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守備陣は人材揃うもアタッカー陣が不安。アジア大会で厳しい組に入ったU-21日本代表

2014年08月28日 17時10分 JST | 更新 2014年10月27日 18時12分 JST

2016年リオデジャネイロ五輪に向け、今年1月のU-22アジアカップ(オマーン)から本格始動した手倉森誠監督率いるU-21日本代表。この大会では準々決勝でイラクに敗れ、ベスト8止まりに終わっているだけに、9月14日から始まる2014年アジア大会(仁川)では何としても上位進出を果たしたい。前回の2010年アジア競技大会/広州では、Jリーグに出ていないメンバーと大学生中心の陣容にも関わらず優勝という快挙を成し遂げた。今回の手倉森ジャパンも同じ波に乗りたいところだ。

21日に発表されたメンバーを見ると、U-22アジアカップに出場した 西野貴治(G大阪)や植田直通(鹿島)、原川力(愛媛)、中島翔哉(富山)、鈴木武蔵(新潟)らをベースに、この大会を怪我で棒に振った遠藤航(湘南)や大島僚太(川崎)、野津田岳人(広島)らを加えた構成になっている。

リオ世代は西野、 岩波拓也(神戸)、植田と185㎝超のセンターバックが3人もいて、インテリジェンスとキャプテンシーに優れた遠藤航もいる。これまでDFの人材難に頭を抱えてきた日本サッカー界にとっては珍しいほどDF陣が充実している。

その一方で、アタッカー陣は手薄感が否めない。U-22アジアカップで3ゴールを挙げ、チーム最大の得点源として活躍した中島は、今季レンタル移籍しているカターレ富山で27試合出場2得点と、思うように数字を伸ばせていない。抜群の身体能力を誇る鈴木武蔵もアルビレックス新潟ではジョーカー的な役割にとどまっており、今季2点とやはり数字が物足りない。野津田にしても、サンフレッチェ広島で今季序盤はいい働きを見せていたが、中断明け以降はベンチ外が続き、ほとんどピッチに立てていない。潜在能力の高さは折り紙付きだが、結果を残していないだけに、本人も自信を持ってアジアの舞台に出ていけない部分があるだろう。手倉森監督としては、本音の部分では南野拓実(C大阪)を招集したかったのだろうが、彼は今年はU-19専念ということになっていて、呼べなかった。そういう事情もあり、今回のアジア大会の日本はいかにゴールを奪うかという大きな命題に直面することになりそうだ。

日本はクウェート、イラク、ネパールと同じDグループに入った。クウェートはU-22アジアカップでも同組で、スコアレスドローに終わった相手。それほど楽観視できるチームとは思えない。イラクはリオ世代にとって「因縁の相手」と言ってもいい存在だ。2013年U-20ワールドカップ出場権を賭けて、2012年AFC・U-19選手権(UAE)準々決勝で激突したのも、イラクだった。日本は矢島慎也(浦和)の一撃で追いすがったものの、内容的にも完敗だった。そして今年1月のU-22アジアカップでも、同じ世代のイラクに敗れている。すでにA代表を経験している選手が数多くいるイラクの個人能力の高さは簡単には封じ切れないだろう。ネパールだけはレベル差があると見られるだけに、日本はクウェート、イラクと2位以内を争うことになりそうだ。

日本にアドバンテージがあるとすれば、試合会場が日本に近い韓国ということ。現時点では会場や日程が明確になっていないため、不確定要素は少なくないが、気候や時差、移動距離などの環境面を考えても、中東で戦うよりはかなりプラスだろう。これまで中東で負け続けてきたリオ世代だけに、今回はメンタル的にも余裕を持って戦えるのではないか。

前線の人材がやや乏しい日本としては、手堅い守りをベースに戦う必要がある。1次リーグは得失点差も影響してくるから。極力失点を減らしていかなければいけない。そこで期待されるのが、湘南ベルマーレで19歳からキャプテンマークを背負ってきた遠藤航の統率力。手倉森監督も「リーダーとしての器のある選手」と期待を示していたが、彼は要所要所でチームメートに的確な指示を出し、一体感を作れる存在だ。1月のU-22アジアカップで勝てなかったのも、そういう強烈なリーダーシップを持つ選手がいなかったのも一因だろう。リオ世代は大島や岩波を筆頭に大人しい選手が多い。だからこそ、肝心な局面で声を出せる選手が必要だ。

2010年の前回大会でも、ボランチとして優勝の原動力になった山口蛍(C大阪)がチームにそのまま定着してロンドン五輪を経験し、2014年ブラジルワールドカップの日本代表にステップアップしていった。アジア大会にはそれだけの可能性があるということ。それを誰が掴むのか。それだけの自覚を持って、選手たちには上を目指してもらいたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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(2014年8月22日「元川悦子コラム」より転載)