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サイボウズ式:副業禁止で「会社栄えて国滅びる」。歴史ある企業こそ、人材を社会に解放すべき──ロート製薬 山田邦雄×サイボウズ 青野慶久

2017年02月02日 15時32分 JST | 更新 2017年02月02日 15時32分 JST

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安倍内閣が、一億総活躍社会の実現に向けて進めている「働き方改革」。柔軟な働き方を実現する方法の1つとして「副業解禁」がいま、大きな注目を集めています。

今回、サイボウズ社長 青野慶久との副業対談に応えてくれたのは、世の中の大企業に先がけて社員の副業を解禁して大きな話題を呼んだロート製薬会長兼CEOの山田邦雄さん。

ロート製薬では社外での副業が可能になる「社外チャレンジワーク制度」と、社内で複数の部門・部署を担当できる「社内ダブルジョブ制度」を2016年よりスタートしています。従業員数が1500人を超える同社が、なぜ副業を解禁したのか? 副業が解禁されると、会社や世の中はどう変わるのか──。

「会社が社員をガチッと囲い込むこと」への違和感がずっとあった

青野:早速ですが、ロート製薬さんが副業解禁、社外チャレンジワークを開始された背景をお聞かせください。

山田:僕自身、会社が社員をガチっと囲い込むことへの違和感がずっとあって。「専業でないといかん、副業はダメだ」というのは、「何かおかしいな」という気持ちがあったんですね。

青野:ええ。

山田:1つのきっかけになったのが、東北の震災でした。ロート製薬でも復興支援室を立ち上げて、現地に入り込んでいたのですが、そこで働きながら東北の復興支援をしている人たちに出会って、これは素晴らしいなと。

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山田邦雄(やまだ くにお)さん。ロート製薬株式会社代表取締役会長兼CEO。1956年、大阪府生まれ。東京大学理学部卒業。慶應ビジネススクールMBA取得。1980年にロート製薬に入社し、営業職、マーケティング職を経験。1991年に取締役に就任後、1992年に専務取締役、1996年に代表取締役副社長、1999年に代表取締役社長を歴任。2009年6月より現職に就任。役員室を撤廃する、肩書きではなく「邦雄さん」と呼んでもらう文化を作るなど、ロート製薬の社内風土改革を積極的に行い、2016年より社員の副業解禁を実現。

青野:なるほど。

山田:そんな中で、みんながどういう制度を望んでいるのか、人事制度改革について社員でディスカッションするプロジェクトが立ち上がり、もっと仕事の幅を広げたいという話が出てきました。

だったら、制限を取り払ってしまおうと。CI(コーポレートアイデンティティー)やロゴを新しくするタイミングで「社外チャレンジワーク制度」と「社内ダブルジョブ制度」をスタートさせたんです。

青野:まずは「NEVER SAY NEVER」という新しいCIを作ったんですよね。

山田:そう。本当はそっちがメインだったんだけれど、意外にも新CIとともに出した「副業解禁」の方に注目が集まってしまって(笑)

青野:ものすごい反響でしたね。

山田:多様な働き方というのは、絶対これからの世の中に必要だと思うんです。サイボウズさんやリクルートさんみたいなIT系なら「副業OKは当たり前」という企業も結構ありますが、僕らみたいないわゆる「オールドエコノミー」の会社でもできるんです、と。注目を浴びたのは結果的に良かったと思っています。

副業で「新事業の芽」を見つけてほしい。社外にでても良いけど、タダでは出さない(笑)

青野:実際に社内ではどれぐらい反響があったんですか?

山田:「副業やっていいよ」と突然言われても、明日からいきなり「よっしゃ、やろう」とはならないと思っていたんですが、60人くらいは手を上げてくれました。みんな、元々考えていたんでしょうね(笑)。

青野:すごい! 初めから60人は多いですね。副業解禁に社内で反対の声はなかったんですか? 情報漏えいとか人材流出のリスクとか。

山田:ほとんどなかったですね。情報漏えいもよく言われますが、副業に限らず、それは転職でも起こりうるわけで。

さすがに会社を辞めたい人を辞めさせへんぞ、というわけにはいきませんからね。

青野:社外の活動を認めると、社外の活動がおもしろくなってしまい、人材の流出が起きてしまうという懸念はありませんでしたか?

