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アギーレジャパン、ザックにはできなかった起用法で希望が見えた

2014年09月08日 16時07分 JST | 更新 2014年09月08日 16時23分 JST

アギーレ新監督の4-3-3が一体どのようなスタイルか、誰をどのように並べるかに注目が集まっていた5日のウルグアイ戦(札幌)。キックオフ1時間前に配られた先発リストは意外なものだった。

守備陣はGK川島永嗣(リエージュ)、DFラインの酒井宏樹(ハノーファー)、吉田麻也(サウサンプトン)、長友佑都(インテル)のブラジルワールドカップ組に新戦力の坂井達弥(鳥栖)が加わり、アンカーは細貝萌(ヘルタ・ベルリン)ではなく森重真人(FC東京)が陣取った。細貝は右インサイドハーフに上がり、田中順也(スポルティング・リスボン)と並ぶ形を取った。そして3トップは同じ位置を争うと見られた本田圭佑(ミラン)と岡崎慎司(マインツ)が左右のワイドに位置し、トップにはやはり大抜擢の長身FW皆川佑介(広島)が入ることになった。前任のザッケローニ監督にはできなかった大胆な選手起用を、アギーレ監督はいきなり見せたのだ。

スアレス(バルセロナ)不在とはいえ、カバーニ(PSG)が1トップに位置し、最終ラインをゴディンやヒメネス(ともにアトレティコ・マドリード)が固めるウルグアイは、やはり世界トップクラス。その相手に対し、日本はバランスのいい守備を見せた。ブラジル大会ではプレスがはまらず選手たちが困惑したが、新体制では前から遮二無二追い回してボールを奪いに行くのではなく、まずは前線と最終ラインをコンパクトに保ち、バランスを考えながら守備をする。相手が危険なゾーンに飛び込んで来たら必ず2枚3枚で囲んでつぶしに行く。岡崎も前日練習後に「3トップの守備の負担は軽くなると思う」とコメントしていたが、より効率的かつアグレッシブな守り方になった印象を受けた。

「収穫はディフェンスかなと。ディフェンスに特徴のある選手が割と多かったことで、前半に自分たちで失点するミスを犯すまでは、ほとんど向こうにやりたい形ってのはやらせなかったんじゃないかと思う」と新体制初のキャプテンマークを巻いた本田も前向きに語っていたが、これまでの日本にとって最大のテーマだった守備の改善に希望が見えたのはいいことだ。

攻撃に関しても、前線の皆川がゴディン相手に体を張ってしっかりとターゲットになることで、本田や岡崎、田中らが厚みのある攻めを見せられるようになった。「皆川がしっかり落としてくれるとすごく助かる」と田中も皆川の存在価値を前向きに評価していたが、彼のようなタイプのFWがザック体制にはいなかった。屈強なDF陣と互角に戦えるタフさを持った皆川の抜擢は日本代表に新たなオプションをもたらしそうだ。

この試合が国際Aマッチ2試合目だった田中、途中出場で左足ミドルをポストに当てた武藤嘉紀(FC東京)、出場時間3分でスーパーなパスを見せファンタジスタらしい才能の片りんをのぞかせた森岡亮太(神戸)など、新戦力がそれぞれ持ち味を見せたのもプラス要素と言えそうだ。失点に絡んだ坂井にしても、左利きのセンターバックの優位性を随所に生かしていたし、ウルグアイの次世代のスター言われるロラン(ボルドー)らと対峙しても簡単にはやらせなかった。無名だった選手たちのポテンシャルが、思いのほか高いことを指揮官も代表常連組も再認識したことだろう。

とはいえ、結果的には0-2で負けているのは事実。攻撃の決定機は前半17分の皆川の打点の高いヘッドと武藤のシュートくらいで、まだまだ迫力不足が目立った。選手同士の連携も完成には程遠かっただけに、もっとお互いのよさを出し合える関係を築いていかないといけない。

加えて、選手たちはベースの4-3-3、森重が下がって攻撃参加した際の3-4-3、後半途中から採用した4-4-2といった多彩な布陣を消化していく必要に迫られている。わずか4日間の準備期間に全てを理解するのは酷なことだが、代表チームというのはつねに時間がない。1シリーズ最大10日間の練習で変幻自在の戦い方を習得するのは非常にハードルが高いと言わざるを得ない。実際、ザック監督もあれだけ固執していた3-4-3を途中で断念した経緯がある。いかにしてアギーレ流のスタイルを機能させていくのか。指揮官と選手たちは時間との戦いを強いられそうだ。

9日のベネズエラ戦(横浜)までの準備時間はわずか2日。次は今回出場しなかったメンバーが数多くピッチに立つことになるだろう。新たな面々がチームを活性化しつつ、組織としての完成度も高めていければいいのだが。アギーレ監督にはメキシコ代表の経験を最大限生かして、短時間で日本をそういう方向へと導いてほしいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

(2014年9月7日「元川悦子コラム」より転載)

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