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アベノミクス:第二次成長戦略:労働改革

2016年04月13日 00時45分 JST | 更新 2017年04月12日 18時12分 JST

労働改革はアベノミクスの成長戦略の中でも最重要な改革である。

2014年6月に閣議決定された第二次成長戦略では、働き方の改革、解雇の金銭補償、派遣労働法の改正、外国人材の活用が重要な改革項目として掲げられており、閣議決定の前から安倍政権では規制改革会議や産業競争力会議などが中心となって取り組みを進めてきたが、もっとも重要な働き方の改革は労働組合や厚生労働省などの抵抗が激しく、改革は入り口以上には進んでいない。

働き方の改革として、安倍政権では、労働時間規制を見直して成果報酬制度を広く導入することを目指した。日本では占領下で定められた労働基準法によって、労働者はすべからく基本的に労働時間に基づいて報酬が支払われることになっている。これは戦後に吹き荒れた「民主化」の「成果」で、職場における身分差別撤廃がねらいだった。

戦前の日本ではホワイトカラー(職員)は年俸ないし月給、ブルーカラー(工員)は日給にもとづく月給であり、現在の欧米諸国の慣行と類似していた。ちなみにアメリカではホワイトカラーエグゼンプションとして経営者予備軍であるホワイトカラーは労働法の適用除外であり、労働時間でなく成果に基づく年俸が基本である。

世界でも珍しいホワイト、ブルー共通の労働規制によって身分差別から解放された作業労働者達の勤労意欲は高まり、戦後しばらくは生産面で大きな効果があった。

しかし、現代ではブルーカラーの比率は2割ほどで、大部分は広い意味のサービスに従事する。サービス労働の価値はベルトコンベヤーの時間ではなく、顧客や注文主の評価なので本質的に成果報酬がふさわしい。実際、製造業の比重の高かった時代は日本の労働生産性は世界でも高い方だったが、サービス経済化の進んだ近年は欧米主要国の中では最低に落ちこんでいる。

安倍首相は、2014年5月に成果報酬を基本とするホワイトカラーエグゼンプションの導入を指示したが、その後の制度設計の過程で、労働組合や厚生労働省などの強力な抵抗があり、結局、2015年2月に、年収1075万円以上のディーラーやコンサルタントなど特殊な専門職に限定して適用が認められるにとどまり、最大の改革はまだ入り口にさしかかったに過ぎない。

解雇の金銭補償は、法的には解雇が極めて困難な日本では、経済環境変化への企業の適応が遅れ競争力が阻害される弊害が高まっており、安倍政権では法的に困難な解雇でも金銭補償で解決する方式を提案したが、解雇には絶対反対したい労働組合、補償金を払いたくない中小企業主などの抵抗が強く、審議はまだ本格化していない。

派遣労働法は、民主党政権時代に、派遣労働は一部の特殊職種以外は原則禁止とされたが、自民党などが、派遣労働法の改正を提議し続けてきた。その趣旨は、派遣労働を利用する企業ばかりでなく、短時間就労などを望む勤労者や派遣をつうじて経験を積みたい勤労者にとっても使いやすい法制度を実現しようということである。

法案の審議は民主党などの強い抵抗で2度廃案に追い込まれたが、2015年9月、ようやく衆議院で可決・成立した。企業は人を替えれば同じ仕事を派遣労働者に任せつづけられるようになる。これは一定の成果といえる。

外国人材の活用は、短期的には東日本大震災の被災地復興やオリンピック向けの建設需要、高齢化にともなう介護労働需要などの高まりに応じた建設労働者や福祉労働者の供給を増やす必要、長期的には人口減少社会や国際化の進行に応じた外国人材の量・質両面での需要拡大に対応する政策である。

従来、外国人材の活用は、日本人にできない料理人など特殊職種以外は「研修実習制度」による活用に限られていた。それは一定の研修を経た人材はこれまで3年間は実習できるという制度だったが、2014年に実習は5年まで、帰国後再就労を含めると最長8年まで拡張された。さらに国際化の進展にともなう高技能人材を活用するため入国資格の範囲拡大が現在検討されている。

しかし世界各国が競って迎え入れようとしているいわゆる「高度人材」についての環境整備は着手もされておらず、そもそも日本は主要国では珍しく移民法も制定していないので、有能な外国人材にとっては日本の条件があまりにも不透明で人材獲得競争には乗り出すこともできないのが現状だ。