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青野 慶久(あおの よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進める。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。

山田:今のところはまったくないですね。一応会社の戦略的な方針として、新規の部分をどんどん開拓していこうという方向だったので。

会社の中だけに閉じこもっていても、アイデアはわいてきません。それこそ社外に出て、いろんな人と出会って、いっしょに仕事をする中から新しい事業の芽みたいなものを見つけてほしいと思っています。

青野:副業を通じて、新規事業の芽を見つけてほしいと。

山田:そういう意味では、結構欲張りですよ。社外に出ても良いけど、タダでは出さないぞと(笑)。

青野:やっぱり企業として副業を解禁する以上は、合理的な判断も大事ですよね。

山田:今まで通り、同じ仲間と同じ環境で考えるだけとは全然違う、発想や出会いが出てくるんです。副業で収入を得ているだけでなく、本業にも何かしらの形で生きてくるとなれば、堂々と出ていけるじゃないですか。

青野:コソコソやってるんじゃないぞ、こんな情報持ってきたんだぞと、堂々と言える。

山田:こういうメリットもふまえると、うちにとって副業解禁は必要だったといえるかもしれませんね。

副業解禁は、仕事の納得感を高める。会社というハコの中で「やらされ仕事」をしないために

山田:本当は全員、(本業以外の)2枚目の名刺を持ってるくらいになったらいいなと思いますけどね。

青野:もっと増やしたいと。

山田:もっと増やした方がいいんじゃないですかね。

青野:すごいな〜! 60人じゃ足りないですか?

山田:60人じゃ足りないというか、まあ、理想的には全員やったらいいと思いますけどね。

青野:すごい。オープンですねえ。

わたしは、会社の管理職がこれからの時代に身につけなければならないのは、限られた時間の人のマネジメントだと思っているんです。それは副業かもしれないし、介護や育児かもしれない。

働く場所や特に時間に制限がある人をどうマネジメントするか。こうした制約がある人をマネジメントできない会社は、介護や育児をしている優秀な人材は採用できません、となってしまう

副業を解禁することによって、時間が限られた人材をマネジメントする力がきたえられるんです。これこそが、次世代に必要とされるスキルですよね。

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山田:その通り。会社のマネジメントシステムは、よりフレキシブルで、オープンな形になっていくと思う。というより、そうならざるを得ないんじゃないかなと。いわゆる昭和型のシステムでもある程度はどうにかなるけど、オープン型のシステムに移行した方が、いろんなポテンシャルが引き出せると思う

青野:副業解禁によってマネジメントスキルが上がり、オープンイノベーションが起こると。

山田:そう。あとは一人ひとりの仕事の納得感。結局、会社という箱の中に入れられて仕事をしていると、やっぱりなんだかんだでやらされ仕事になるわけで。

青野:そうですね。

山田:やっぱりね、主体的にやった方が仕事は絶対におもしろい。選んでやってるからこそ勉強もしますし、苦しいことがあっても頑張ってやるわけで。ただ、自分の希望と会社が求める仕事のバランスが合わないこともあるから、本業一本だと苦しくなる。

一方、本業と副業でパラレルであれば、当然幅も広がるし、主体的に取り組めるようになって、結果的に人材育成のスピードアップになる。本業一本の単線型のキャリアではできないようなことも、副業も交えた複線型のキャリアであれば、いろんなことが経験できるし、実力がつくのも早い。

青野:確かに、キャリアが単線だと、自ら選んでいる感覚がないから、今日も明日も惰性でずーっと同じ道走りますということになりかねない。

副業によってキャリアが複線を走るようになると、自ら選んで今の会社で働いている感というか、主体性が出てくる。やっぱりその方が、モチベーションが保てるんじゃないかと思うんですよね。

副業禁止は「社会の足かせ」。大企業こそ、副業解禁を

山田:この間、上場企業の社長100人アンケートで、8割方は副業反対っていう日経新聞の記事がありましたね。「えーっ!?」って思って、結構衝撃的でした。これから日本は人口がどんどん減っていくじゃないですか。今のままでは絶対に社会が回らない。

