に入って自らを撮影する見物客もいる Photo:Asaki Abumi

すでに日本を含む欧米のメディアでは開催前からこの企画は報道されており、差別的な歴史を掘り起こす手段として、人間をあえて再び見世物とすることに芸術的な価値があるのかという疑問が呈されている。この記事を読んでいるあなたも、人間動物園の再建に疑問を感じるだろうか? それこそが、まさに主催者の狙いである。

今回の人間動物園で見世物の役を引き受ける有志は、ボランティアというかたちで世界中から公募されている。主催者である芸術家デゥオのLars Cuzner とMohammed Ali Fadlabiは、4月の時点で現地メディアのAftenposten紙にはすでに80人以上の人々から応募が届いていると伝えていた。しかし、5月15日のオープン初日、報道関係者や招待客は、その有志の姿が見られないことに、戸惑った。16日になっても、住人のいない空っぽの人間動物園にいるのは、見物に訪れたノルウェー人ばかりだった。展示期間は8月末まで予定されているが、それまでに本当にここに暮らすボランティアが現れるのかは誰にもわからない。これも恐らく企画者の狙いのひとつなのだろう。

住民のいない人間動物園だが、ここを実際足を運んでみると、奇妙な違和感を感じた。見物客や報道関係者が、反対に「見世物」として、コンゴの村の一部となっているかのような印象を受けたからだ。

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人間動物園には住民の姿がなく、あるのは見物客のみ Photo:Asaki Abumi

最後に、この人間動物園が行なわれている場所について説明しておきたい。フログネル公園は、別名「ヴィーゲラン(彫刻)公園」とも呼ばれている巨大な公園である。緑の芝生が一帯に広がり、公園の一部には、亡き彫刻家グスタフ・ヴィーゲランによる何百対もの不思議な彫刻が屋外展示されている。「コンゴの村」がある場所も、ヴィーゲラン作の巨大な噴水付近。つまり、ここは日本をはじめとする世界中からの旅行者が訪れる、「人気観光スポット」でもあるのだ。この公園は、日本の観光ガイドブックなどでも必ず紹介されている。

また、芝生が多く、リラックスした場所でもあることから、日中には子連れの親も多く訪れ、夏には日光浴やバーベキューを楽しむ住民も多い。よって、出入り自由・入場無料の「コンゴの村」には、親に連れられた赤ちゃんや子ども達の姿も目立つ。オスロでは6月頃が最も夏らしい時期であり、フログネル公園を訪れる観光客や地元民の数はこれから激増する。さらに今年はノルウェーの憲法制定から200周年を迎える節目の年でもある。100年前の人間動物園の存在意義について、議論が活発化するのはこれからかもしれない。

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