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統合失調症の症状を改善するために―社会で対策を考える

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統合失調症は早期発見・早期治療により、その後の経過を改善できることが分かってきました。近年、精神科受診の敷居は下がってきていますが、早期治療にはつながっていないのが現状です。これを踏まえて、今後どのような対策を講じていくべきなのでしょうか。

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精神疾患の患者数は、ここ10年で約1.5倍に増加しています。精神疾患の患者数は、「4大疾病」(癌、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)よりも多い323万人(平成20年)です。平成23年、厚生労働省は「4大疾病」に精神疾患を加えて、新たに「5大疾病」とすることとしました。精神疾患は、国を挙げて対策に取り組んでいく必要がある非常に重要な課題です。しかしながら、いまだに対策は十分とは言えません。

精神疾患対策の一つに、統合失調症の早期介入(早期発見、早期治療)があります。統合失調症の主な症状は、幻聴(誰もいないのに人の声が聞こえてくる)や妄想(誰かに見られている、狙われているなどという事実と異なる考え)です。

統合失調症は、全人口の約1%に発症するとされていますが、これは喘息と同じくらいの割合で、決して少ないものではありません。また、20代〜30代という若い世代に多く発症することも特徴です。

統合失調症の症状が出現してから治療が開始されるまでの期間を、精神病未治療期間(Duration of Untreated Psychosis:DUP)と言います。近年の研究では、このDUPを短くすることで、その後の経過を良くすることができることが分かってきました。

ノルウェーの研究では、社会に対して継続的な啓蒙活動を行うことでDUPを短くすることができたという報告もあります。

日本のDUPは、およそ1〜2年と言われています。精神科受診の敷居が下がってきたことや、精神科クリニック数が増加していることから、DUPの短縮が期待されていますが、我々の調査では、ここ10年間でDUPは変わっていない現状が明らかとなりました。

DUPが変わっていないのはなぜなのでしょうか? 理由の一つとして、統合失調症の症状である「病識の欠如」が挙げられます。病識とは、「自分は病気である」という認識のことです。発症当初は違和感を感じていても、症状が強まる間に、徐々に病識が失われていってしまうと言われています。そのため、本人が病院を受診することは難しく、周囲の人が病気に気づいて受診を促していく必要があります。

それでは、今後、我が国ではどのような対策を講じていけば良いのでしょうか?

まず1つ目として、学校教育で精神疾患に関する教育の機会を取り入れることが大切です。若いうちから精神疾患について理解することで、精神障害者に対する偏見の軽減にもつながると考えられます。

2つ目としては、学校の教諭、養護教諭、職場の産業医、患者さんのご家族などと医療機関が連携し、発症した可能性のある患者さんをなるべく早く精神科医の診察につなげ、必要があれば適切な治療を行えるようにすることです。

以上のように、統合失調症は早期介入によって患者さんが症状に苦しむ期間を短くし、その後の経過を良くすることが可能であることが分かってきています。この問題を解決するには、病院の医療者のみでは不可能です。統合失調症の患者さんの症状を少しでも改善し、住みやすい社会にしていくため、ぜひとも、皆様と一緒にこの問題について考えていきたいと思います。

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【医師プロフィール】

鈴木 航太 精神科

2010年北里大学医学部卒業。学生時代より、国際保健や災害医療などに興味を持ち、国際医学生連盟-日本(IFMSA-Japan)に所属。2012年川崎市立川崎病院にて初期臨床研修を修了後、慶應義塾大学病院 精神神経科学教室に入局。臨床の傍ら、3ヶ月かけて世界一周旅行をしつつ各国の精神医療の実情を見て回った。2014年より、医療法人財団厚生協会 大泉病院にて勤務。2015年6月より、日本若手精神科医の会(JYPO)理事。

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