青野:人が減っているわけですからね。今までほど役割分担できないわけですから、そりゃそうですよね。1人で、2つ3つの仕事を持つのが、むしろ当たり前じゃないかと。

山田:そう考えると副業禁止は本当に「社会の足かせ」なんですよ。いわゆる就職人気ランキングの上位にあるような大企業は、日本中から優秀な若者が集まってくる。そのままその優秀な能力を囲い込んでしまう。

このままじゃ「会社栄えて国滅びる」ですよ。企業が社員の能力を囲い込むのではなく、副業禁止は禁止するとか、それくらいしないと。本当にもったいない。

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青野:人材を囲い込んでしまっている古き良き日本の大企業が、副業解禁で人材を社会にオープンにしなきゃいけないと。

山田:逆に言えば、そうなったら日本の社会ががらっと変わるんじゃないかな。

青野:そうですね。いろんなスキルを持った優秀な人が、「じゃあわたしは、この地域の問題に取り掛かります」とかね。

山田:大きな企業はある意味、スキルを持った人材を豊富に抱えているわけだから。もっと社会に開放しましょうよ、と。それが巡り巡って、本業の利益にもつながる

青野:大企業にとっても良いことですよね。投資先が見つかるかもしれませんし。

社内で仕事を掛け持つダブルジョブは、「新しいことに挑戦したい」という人間の自然な感情に合う

青野:副業は新入社員でもできるんですか?

山田:社外チャレンジワークも社内ダブルジョブも、入社3年目以上からですね。

青野:ダブルジョブの前に、まず1つの仕事、ワンジョブができないとだめだと。

山田:キャリア採用はまた別ですが、さすがに新卒入社の新人は、まず2年間くらいは集中して一定のスキルと専門性を身につけてもらってからですね。それからは自由に、いろんな選択肢から仕事を選んでもらえたらと思ってます。

入社3年目以上は、みんなが何かダブルでやってます、みたいな状態になったらおもしろいんじゃないかな。

青野:社内ダブルジョブの方は、今何人くらいやられてるんですか?

山田:6月に制度を開始して30人くらい。希望はもっとあったんだけど、受け入れ側の状況との兼ね合いもあって、結局30人くらいが正式に内示を受けてダブルジョブになりました。

青野:予想外の部署の組み合わせでダブルワークされてる方はいらっしゃいますか?

山田:例えば営業の仕事をしながら、人事部で人材育成の仕事をするとかね。営業と人事は違うといえば違うけど、密接につながっているので。

いいですね。まったく違いすぎる仕事だと、シナジーが出ないのかもしれませんね。

山田:青野さん、サイボウズでも社内ダブルジョブ制度どうですか。

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青野:やりたいですねー。サイボウズでもダブルジョブやりたい。今までとは全然違う、新しいことにチャレンジしたいというのは人間にとって自然な感情ですよね。確かに全然違うんだけど、新しいことにチャレンジすることで、とても自分らしくいられる。

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山田:ロート製薬の社員でありながら、サイボウズの社員でもあるけど、病院の管理薬剤師もやってますとかね。それぐらいあって良いんじゃないかなと。

例えば、週に1日しか働けないとしても、その2日で3、4日分の成果をあげるにはどうすれば良いかを考えてアウトプットすれば良いわけで。 特にクリエイティブな仕事の場合、平日の丸5日、朝から晩までずっとアウトプットし続けるなんて無理なわけで。必要なタイミングでアウトプットしてくれれば良い。

青野:むしろ一瞬のひらめきのために、いかに全然違う環境に身を置くかが大事。例えばミュージシャンを同じ部屋にずっと閉じ込めて「良い曲を書け」って言われても無理なわけで。いろんなものに触れて、感じて、その中からひらめきが出てきますからね。

そういう仕事をしてもらうためにも。あえて外に出して、違うことをさせると。

山田:本当に。今のまま人材を無駄にしてたら、企業も日本も沈没しますよ。

青野:囲いこんでる場合じゃないです。

山田:「副業禁止を禁止」するのは非常に良いんじゃないでしょうか。

青野:結構、国の人も副業解禁に対してはポジティブなんですよ。それこそ、官僚が本格的に動き始めたら、一気に進むかもしれない。

山田:そうですね。それを考えると大企業が抱えている人勢は何十万という数だから。まず民間企業が、もっともっと社会に優秀な人材を解き放つべきです。

「ロートで副業したい人」だってウェルカム。副業だからこそ、優秀な人材を採用できる。

青野:ほかの会社に勤める人が、ロート製薬さんで副業をしたいと言ったらどうですか?

