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社会と会社を変える「上質な妄想」とは

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DELUSION
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ボストンに留学時代、よく友人たちとよくたむろしていたのがMITメディアラボだった。いつ行っても不夜城のごとく学生がたむろし、おもちゃやパズルのようなものが床に転がっていた。
そんな当時(1989年)のメディアラボは、ニコラス・ネグロポンテのリーダーシップの元、学生たちが自身の手で「世界初」「世界最大」のイノベーションを生み出す場だった。
そこで私が得た最大の学びの一つ、それは「上質な妄想」の大切さだ。

そして今年、カリフォルニアのGoogle本社に行った際、デジャブ感満載――20数年前のメディアラボの感覚が蘇ってきた。
この会社のエネルギーってどこから来るのだろう・・・。そう思った直後、私の意識は日本の社会や会社に移った。

【そこに安心・安全はあるか?】
「出る杭は打たれる」文化では上質な妄想は生まれ得ない。アイデアに対して攻撃・非難を排除し、そのアイデアが何であるか、徹頭徹尾聞き込むための周りの「聴く力」が安心・安全を生む。
この聴く力がなければ、みすみす画期的なアイデアを取り逃がしたり、本当は違うのに「ああ、それもうやったことだから」と水に流して、相手も「言っても無駄だ」というふうになってしまう。たとえその提案が的外れであっても、別のケースで役立つかもしれない。
尖ったアイデアは往々にして支持を得られない、という傾向があるのをあらかじめ知って、オープンで好奇心に満ちた場のために、「妄想」への攻撃・非難は避けたい。
(参照 中原淳 東京大学 大学総合教育センター 准教授のブログより:イノベーション人材とは「キンキンに尖った一匹狼人材」ではない!」 )

【そこに適度なストレスと競争はあるか?】
安心・安全だからといって、だら~、ゆる~、と漫然としているだけでは上質な妄想は生まれない。
MITメディアラボも、Googleも、優秀な人材が自らのプロジェクトを成功させるべく、しのぎを削っていることには変わりない。
競争というからには、明確なプロジェクトのオーナーシップとアカウンタビリティが必要だ。「これは自分のプロジェクト」「これは自分の責任」と、それぞれがリーダーとして責任譲渡されていることが競争の前提ともいえるだろう。
また、ストレスレベルも「上質な妄想」を育むポイントだ。Herbert Bensonもハーバードビジネスレビュー(Fryer, 2005)で、eustressとdistressの2種類のストレスについて述べている。(「Are You Working Too Hard?」 HBR November 2005)
Eustressの'eu'とはギリシャ語で「良い」という意味で、eustressとは、例えば筋肉に適度な負荷をかけて筋力を増進させる、というふうに成長や強化に結び付くストレスのことである。いっぽうdistressは長期にわたって改善しそうにない負荷で、不安やうつなどに繋がってしまう。

【そこに大義(Purpose)はあるか?】
大義(Purpose)とは、言い換えると「それって人のためになるの?」「それって今困っていることを解決してくれるの?」ということだ。
「上質な妄想」は共感を生み、人やリソースを引き付けていく。それは、そこにあるPurposeが共感・共鳴を呼ぶからである。そして、リソースと協力を引き寄せて、実現する可能性がどんどん高まる。
また、モチベーションとPurposeも切っても切り離せない。この分野のエキスパートDaniel Pinkは、熟達(Mastery)、大義・目的(Purpose)、自律性(Autonomy)がモチベーションの要素であると言い、多くのビジネスリーダーのバイブル的書籍「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」でJim Collinsは、ビジネスにおけるPurposeの重要性を述べている。
(参照:Daniel Pink TED Talk 「やる気に関する驚きの科学」

【今・ここを捕まえるマインドはあるか?】
ニュートンが万有引力の概念に気づいたとき、あるいはエジソンやアインシュタインの逸話にみられるように、上質な妄想=イノベーションの種は理論的な積み上げをしているときではなく、それも行ったうえで、いったん手放した時にぽっかり浮かんだりするものだ。
そして、そのシグナルはとても密やかに、微細に心に発現することが多い。
そこに浮かんでいたにも関わらず、一瞬のきらめきに気づかないまま、生まれることなく消えて行ったアイデアは星の数にのぼるだろう。
現MITメディアラボの伊藤穰一氏は、「イノベーションの民主化」を推進しているリーダーの一人だ。彼のTED Talk「革新的なことをしたいならナウイストになろう」でも、一瞬のきらめきを逃さない能力の大切さが強調されている。
今・ここに軸をしっかり持つことが、逆に上質な妄想につながるというパラドクスは、この不確定で複雑、「無常」の世では必須ではないだろうか。

(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事 木蔵(ぼくら)シャフェ君子)

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