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クールジャパン旋風は"来る"か? ~世界を席巻する韓国コンテンツ産業の秘訣 - 押久保直也

2013年06月26日 17時43分 JST | 更新 2013年08月25日 18時12分 JST

先日、アメリカの人気オーディション番組「アメリカンアイドル」のフィナーレを視聴した際に、韓国人アーティストのPSY(*1)がゲスト出演したことに衝撃を受けた。現在、韓国のポップカルチャー(ドラマ、映画、音楽など)が日本などアジア諸国のみならず、世界を席巻する勢いである。ここまでの大成功を収めることが出来た韓国ポップカルチャーの秘訣は何なのであろうか。その背景を見てみたい。

1997年、韓国は通貨危機により経済が壊滅的なダメージを受け、一時的とはいえIMFの支援下に入るなど国家イメージは失墜し、国際化社会で生き残っていくために政府・産業界が新たな成長育成産業を創出する必要性に迫られた。1998年、金大中大統領による「文化大統領宣言」を契機として、韓国は小さな自国のマーケット(*2)で稼ぐよりも海外で稼ぐ方向に重きを置き、国策としてコンテンツ産業の振興・輸出に力を注ぎ始めた。韓国政府はまず多額のコンテンツ関連予算を策定し、その大半を海外向けマーケティングやプロモーションに投下した(*3)。更に各国消費者の心をつかむプロモーション戦略として(1)現地の有力メディアを押さえ、集中的な露出を行うこと、(2)ドラマや音楽の現地語対応を進めること、を展開した。

韓国のコンテンツ産業自体の規模は小さかったが、そのゼロ発の戦略的な取組みは、コンテンツ輸出を通じて「韓国大衆文化の流行→関連商品の販売増加→韓国のイメージ向上→韓国商品の販売増加」といった大きな波及効果を生んだ(図表1、図表2)。その結果、90年代後半以降、名目GDPに占める輸出比率が増加基調で推移するなど、韓国は狙い通り、海外でのプレゼンスを高めることに成功している(図表3)。

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一方、日本においてはどうか。安倍政権の成長戦略の主軸として、コンテンツ産業の海外展開を積極的に図る政策「クールジャパン」が大いに注目を浴びている。その狙いは、韓国同様にコンテンツ輸出強化を通じて、海外でより多くの収益を稼ぎ、日本の対外的プレゼンスを向上させることなどである。日本も韓国のコンテンツ海外展開戦略を追うことで、成長が見込める海外においてより多くの収益を稼ぐことが可能だとする意見を盛んに耳にする。韓国のようなコンテンツ輸出によるゼロ発の大きな波及効果はあまり期待できないかもしれないが、日本は既に(1)国内コンテンツ市場は世界有数の規模を誇っている、(2)アニメやマンガなど世界に誇るコンテンツを有している、(3)世界有数のポジティブな国家イメージを有している、など輸出を拡大できるコンテンツ産業を持ち、その環境にも競争力があることは確かである。

クールジャパンの成功は、日本に触れる機会を作ること、すなわち海外市場向けマーケティング戦略(「どう発信していくか」)次第といえるだろう。韓国のコンテンツ海外展開戦略を参考に、日本文化全般への関心を高めることさえ出来れば、波及効果として日本を訪れる観光客の増加も期待できるなどクールジャパンのポテンシャルは計り知れない。

果たしてクールジャパン旋風は"来る"であろうか。挑戦は始まったばかりだ。

*1.代表曲「江南スタイル」は、英国、オーストラリア、カナダなど10カ国以上で最高1位、米ビルボードで最高2位を記録した。

*2.韓国の国内市場の規模は日本の5分の1にも及ばない。

*3.2011年予算では、韓国のコンテンツ関連予算は200億円以上に及ぶなど日本の約8倍となっている。

(※この記事は2013年6月25日の「研究員の眼│ニッセイ基礎研究所」より転載しました)