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LGBTの働きやすい職場――どんなことができますか?

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MURAKI
The Huffington Post
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最近、大手雑誌メディアなどでLGBT特集を組むことが多くなり、日本の大きな企業もLGBTへの関心が高まっています。でも「ベッドの上のことじゃないですか。職場と何か関係あるんですか」とよく聞かれます。私たちは企業の施策にLGBTの視点を取り入れるよう促しています。

最近は大企業の研修に呼ばれることも増えてきましたが、職場でもLGBTであることで困っている人、結構いるんです。私たちのアンケートで「就職活動の時に困難を感じたことがある」人は、LGBでは40%、トランスジェンダーでは約70%。「職場で差別的言動がある」という人は、当事者で57%、非当事者では40%。非当事者が何げなく発した、結婚や子供の話題、あるいは「好きな芸能人は誰」といった話題が、当事者は答えに詰まってしまう。トランスジェンダーであることをカミングアウトして解雇されてしまったり、ゲイであることで上司から目をつけられて昇進差別にあってしまったりという事例も出てきています。

心を病んでしまう方もたくさんいます。「鬱(うつ)を経験している人」はLGBで25%、トランスジェンダーでは35%です。トランスジェンダーでは排泄障害、膀胱炎を経験している人も非常に多いんです。見た目が中性的な感じの人は、男性用トイレでも女性用トイレでも怪訝な目で見られてしまうので、トイレを我慢してしまう。さらに「当事者で年収200万円未満の人」は34%です。働きにくい職場であることが貧困の問題にもつながっています。

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世界には、同性愛者であることが罪な国が、まだたくさんあります。一方で同性結婚ができる国や、差別禁止法があり、同性愛者を差別することが罪になる国もあります。日本は罪ではないですが特段の権利もない。でも企業は今、取り組みが求められています。

国連人権理事会では雇用の場を含む差別の禁止が決議され、日本政府も賛同しています。欧州議会では、モノやサービスにおける差別禁止もロードマップとして決議されています。LGBTが気持ちよく使えるモノやサービスでないと、ヨーロッパでは商売できなくなるということです。アメリカでも連邦政府の取引先は差別禁止を求められます。アメリカではNPOが企業の取り組みを審査して、LGBTが働きやすい会社として100点満点と認めると「Best Place To Work」のロゴを使えるようになります。もう差別禁止は最低ラインなんですね。

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海外の企業の取り組みを見ると、最初に目をつけたのはお酒の会社、次はレジャー業界でした。やがて長く付き合ったり結婚したり、一緒に子どもを育てたりするLGBTのカップルが出始めると、生命保険などが取り組むようになりました。日本でも、携帯電話3社の家族割は、同性カップルOKになりました。私もパートナーと家族割にしていますが、やっぱりうれしかったですね。金銭面よりも「家族に含められた」というのがうれしかったんです。GapはLGBTのイベントに合わせて1週間だけ虹色の看板を掲げたんですが、その期間中、お客様は増えたそうです。一般の人はフツーにお客様として来ますが、LGBTは面白がって全国から来るんですね。京都のお寺とホテルグランヴィア京都は、同性婚の宿泊パッケージを設定し、海外からの旅行客向けに英語のパンフレットを作っています。このキャンペーンでLGBTのお客様が目に見えて増えたと聞いています。

LGBTは従業員にも、お客様にも、投資家にもいます。企業はいずれかに偏らないよう、バランスを取りながら取り組む必要があると思います。従業員としてみると、企業はLGBTであるか否かに関わらず、いい人材を従業員に採用したい。当事者が鬱(うつ)などで休んでしまうより、いきいきと働けたほうがいい。居心地が悪くなって退職してしまうより、長く働いてもらったほうがいい。もちろん、お客様としても無視できません。LGBTは大事なお客様です。

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人事担当者からは「カミングアウトされたらどうしよう」とよく言われます。不安なんですね。でも「カミングアウトしてくることは信頼の証なので、落ち着いて受け止めてください。そして、ほかにばらさないようにしてください」と話しています。よく独身の男性社員が「ゲイだから独身なの?」とからかわれます。当事者が「やめて」と言うことは難しいので、管理職の方が止めてほしいと話しています。

今、私たちに一番相談の多いのは「男性従業員が女性として働きたいと言ってきました。どうしましょう?」というものです。「ポジティブに捉えて、言ってきたということをまず歓迎してほしい」と話しています。その申し出は「ここで働き続けたい」というサインなんです。トランスジェンダーの人も働きやすい職場をつくることはビジネスにとっていいことです。LGBTは当然、顧客にもいます。接客マナーとしても配慮が必要です。

私たちは見た目で多くのことを判断しています。でもLGBTのことを学ぶと、「そうでないかもしれない」という発想が出てきます。男性に見える、女性に見える、日本人に見える、健常者に見える。でも見た目と実際の属性は違うかもしれない。その発想ができると、サービスのレベルが上がることにつながります。まず企業の相談窓口の担当者がLGBTについて知り、「相談できる」ということを明示する。差別禁止規定やセクハラ、パワハラ、メンタルヘルス、福利厚生にもLGBTの施策を入れ、ほかの施策と一緒に、継続的に啓発キャンペーンをしましょうと勧めています。LGBTの視点を入れることで、女性施策や障害者施策など、ほかのダイバーシティ施策も進めやすくなると思っています。

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個人でできることも、たくさんあります。できることからやっていただきたいと思います。まず言葉使い。「彼氏いるの?」ではなく、「付き合ってる人いるの?」と尋ねる。差別的言動にツッコミを入れるなど、アライ(ally: LGBTの理解者)であることを明示する。そんな小さなことでも当事者は気配りを感じます。

ある雑誌にはLGBTについて「知らないことはリスクだ」と書かれていました。でも、私は一歩進んで、今何もやらないことはリスクだけでなくロス、損失だと思います。何もしなかったら差別的な言動は放ったらかしで、当事者は嫌な気持ちを持ち続けます。そして何か他のきっかけがあると、「ここにいても仕方ない」とあっさりやめてしまいます。これは会社にとって、ビジネスにとって、よくないことです。LGBTに関して何かを始めること、それを当事者と一緒に考えていただければうれしいと思います。

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(2015年9月29日、ハフポスト日本版イベント「LGBTって何だろう? 今、私たちにできること 」講演より)

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