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デレク・ジーター引退興行が加熱、次はイチローか

2014年07月24日 00時05分 JST | 更新 2014年09月22日 18時12分 JST
Elsa via Getty Images
NEW YORK, NY - JULY 22: Derek Jeter #2 of the New York Yankees looks on from the dugout before the game against the Texas Rangers on July 22, 2014 at Yankee Stadium in the Bronx borough of New York City. (Photo by Elsa/Getty Images)

ペナントレースも後半戦に入り、今季限りで引退するヤンキースのデレック・ジーターのフェアウェル・フィーバーが俄然熱を帯びてきました。メジャーではすっかりお馴染みになったシーズンを通じた「引退興行」。彼に続くのは誰でしょうか?

18日(以下現地時間)、ヤンキースは9月7日(日)のロイヤルズ戦の試合前にジーターの引退セレモニーを行い、全入場者に記念コインを配布すると発表しました。すると、直後からチケット再販サイトでこの試合の価格が急騰。軒並み定価の10倍以上となったようです。また、このことに関する情報が錯綜。大衆紙『ニューヨーク・ポスト』がヤンキースの販売するチケットの価格と再販サイトでのプレミア価格を混同させるような記事を掲載したこともあり、チケットが手に入らないファンの怒りが爆発。その後ヤンキースが「あの記事は嘘っぱち、ヤンキースが販売したチケットは全て定価のままだった」とあわてて声明を出す一幕もありました。

また、先週行われた第85回オールスターゲームでは、低迷を続けていたテレビ視聴率が過去3年では最高の7.0%を記録しました。これも「ジーター効果」と言われています。実際、この試合の瞬間最高視聴率9.0%を記録したのはジーターの打席でのことでした。

ここにきてジーターの周辺が一段と盛り上がってきたのは、もちろん彼本人の実績とスター性あってのことですが、今年2月の段階で早々と今季一杯での引退を表明し、開幕からどの遠征地でも引退記念のプレゼント贈呈を中心とするセレモニーが行われるなど、シーズン全体が「引退興行化」していることの影響も無視できません。

ここまでジーターに贈られたものは、NYマーク入りのウェスタンブーツとテンガロンハット(アストロズ)、NYマーク入りサーフボード(エンジェルス)、100周年を迎えたリグレー・フィールドの手動スコアボードの「2」の得点ボード(カブス)など、それぞれの土地柄や球団の個性を反映したものです。またジーターが主宰するチャリティ基金への寄付というのも多く、メッツなどは22,222ドル22セントでした。

このような長期のRetirement Tour(引退興行)は,トニー・グウィン(今年6月に死去)とカル・リプケン・ジュニアが現役最終年の01年6月にその年限りでの引退を表明した辺りから本格的に流行り出しました。近年はボビー・コックス監督(10年)、チッパー・ジョーンズ(12年)、マリアーノ・リベラ(13年)とすっかりお馴染みになりました。この背景には、もちろんシーズンに1度しか訪れることがない同リーグ同地区以外の球団のファンにもちゃんと別れを告げたいという選手の意向もあるのですが、無視できないのがビジネス面でのメリットです。スター選手が引退することが予め発表されていれば、「最後のシーズン」ということでチケットやグッズの販売にも大きなプラスが見込めます。また、メジャーではNPBとは異なり、チケット売り上げは一定の割合でアウェイの球団にも配分されるため「遠征先でもお客が入る」ことは大事なのです。

しかし、個人的にはこのような引退スタイルは「ほどほどに」との思いもあります。昨年引退したロッキーズの至宝トッド・ヘルトン(通算で打率.316、369本塁打)などは、開幕時点からその年限りでの引退が確実視されていましたが、正式に発表したのは閉幕が近い9月半ばのことでした。自分のことで必要以上に周囲を騒がすことを潔しとせず、かつ長年声援を送ってくれた地元のファンとはお互いに別れを惜しむ日々を最低限は確保する。とてもスマートな身の引き方で好感が持てました。まあ、同じ将来の殿堂入り候補者でも全米的(全世界的?)大スターのジーターとローカルヒーローだったヘルトンを同列に論じる訳にはいきませんが。

ジーター引退後数年の間に再び年間引退興行が行われるとすると、それに値するのはイチローとデイビッド・オルティスくらいでしょう。今季一杯でヤンキースとの契約が切れるイチローの場合は、(かつてのケン・グリフィーのように)最後は古巣マリナーズに在籍して各地のファンに別れを告げるのが相応しいと思います。しかし、グリフィーの頃とは異なり、この先1~2年マリナーズは勝負モードです。かつてのフランチャイズヒーローを最後に受け入れるという情緒的な政策を採る余裕はないかもしれません。イチローの場合は彼の職人気質もあり、それがいつであれヘルトン同様に静かにバットを置くことを選ぶのではと私は見ています。

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小 学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke'm Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

(2014年7月22日「MLB nation」より転載)