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サイボウズ式:宇宙が職場のワーキングマザー、山崎直子さんはどう宇宙飛行士となり子育てしてきたか?

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現在2歳と小学校高学年の2児の母でもある山崎直子さん。「ミッション[宇宙×芸術]―コスモロジーを超えて」を開催中の東京都現代美術館で行われた講演会では、夏休みの自由研究向けに森永製菓とJAXAのコラボ「おかしな自由研究」も紹介された。

宇宙飛行士になりたい方、仕事も子育ても頑張りたい方にとって、日本で初めて母として 宇宙にいった山崎直子さんは憧れの存在ではないでしょうか?

多様なワークスタイルを扱う「サイボウズ式」では、夫婦両方で育児休暇をとり、父子家庭、母子家庭という形態をとりながら周囲と連携して子どもを育て宇宙飛行士のミッションをはたした山崎さんに注目。これからの働き方のヒントとして講演「こどもとわたし 宇宙(そら)を見上げて想像しようまだ見ぬ未来と可能性」の内容を紹介します。

宇宙飛行士に求められるのは、自分なりに考え工夫する力

山崎:中学3年の1月の深夜、高校受験を控えこたつでテレビをつけながら勉強していたときでした。スペースシャトルが打ち上がったのですが、爆発してしまったのです。

びっくりすると同時に「現実に宇宙にいく人がいる、大変なこともあるけれど頑張っている人たちがたくさんいる」とわかり、「宇宙飛行士になりたい」と思うようになりました。

それまでの将来の夢と、「学校の先生」「お花屋さん」「ディズニーランドで働きたい」といったことでした。

宇宙船などの設計を勉強して、JAXAの宇宙センターでエンジニアとしてしばらく働きました。初めて宇宙飛行士の試験を受けたときは、書類審査の段階で不合格でした。数年後2度目の挑戦で宇宙飛行士となりました。

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JAXAの宇宙飛行士になる条件。JAXAホームページの内容を平易な言葉で記している。「今のところは理系という条件がありますが、文系や芸術家やコックさんとどんどん広がっていき、ゆくゆくは宇宙飛行士という言葉自体もなくなっていくと思います。JAXAの職員は、理系文系さまざまな分野の方がそろっています」と山崎さん。

山崎:宇宙飛行士の最終試験のうちの一つは、真っ白なジグソーパズルを3時間で完成させなさいというもの。枠はなんとかできるのですが、内側は難しく時間がかかりました。実は3時間で完成できる人は誰もいなかったのです。

この最終試験を通じて学んだのは、初めてやることに対して、自分で考える力をもつことでした。

初めてのことを「やれ」といわれたときに、みんな「えっ、大変だ。嫌だな」と思うこともありますよね。でも諦めるのではなく、今持っている知識をフルに動員して、自分なりに考えて工夫する。そういったプロセスが大切ですと言われました。この場合は、「完成できた/できなかった」ということよりも大切なことがあったのです。

育休中にスペースシャトルが爆発、全てが不透明に

山崎:1999年に訓練を始め、宇宙にいくまでに11年間を費やしました。その間、下積みとして科学実験、医学実習、飛行機の操縦など、緊張感を伴う訓練を重ね、場数を踏んでいったのです。

好きな宇宙のことを学べるのは楽しく苦ではありませんでしたが、こういった訓練をしていて宇宙にいけるかは全くわかりません。3年4年と年月が経って「いつまでこの生活が続くのか?」と考え、不安になっていきました。

訓練を開始して4年目が一番悩みました。スペースシャトルのコロンビア号が事故をおこしたんです。一緒に訓練していた7人が散ってしまいましたし、スペースシャトルが再び飛べるのかもわからないという事態になりました。全てが不透明でした。

この事故の約半年前、私は長女を出産したんです。産休が明けるとすぐに復帰し、その後主人と交互に育休をとり、3ヶ月ですが再び育休をとっていました。4月に保育園が決まり「また訓練が開始できる」とワクワクしていたさなかの事故でした。

子育ての時期というのは、なかなか自分のペースではいかないものです。一線から離れるという不安や気持ちの葛藤がある時期に、追い討ちをかける事態となったことで、悩みました。

