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【LAXIC編集長対談】おままごとには母乳育児の選択肢がない!? お母さんが楽に育児している姿を子ども社会にも

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ラシク・インタビューvol.58

モーハウス代表取締役  光畑由佳さん

授乳服を製造・販売するだけでなく、子連れ出勤や授乳ショー(授乳服だと外出中でも肌を見せることなく手軽に授乳ができることを実感してもらうイベント)など、常に新しい働き方・ライフスタイルを提案している企業、モーハウス。

今回「おままごとは哺乳瓶だけじゃなくてもいい」と子供用授乳服のクラウドファンディングをスタートさせたそうです。その狙いや、増えてきた子連れ出勤に関するお考えを伺おうと、LAXIC編集長がモーハウス代表の光畑由佳さんと対談させて頂きました。

会話は、子連れ出勤・子供用授乳服だけではなく、女性のキャリアの話やダイバーシティまで多岐に渡っています。

社会の中に子どもがいる
当たり前のことへの社会実験のつもりではじめた子連れ出勤


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写真)モーハウス・オフィスでの実際の子連れ出勤の様子

LAXIC編集長 宮﨑:子連れ出勤は何年前からはじめられているのですか?
モーハウス代表 光畑さんへの以前のインタビューはこちら

光畑:モーハウスをはじめたころからやっているので、もう19年目になります。「子連れ出勤」という形態がメディアに取り上げられてからも、十数年以上経っているのではないでしょうか。

宮﨑:当時は、家族経営以外の企業が子連れ出勤をするケースはかなり珍しかったと思うんです。

でも、待機児童問題がさらに問題となっている今、自治体頼みでは働けないと、子連れ出勤にも様々な形が出てきましたよね。モーハウスさん自体の子連れ出勤には、当時否定的な意見などはあったのですか?

光畑:はじめはオフィス内で子連れ出勤をしていたのですが、東京・青山にお店を出す時に、子連れ出勤の様子もみんなで見てもらおうと、それも目的の1つとしたんです。その後、百貨店やショッピングセンターでも同じように子連れ出勤を導入しています。

オフィス内だと、働く人たちの中には「子連れ出勤」に対する共通認識があるわけです。でも、店舗では、お客様は買い物にいらっしゃっているわけですから、赤ちゃんがいようといまいと、お客様には関係のないことです。

直営店はまだしも、百貨店やショッピングセンターで子連れ出勤をやりはじめた時は、クレームがあるかもと思っていたのですが、意外と来なかったんです。話だけだと分かってもらえないけど、見てもらえると理解してもらえることが多かった。

今の世の中、赤ちゃんを連れて電車・飛行機に乗る際に、泣いてしまうのがうるさいとかいろいろ議論になっていますけれども、赤ちゃんを連れて社会に出て行くということは、本当は普通のことなんです。

社会の中に子どもがいるという当たり前のことへの社会実験のような気持ちでやってきたところはあります。最近の子連れでの出かけづらさ、子育てのしづらさへの投げかけでもありますね。

宮﨑:子連れ出勤を検討する企業が増える一方で、リスクばかりを考えてしまって踏み切れない企業が多い気がするんです。リスクの検討は大切ですが、ではどうしたらやれるのかを考えられていない。

光畑:大げさになりすぎてしまうところもありますよね。もう少しシンプルに解決できる方法もあると思うんですよ。

百貨店で子連れ出勤をするという準備段階の時に、現場からは、ベッドやベビーガードが必要だという声があったんです。でもそれをやったらミニ保育園のようなものになりかねない。

そんな大げさなことじゃなくて、ただ赤ちゃんを抱っこさせてもらって、オムツを替える時だけ少し抜けさせてもらえたら解決できるんです・・・と。いちばんの問題の授乳は、私たちの授乳服で解決できますし。実際、そういう形で実現しています。

子連れ出勤の見学会にご参加くださる企業様も多いのですが、限られた場所でしかできないんじゃないの?というご意見を頂くことがあります。その場所にあったやり方を見つければいいんだということが、なかなか伝わりづらいところはありますね。

宮﨑:最近特に、「全てパッケージ化されて、同じように整っていないとできない」という傾向がある気がします。自分たちの会社や状況に応じてアレンジしていけばいいのに、それができないんですよね。

今日モーハウスさんに伺って、お子さんがいらっしゃることに実は気付かなくて、思ったよりも自然な形だなと感じたんです。

預けなければ、仕事ができないとまず嘆くのではなく、自分ができることを考えることも大切だなと感じました。光畑さん自身も自分ができる解決法という形で子連れ出勤をされてきたんですもんね。

光畑:自分ができる解決法を探す方が楽だなと思うんです。保育園に行かないと働けないという声が世の中を動かしているという事実はあり、それもものすごく大切なのですが、でも実現するまでには時間もかかる訳ですよ。

その間、悶々として待っているくらいなら、自分ができることをした方がいいんじゃない?と思っているんです。そして、自分たちのスタイルに合うように段々変えて行けばいい。

*注)モーハウスさんの子連れ出勤は、勤務時間はショップは4時間・オフィスは2時間〜6時間と決まっています。基本的には、子連れ出勤は1歳2ヶ月までということになっています。また、給料はお世話時間を引いた価格になっています。それは子連れではなく一緒に働く人のことを考えているからです。

キャリアには山登り型があれば川下り型もある
流されるのではなく、下りながら考えて進もう!