山田:それはウェルカムですね。

青野:おおー。

山田:だってやりたいことがいっぱいあるのに、やる人がいなくて困ってるわけで(笑)。

青野:実はサイボウズでも「本業は別の会社にある状態で、サイボウズで副業するのはどう?」っていう取り組みができないかと考えているんです(*)。

わたしたちは人材不足なので、週に一日でも良いから来て、と。

(*)2017年1月17日、サイボウズで「複業採用」を開始。

山田:それぐらい柔軟に受け入れていかないと。それこそ人口減だし。フルタイムは無理だけど、週一ならいいですよとかね。そういうのありなんじゃないですか?

青野:ある意味、経営者的な目線でいうと、週1日分だけ給料払えばいいわけですから。

フルタイムで年収1000万オーバーの人材を週1なら200万で採用できる。企業からしたら、相当リスクは低いですよね。

山田:フルタイムの人ももちろん必要だけど、限りあるリソースを最大限有効利用するためには、必然的にそういう形になるよね。

キャリアだけじゃない。職場も「複線化」しよう

青野:副業にチャレンジしていて、シナジーが産まれそうな兆しはありますか?

山田:ロートでは食の事業をやってるので、地元の特産品に関わる副業は、今後シナジーが出てくるんじゃないかなと思いますね。本業の医療や健康の分野は、これからに期待かな。

青野:サイボウズの副業でも確かに地元・ローカルっていうキーワードがあるんです。生まれ育った思い出の深い街で副業したいといったものです。以前、副業がきっかけで、社員の地元の金融機関と人脈が広がっていったことがありました。

今までわたしたちみたいなソフトウェア屋はグローバルを意識していますけど、ローカルを意識したことがあまりなかった。副業がきっかけで一気に「千葉っておもしろいね」とか言い始めて、地方でも新しいビジネスができるんじゃないかなという期待感がありますね。

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山田:それも1つの方向性だと思いますね。もっと言えば田舎というか、地方の生活と都会での生活が、パラレルになっていくでしょうね。「職場の複線化」というか。サテライトオフィスも少しずつ出てきているけれども、それもすごくいいと思う。

青野:おもしろいですねー。

山田:人間は本来、アニマルですから。

青野:人間は動物なんですよね。だから同じことしてると飽きてしまう。どれだけカレーライスが好きでも、毎日は食べられない。どれだけ都会が好きでも、ずっと都会にいるよりは、田舎との暮らしと組み合わせたほうがもっと楽しめると思うし、全体の幸福感につながるんじゃないでしょうか。

山田:それこそもう人口減少の問題で、このまま過疎化が進んで、東京一極集中が止まらないという話はあります。そこで朝から晩まで365日居ないけど、「半分、0.5人分住んでます」ということであれば、ある程度は過疎化をくいとめることができるかもしれない。

青野:おもしろい。人口を0.5人でカウントするという。0と1じゃないよと。

「会社員の副業」なんて、5年もしたら当たり前になっているはず

山田:会社も0.3人分だけコミットする人が50人いるとか、0.7の人が200人いますとか、そういうのがいいんじゃないですかね。

これから僕らみたいな歴史ある企業も、どんどん古い文化を壊していかないと。オールドチームからの変革です。「副業解禁」も、あと5年もしたら結構当たり前になってるんとちゃうかな。

今は8割反対になっていますけど、これから5年もしたら「会社員の副業なんて当たり前じゃないですか」っていう話になってるかもしれない。

青野:過半数を超えたら、日本人は一気に進みますからね。

山田:絶対そうならないと。本当に困っちゃう。

青野:残された時間はあまりないですからね。

山田:お互いがんばりましょう!

青野:ありがとうございました!

文・西村創一朗(HARES)/撮影・すしぱく(PAKUTASO)

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サイボウズ式」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。

本記事は、2017年1月19日のサイボウズ式掲載記事副業禁止で「会社栄えて国滅びる」。歴史ある企業こそ、人材を社会に解放すべき──ロート製薬 山田邦雄×サイボウズ 青野慶久より転載しました。