しかし、結局悩んでも自分で考えて道を進んでいくしかないので、周囲の方に助けて頂きながら、できるだけ訓練を続けることにしました。

訓練期間中の海外での子育て

山崎:アメリカの宇宙船が飛ばないのであればと、宇宙船をもっているロシアに7ヶ月間急遽1人で渡り、訓練を受けました。このときは、娘は同伴できなかったので日本に残し、父子家庭として面倒をみてもらいました。大変な生活の中がんばってくれた家族に感謝しきれません。

その後、アメリカで7年越しの訓練をしましたが、今度は母子家庭の期間もありました。保育園にバタバタとお迎えにいったり、急に娘が熱を出したりといったこともありました。

家族や同僚や保育園の先生や、いろんな人にお世話になってやってこられました。自分一人ではできないので、皆さんの力が本当にありがたかったです。

決していい母親や伴侶ではなかったと思います。ずーっとは一緒にいれなかったし、ときには寂しい思いもさせたこともあるだろうし。

でも、子どもは子どもなりにすごく考えてくれていました。例えば宇宙に飛び立つ直前に娘が39度の熱を出してしまったことありました。濡れたタオルをもって「大丈夫?」と看病したんですが、娘が怒って「ママあっちにいってよ」というのです。

変なこといったかなと思っていると「ママに風邪がうつったらママ宇宙にいけなくなっちゃうよ」と。当時小学校2年生で、熱を出している子どもが「あっ、そんなことまで考えていてくれたんだな」とすごくジーンときました。

中には、「今日は仕事いかないで家にいてよ。遊んでよ」といわれたこともあり、悩みました。「大変だ!」とドタバタしている毎日でしたが、不思議なことに「宇宙にいかないで」とはいわれなかったんですよね。

ママ宇宙がんばってね。宇宙から写真とってきてね」とずっといってくれていたんです。感じることはありながらも、背中をみて育ってくれたんだなと感じます。また、当時、私が訓練でいないときは、主人が私の写真を娘に見せてくれていたり、訓練の様子を一緒に見学してくれたりしたことも大きかったと思います。

一つだけ心がけ、日課にしていることがあります。必ず夜寝る前に「生まれてきてくれてありがとう」と言うことです。一緒にいれるときは直接言いますし、離れているときは空にむかって言います。「生まれてきてくれて、そうしてここにいてくれることがすごいことなんだよ。ありがとうなんだよ」と。子どもたちが何かを感じ、いずれは自分の足で自立していってくれたらいいなと思います。

宇宙も人生もわからないことだらけ。だからこそ面白い!

山崎:2010年、スペースシャトル ディスカバリー号に乗れることになりました。いざ打ち上がってしまうと地上から400キロの宇宙まで到達するまでは、たったの8分30秒です。時速2万8000キロ、新幹線の100倍のスピードで宇宙にいきます。拍子抜けするぐらいあっと言う間でした。

野口聡一さんと私と日本人が同時に宇宙にいるのは初めて。女性4人が同時にいるのも初めてで、すごく嬉しかったのを覚えています。

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宇宙から地球をみると自分より下ではなく上に見えることも。絶対的な上下があるのではなく相対的な世界であるということ、地球そのものが動いている、生きていると感じられたという。©NASA

山崎:宇宙では少しの水を大切にしながらすごしています。トイレで回収されるおしっこも蒸留・殺菌して飲み水にリサイクルしています。空気もリサイクルしているんです。

この地球そのものも宇宙からみたらぽっかり浮かぶ宇宙船です。地球の環境のことを考えるのは、これからますます大切になるのではないかと思います。

私の好きな言葉は「ワンダフル」。英語で「素晴らしい」という意味ですが、語源のワンダーは「未知」です。それがフルで「たくさんある」。これが「素晴らしい」ということです。大変なときには思い出し、元気をもらっている言葉です。

宇宙も身の回りの自然もまだまだわからないことだらけですが、だからこそ面白いと思うのです。私たちの人生も一緒かなと思います。将来のことはわからないですし、1年後の予測も難しいです。今でも不安になりますが、道はあらかじめ1つに決まりきったわけではないんですよね。

私たちが、どう動いていくか、どう人と出会って、どうかかわっていくか。ご縁によっていろんな可能性もでてきます。どれか1つが正解ではなく、いろんな道ができて、そういうところに面白さや素晴らしさがある のではないかと思うのです。

(2014年8月26日のサイボウズ式 「宇宙が職場のワーキングマザー、山崎直子さんはどう宇宙飛行士となり子育てしてきたか?」 より転載)

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