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福島の医師不足利権

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福島の医師不足は深刻だ。関係者も対策に余念がない。あまり指摘されていないが、医師不足対策は、しばしば利権と化す。一例をご紹介しよう。

福島県いわき市の福島労災病院(以下、労災病院)の整形外科のケースだ。かつて、東北大から4名の医師が派遣されていた。ところが、昨年、宮城県内の医学部新設もあり、東北大は医師の引き上げを通告してきた。

この地域の整形外科医療は労災病院といわき市立総合磐城共立病院(以下、共立病院)が担ってきた。労災病院が診療を停止すると、いわき市は整形外科難民で溢れることになる。

労災病院は福島県立医大(以下、医大)に整形外科医の派遣を求めたが断られた。事態を重くみたいわき市が福島県に相談したところ、医大から寄附講座の活用を提案された。共立病院の「地域医療連携室だより」(2015年8月号)には、「福島医大付属病院紺野教授にいわき市の整形外科医不足についてご相談をしました。その際に紺野教授から共立病院に医師を派遣するために、寄付講座を作っては、とご指導を受けました」との記載がある。

では、寄附講座とは、どんな仕組みなのだろう。いわき市関係者から入手した資料によれば、共立病院は、3名の整形外科医を派遣してもらうために年間6000万円を医大に支払う。5年間で総額3億円だ。

一方、寄附講座から派遣される医師に支払われる人件費総額は2530万円。差し引き3470万円が医大の自由に使える金になる。残業代などは病院持ちだ。年間990万円を予定している。この結果、いわき市は3名の整形外科医を5年間派遣してもらうために総額3億4950万円を負担することになる。

そもそも医大は「県民の保健・医療・福祉に貢献する医療人の教育および育成」を理念に掲げており、震災後は多額の税金が投入されている。平成25年度の場合、運営費交付金として87億円、補助金として30億円だ。9億8429万円の黒字である。

寄附講座など設置せずとも、医師を派遣すればいい。震災で被害を受けたのは浜通りだ。福島市内に位置する医大ではない。ところが、いつの間にか被災地をネタに医大が焼け太る構造になっている。

さらに、寄附講座ビジネスの実態は、派遣されるべき医師に支払われる給与のピンハネだ。タチが悪い。

では、いわき市だけが特別なのだろうか。最近、福島県内の病院長から、「医大のホームページに寄附講座一覧があるから、それを見るともっと驚きますよ」と連絡を受けた。

そのページをみて驚いた。現在、医大には23の寄附講座が存在するが、このうち企業から寄附によるものは9つで、12が県内の医療機関、残りの2つが自治体だ。

医療機関には、南東北総合病院を経営する脳神経疾患研究所、星総合病院、会津中央病院、磐城共立病院など福島県の代表的な病院が名を連ねる。設置している寄附講座も一つとは限らない。磐城共立病院は二つだが、脳神経疾患研究所は5つだ。

寄附目的には、それらしいお題目が記されているが、実態は医師派遣だ。星総合病院の寄附講座の設置目的の項は「平成27年度以降、星総合病院に疼痛外来を設置し、そこで慢性の痛み患者を診療する。」と明記されている。

ちなみに、平成25年度の医大の寄附金収入は5億6130万円だ。以上の事実は、医大が寄附講座という仕組みを使って、医師派遣業で荒稼ぎしていることを意味する。

医大の使命は、医師を育成し、県民が必要とする地域に供給することだ。医師派遣ビジネスで金を儲けることではない。

かつて会津藩校日新館からは多くの有能な人材が育った。この学校では、什の掟として「卑怯な振舞をしてはなりませぬ」などと教えた。法律違反すれすれの方法で、金をふんだくる医大のやり方は卑怯だ。いまこそ、福島の伝統に立ち返るべきではなかろうか。



* 本稿は「医療タイムス」の連載を修正・加筆したものです。

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