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Manfred Stelz Headshot

【スペイン・サンティアゴ巡礼】夫婦肩を並べて歩くのは...そうそう簡単なことじゃない。

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世界でもっとも有名な巡礼地のひとつである、スペイン北西部のキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ。

日本人女性と結婚し、ハネムーン代わりにそのサンティアゴを目指して巡礼路を歩くことにした、ドイツ人のマンフレッド・シュテルツ氏の手記をお届けしています。

巡礼4日目にして、ふたりのあいだに不穏な空気が流れてしまったそのわけは...?

4th day 〈Zabaldica → Zariquiegui, 20.2km〉


昨日は本当によい夜だった。

が、眠りについたイタリア人たちのいびきがコンサートレベルの音量だったのにはほとほとまいった。

それに、まだ夜が明けないうちから彼らのうちのひとりが起き出して、階段を上ったり下りたり、あっちへ行ったりこっちへ行ったり...いったい何をしてるんだ?ほどなくしてほかのひとりも立ち上がって、またあっちへこっちへ...。

仕方なく僕も起きることにして、まずはトイレに向かった。と、危ない!ぼんやりしていて階段から転げ落ちるところだった。うん、僕もそれなりにうるさいかもしれないな。

しばらくすると妻も起きてきて、僕たちは食堂へと降りて行った。テーブルにはすでに朝食が用意されていた。コーヒーにパン、ヨーグルト、ジャム。素晴らしい!

朝食を食べ終えて、荷物を整えたころにはすでに皆はスタートしてしまっていて、僕たちが最後の客だった。

宿の料金は寄付制になっていたので、玄関に備え付けられていた木のボックスに30ユーロを入れた。アルベルゲ*に支払う料金としては少し多いくらいだったけど、あんなに素敵な夕食を用意してくれた女性主人への感謝の気持ちだ。
*サンティアゴ巡礼者専用の宿

そしてその女性主人にぎゅっとハグをして、別れを告げた。とてもいい宿だった。本当にありがとう!さあ、今日もスタートだ!

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歩き出してしばらくして、喉が痛み出したのに気付いた。嫌な兆候だ。僕が風邪を引くときには、決まって喉の違和感からなんだ。持ってきていた風邪薬を飲んだ。これでなんとか良くなってくれるとよいのだけれど...。

僕たちは怪しい雲行きのなかを歩き続け、いくつかの村を行き過ぎた。昨日の強行軍によるダメージで、思うように歩けない...のは妻だけで、僕はそんな妻に合わせてなるべくゆっくり歩くように心がけた。

道ばたにレモンバームを見つけて摘み取った。手の中でもむと、ああ、なんてフレッシュないい香りなんだ。妻にもかかげせあげたら、ようやく少し笑顔を見せた。

僕たちは歩き続ける。ラ・トリニダッド・デ・アレという町の古い橋を渡った。まもなく牛追い祭りで有名なパンプローナの街が見えてくるはずだ。

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次第に交通量が増え、それにしたがって騒音や空気の汚れもひどくなってきた。静かだったこれまでの3日間とは大きな違いだ。

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そしてパンプローナへ到着。そこらじゅうに旅人たちがいる。

パンプローナはうるさくて、ゴミが目立ち、お世辞にもあまり気持ちの良い街だとは言えなかった(少なくとも巡礼路沿いは、だけど)。

僕たちはひとやすみできるようないいカフェを探しながら、耳と鼻をふさぎたくなるような通勤ラッシュまっただなかの大通りを足早に通り過ぎた。

大聖堂で少しだけひとやすみした後に、ようやくよいカフェを発見した。カフェ・コン・レッチェとオレンジジュース。それに卵とチーズとポテトが混ざったまたしてもなんだかよくわからないものを食べた。

さあ、ふたたび出発。ホタテの印が、僕たちの行く先をはっきりと示してくれている。

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小さな村を通り過ぎた後で、ようやく気持ちの良い田園地帯に出た。再び静けさが戻り、僕たちは美しい景色を楽しみながら歩いた。遠くに雨雲が見える。僕たちのところへやってきませんように...。

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道は上りになった。そこで、妻が突然不満を口にした。

「私は いつも あなたを 必死で 追いかけてる!」

普段は穏やかな妻が決然としてそう言った。

「何度『早すぎる』と言えばわかってくれるの?

あなたは私に合わせてゆっくり歩けるから体のダメージは軽いかもしれないけど、私のほうはいつもより早く歩かなきゃいけないおかげで本当に足が痛いの!

いちいち先で待たれるのもイライラする。もっとゆっくり歩けないのなら、目的地で待ち合わせにしようよ」

そんなあ。たしかに、僕はいつも彼女より早く歩きすぎてしまい、ふと気づいたところで彼女を振り返って待つ。その繰り返しだった。OK、わざとゆっくり歩くのも本当は楽じゃないんだけど、なるべく肩を並べて歩くようにするよ。

上り道はさらに続く。大きな石がごろごろしていてとても歩きづらい。妻が疲れているのがよくわかった。僕もだ。でももうすぐ定めた目的地のはずだ。

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もう少し歩くと、ようやく小さな村サリキエギにたどり着いた。ああ、くたびれた!

最初に目に入ったアルベルゲを訪ねると、3人のかしましい若い女性が出てきて口々に宿の説明をしてくれた。僕たちは朝食込みでひとり10ユーロを支払った。

2階の部屋は清潔だったが、小さな部屋にベッドが8台も詰め込まれていた。シャワールームがふたつに、トイレ、それにわあ、洗濯機があるじゃないか! 

僕はすぐにシャワーを浴びて、洗濯を始めた...とそこで、洗濯機に貼ってある「3ユーロ」のサインに気が付いた。ちぇっ、無料なわけがないか。

しばらくするとほかの旅人たちもやってきて、部屋はすぐにいっぱいになった。物静かで、親切そうな人たちばかりだった。よかった。

そしてこの宿には、ああ、Wi-Fi、Wi-Fiが通っているじゃないか!さっそく接続して、ベッドの上でニュースやメール、SNSなどをチェックした。そうこうしているうちにすっかり眠くなって、4時半から7時まで、豪快に昼寝をしてしまった。

宿の階下で、スープと、豚肉とポテト(僕)、揚げた魚(妻)、デザートのキャラメルプリン(僕)とフルーツ(妻)を食べた。美味しく食べられたが、僕の喉の痛みは増すばかりだ。明日には良くなっていることを願おう。

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8時半にはふたたびベッドに入った。どうか今晩はいびきに悩まされることがありませんように...。

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※この手記は、妻で編集者の溝口シュテルツ真帆が翻訳したものです。妻の手記はnoteで公開しています。