光畑:少し話は変わるのですが、この間、大学でキャリアに関しての集中講義をして、山登り型キャリアと川下り型キャリアという話しをしたのです。

「川下りだと支流に行ったとして、それをドロップアウトだと捉える人もいるかもしれませんが、それでも海に出るんだよ」と。それが凄く学生に響いたようなのです。

「今まで山登り型のキャリアしか考えていなかったのに、川下りでもいいんだ!ラクになったと」と。でも本当は川下りというのは楽ではないんですよ。

登るのは身体だけ使って頭は使わなくていいんですけど、下る時は、スピードを緩めず、足をどこに置くかということを常に考えなければいけない。

川もほっとくと流れ流れて違うところに行ってしまうので、望む形の川下りをするためには考えないといけないのです。この話とも似ているところがあるなあと。

宮﨑:女性のキャリアの話しをすると、「自分の会社にはロールモデルがいない」「ロールモデルとして登場する人がキラキラしすぎている」という話がよく出てきます。

自分がどのロールモデルなのかを選びたいという気持ちが強いんですよね。創造したり、いくつかのロールモデルから自分なりにアレンジするのではなく、選択の方向にいっているんですよね。

光畑:下りながら、考えて進んだ方が楽しいと思うんですけどね。

母乳もミルクも選択肢の1つ
「合理性」や「生産性」の観点から母乳育児を推奨する理由


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光畑:母乳はもちろん推奨していますが、その理由は「その方が仕事が捗る」し「お母さんが楽だから」というものです。

私は子どもが小さい頃いろんな育児グッズを買いました。当時、泣いている赤ちゃんがほぼ確実に、98%泣き止む道具があったら、絶対買ったと思うんです。その魔法のグッズって母乳なんですよね。

赤ちゃんが泣く理由って、お腹がすいたか寂しいがほとんどで、そのどちらも満たすことができるのが母乳。栄養面での効果だとか、母乳でないと、なんてことではないんです。

ただ母乳という言葉がマスコミやSNSで出ると、いつでも「ミルクで育てている人に気を使っていない」みたいな批判が出てくるので、母乳のこうした側面を、なかなか私たちがお伝えすることができないのは、もったいないですね。

宮﨑:いろんな観点で批判をする人はいると思うのですが、個人の自由だから批判しなくてもいいのではと思うんです。いろんな人がいて、いろんな子育ての仕方があって、母乳だろうがミルクだろうが、何歳で母乳を止めようが、それは個人の選択です。

自分が出した選択を正当化したいとの理由で批判する人が多いと思うのですが、他の人の選択はもう少し許容すればいいのにと思うことがあります。

実は私、1歳で授乳を止めたのですが、卒乳マッサージをしてくれるところに電話をして、怒られたことがあるんです。「なぜ1歳で止めるんですか」と。でも、いろんな選択肢を知りながら私が選んだことなので、怒らなくてもいいのではと思ったんです。

光畑:そうなんですよ。多くの選択肢がある中で、自由に選んでいいんです。ただ、ストイックな理由ではなく、母乳が便利だということも知って欲しい、その上で選んで欲しいというだけなんです。

外出する時に授乳が大変・・・という理由でミルクを選ぶとすると、お湯を持ち、荷物が重いからベビーカーになり、ベビーカーだと下の方が熱いのでカバーをして、電車移動の時は携帯アプリでエレベーターの位置を検索し・・・と、どんどん大げさになっていく側面がある。

もし、ミルクにする理由が「授乳が大変だから」ということなら、授乳服で解決できるかもしれないよ・・と。母乳をうまく使えば、もっと楽できるし合理的だよ、と。

宮﨑:みんな真面目に深く考えすぎなところもあるのかもしれませんね。1つの課題を解決しようとして、育児グッズがどんどんどんどん増えていく。

光畑:育児グッズを探したり、見つけたりするのは楽しくもあるので、好きな人はそれでいいと思うんです。ただ、増えていくと「合理性」の観点は薄くなる。母乳を推奨する理由は、「合理性」や「生産性」の観点であって、自然だからいいというのではありません。

宮﨑:「合理性」や「生産性」を重視していて、自然だから母乳育児を薦めているわけではないというのは、モーハウスさんのイメージとして誤解されているかもしれませんね。

光畑さんのお話を聞いていると、社会の中に子育てがあること、大人社会に子どもが存在することを、合理的にやりやすく推進したいと思われているだけであって、いわゆる母乳崇拝や自然主義とは全く違うなと言う気がします。

光畑:そうなんですよ。母乳や、昔ながらの〜という言葉を使うと、全て自然主義に繋がってしまうことが多くて、それを否定するために、「いやいや私ポテトチップ大好きですし」みたいな話をしてごまかすのですが、私たちは自然主義を求めて事業をやっているわけではないのです。

