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「ネットでシッター」での男児死亡 母親を責める前に問うべきショートステイ、トワイライトステイの欠如

2014年03月20日 15時58分 JST | 更新 2014年05月19日 18時12分 JST

インターネットを通じてベビーシッターの仕事を引き受けていた埼玉県富士見市に住む26歳の男、物袋勇治容疑者が逮捕された。

ベビーシッターに預けられていた2歳の男児についての死体遺棄容疑だ。この男児は見つかった時には裸同然で窒息死と見られている。2歳児と一緒に預けられていた8か月の弟も裸だった。母親のインタビューによると、以前もネットを通じてこの男に預けたことがあり、虐待のものとみられるあざなどが見つかっていたという。母親はこの物袋容疑者に預けないように避けていたというが、今回ネットでは偽名を使っていて、預けた時の相手も違う男だったという。

本人の確認もできない「シッター掲示板」での相手探し。

よくよく考えれば、子どもの命を預ける相手としてこれほど危険なことはない。

なぜ母親はインターネットで子どもを預ける場所を探さねばならなかったのか?

この事件は今後の捜査で男児がなぜ死亡したか、物袋容疑者がどう関与していたのかいなかったのかなどが明らかになってくるはずだ。

テレビやネットでの報道や評論を見ていて気になることがある。

それは「インターネットでベビーシッター」という「新しい業態」にばかりマスコミの興味や問題意識が集中してしまっている点だ。 

そのビジネスの危険性が強調され、「ネットによるベビーシッター」あるいは「ベビーシッター」というビジネスへの実態調査や規制をかければ良いというような論調が目立つ。

しかし、そもそもの問題として、なぜ、そうしたビジネスが増殖しているのか。

どこにそのニーズがあるのか、保育所がカバーできないのはなぜか、という検証こそが大事だと思う。

一番の問題は保育所が利用しにくいことだ。

以前から問題になっている膨大な数の待機児童もまだまだ解消されていない。

急に子どもを預かる場所が必要になった時に、気軽に、安く、受けていれる場所が少ない。

公的な支援で低所得者ならば安く利用できる保育所は申し込んでも「待ち」の状態。

しかも0歳から2歳未満の子どもの預ける保育所、夜間預けれる保育所はまだまだ少ない。

夜間も預かってくれる、となると、勢い、私的な、料金の高い保育所になってしまう。

それとて、いざ急に必要になった時にすぐに利用できるものではない。

そのことはきちんと報道されるべきで、問題の背景として理解しておく必要がある。

保育所の待機児童に関する国のデータは、2012年10月現在のもので、全国で4万6000人あまりだ。

その他にも、このデータには出ない実質的な待機児童が大勢いることは保育関係者などが指摘している。

3月18日の朝日新聞夕刊には「シッター掲示板 良心頼み  本人確認なし■「安さも売り」」という記事が掲載されている。

ベビーシッターの掲示板を利用する人には、収入が少ない人や飲食店、風俗店で働く人が多く、1時間1千円前後と相場の半額程度で利用でき、安さを求めてサイトに集まる人が多いという実態が報告されていた。

3月19日の朝、NHKでは「おはよう日本」で「待機児童を減らせ!広がる"小規模保育所"」という特集で東京都豊島区の取り組みを紹介していた。

また同じ日の朝のフジテレビの「めざましテレビ」では、横浜にある、数少ない24時間子どもを預かる緊急保育所を紹介していた。

こうした報道がいま求められている。

一方、ネット上では子どもを「ネットでシッター」の業者に預けた母親の責任を問う声が強まっている。

彼女はシングルマザーで仕事も不安定だったことが報道の端々から見てとれるが、子どもを失って悲嘆にくれる母親への責任追及は死者にむち打つようなものだと感じる。

男児死亡事件が私たちに突きつけている問題は、母親の責任でも、ネットでもなく、「あるべき保育の欠如」ではないのか。

そう考えていた3月20日、母親と同じシングルマザーの当事者や支援者の団体「しんぐるまざーずふぉーらむ」が声明を発表した。

それは母親の責任を問うのではなく、背景となった問題にこそ目を向けるべきだと、するものだ。

私もこうした視点に立つことこそ、こうした悲劇が起きてしまった今、私たちに求められる姿勢だと考える。

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シッター紹介サイトの事件を受け

子育てを応援するためショートステイなどの

多様な保育制度の改善を求める声明

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3月17日、埼玉県富士見市のマンションで2歳の男の子の遺体がみつかり、ベビーシッター紹介サイトを通じてこの男の子と8カ月の男の子を母親から預かっていた男が逮捕されました。この横浜市在住の女性はシングルマザーで3月14日から2泊3日の予定で子どもたちを預けていたという報道がありました。「インターネットで見ず知らずの人に簡単に自分の子ども、しかも2歳と8ヶ月という幼い子を預ける母親の神経も首を傾げざるを得ない」(鈴木宗男氏)という意見に代表されるような母親を責める声は根強くあると思われます。

ひとり親は半分以上が貧困で、仕事と子育ての両立に苦しみ、小さな用事をすませるためにも人の手を借りなければなりません。子どもを預かってくれる知人も少ないのが現状です。

行政において、宿泊付きで子どもを預ける場としてはショートステイ(子育て短期支援事業)、トワイライトステイ(夜間養護事業)、また日中はファミリーサポート事業、さらにひとり親向けにはひとり親ホームヘルプサービス(日常生活支援事業)などが国の補助のもと、自治体ごとに行われています。

しかし、こうした事業は周知度、利用率が低く(ショートステイは周知度母子44.9%父子49.8%、利用したことがある母子1.2%、父子0.7%、利用実績実人数1205人、平成24年)(ひとり親家庭の支援の在り方に関する専門委員会資料より)のが現状です。またファミリーサポート事業は提供会員がすぐにみつからない、あるいは利用料が高く利用できないというひとり親もいます。さらに日常生活支援事業は、利用料は安く半分の自治体でやってはいるものの利用件数は全国で4827件と少ないのが実情で、サービス提供体制が不十分です。

今回のベビーシッター幼児死事件では、ベビーシッター業者の指導も必要ですが、同時にこうした多様な保育の事業の充実や改善こそが急務です。

1、 ショートステイ、トワイライトステイの広報・宣伝を行って周知度を上げ、出張や冠婚葬祭以外の理由でも預けられるようにする、手続きを簡便化する(千葉県市川市では2週間前までの登録が必要)、預かったときの子どもたちのケアや環境をよくすること。

2、 ひとり親向けの日常生活支援事業が利用できる制度にするよう、委託先の選定や制度の改善を行うこと。

3、 ファミリーサポート事業は提供者の拡大に努めるとともに、低所得者の利用料の減免措置を行う自治体への補助金を拡充すること。(例:旭川市は低所得者に利用料を5分の1に減免)

2014年3月20日

しんぐるまざあず・ふぉーらむ連絡協議会

保育の世界にもショートステイやトワイライトステイ、ファミリーサポートをもっと広げて利用しやすくすること。

報道も世論もこちらに目を向けていくべきだろう。

こうした時に母親を責めることは、こうした制度の充実をいっかりしてこなかった政治や行政の責任を見逃すことになるだけだ。