そう勘違いされて、拒否反応を示されてしまう・・・というのは残念だなあと思ったりはします。

昔も今も、おままごとには哺乳瓶だけ
母乳育児もあるんだというオルタナティブを子供用授乳服という形で提言したい


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宮﨑:最近、子どもの授乳服を作ろうというクラウドファンディングをされているとか。なぜこのプロジェクトをはじめようと思ったんでしょうか。

*こちらのクラウドファンティングは2016年9月18日(日)までとなります。

光畑:今回、クラウドファンディングに参加するという話になった時に、最近のおままごとはお母さん役が不人気らしい、という話がでました。

なぜ不人気かと言うと、お母さんが忙しそうで大変そうだから・・・という理由なんです。私たちは母乳育児や授乳服でお母さんはもっと楽になれると考えているので、楽に育児しているスタイルを子どもの頃から知って欲しいなと思いました。

考えてみると、昔も今もおままごとには、哺乳瓶でミルクをあげるというスタイルしかないんです。でも、実際の育児はそれだけではない。だからこそ、おままごとにも「おっぱいをあげる」というスタイルがあってもいいよねと。

宮﨑:母乳育児のイメージがモーハウスさんの中では「楽」なのですが、「すごく大変なもの」というイメージを持つ人も多いと思うのです。

だからこそ、子どもの頃から授乳を教えるのか?という意見が出てくるのだと思うのですが、モーハウスさんが伝えたいのは、お母さんが授乳服や母乳を使って楽に子育てしているというスタイルなわけですよね。

光畑:そうなんです。お母さんが身軽に出かけている姿や、身軽に子育てをしている姿を見せて伝えてあげたいという観点です。

宮﨑:個人的にはエルゴ(*近年人気の抱っこ紐のこと)の子供版があるのと一緒なのかなと思っています。

子ども達の「お母さん(お父さん)と同じものを使いたい!」という想いを叶えてあげるということと、エルゴを使って気軽に外出しているのを見て、私も赤ちゃんを抱っこして気軽にでかけられる!というスタイルを教えるということなのかなと。

うちの子は男の子なのですが、下の子が産まれた時、私が授乳している様子を見て、下の子が泣いた時に、自分の服をめくって「おっぱいあげるよ〜」と言っていたんです。

でも、私は別にそれはそれでいいと思いました。男の子だからあなたはミルクでしょ!と押し付けるのもおかしいし、自然な姿を見せればいいのではないかなと。

今回の子ども向け授乳服はどういう発想の中で生まれてきたのではないかと思っています。

光畑:ベロンと服を上げて授乳をしているマネをするよりは、授乳服があると子育てって楽にできるんだよ、ということを、子どもの頃から知って欲しいなということですね。

宮﨑:私、母乳もミルクもダイバーシティの話だなと思っているのです。いろんなやり方があってもいいし、押しつけではないと。

光畑:おっしゃる通りなんですよ。今回提言したいのは、哺乳瓶というスタイルだけではない・・ということなんです。

例えば、授乳室のマークが哺乳瓶のところは多いんですよ。それは授乳=哺乳瓶という刷り込みになるかもしれないといって、抗議する動きも世の中にはあります。でも私たちがやりたいのは、抗議ではなく、オルタナティブなところを見せていきたいということなんです。

だからこそおままごとも哺乳瓶だけじゃなくてもいいのではないか・・という提言ですね。

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写真)モーハウス 光畑代表とLAXIC編集長 宮﨑

おままごとには哺乳瓶しかない・・・。そう言われるまで、それ以外の選択肢が抜けていることに気付きませんでした。

育児をする社会と同じスタイルをおままごとにも。オルタナティブを見せていきたいと考えるモーハウスさんの今回のプロジェクト。授乳シーン・働き方などライフスタイルを提言してきたモーハウスさんならではの取り組みだなと感じました。

おままごとにも、育児にも、いろんなスタイルと選択肢、選ぶ理由があっていいはずですよね。

光畑由佳さんプロフィール

モーハウス代表取締役
倉敷出身。お茶の水女子大被服学科卒。パルコでの美術企画などを経て、1997年に二人目の出産後、電車の中での授乳体験を機に、授乳服製造・販売を手掛ける「モーハウス」を立ち上げ、2002年に法人化。出産、育児に関するイベントを企画するほか、講演や大学の非常勤講師、国の有識者会議メンバーなどとして活動。昨年は北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)関連の会合で「女性と経済」をテーマにスピーチ、今年ペルー・リマで開かれたAPEC女性と経済フォーラム2016では「ビジネスにおける効率性及び成功目標賞(APEC BEST AWARD)」にノミネートされた。茨城県ユニセフ協会評議員。
子連れスタイルで子育てと社会を結びつけ、多様な生き方や育て方、働き方を提案する「子連れスタイル推進協会」代表理事。三児の母。趣味はお産・おっぱい・建築。政府の有識者会議員。茨城県つくば市在住。
HP:モーハウス クラウドファンディングページ 

ワーママを、楽しく。LAXIC
文・インタビュー:宮﨑晴美

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