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「キュア」から「ケア」の時代へ-高齢者の「生活の質」高める「看護と介護」:研究員の眼

平成27年6月、厚生労働省は『保健医療2035提言書』を出し、『キュア中心からケア中心へ』を挙げている。

2017年12月28日 09時35分 JST | 更新 2017年12月28日 09時35分 JST

戦後、日本人の平均寿命が大きく延びた背景には、医療の進歩と保健衛生状態の改善がある。それにより乳幼児の死亡率が大幅に低下し、成人の病気・ケガによる死亡率も低減した。

また、日本は医療の国民皆保険制度を導入し、多くの人が良質の医療サービスを享受してきた結果、世界有数の長寿国になった。

2000年には高齢化の進展に伴い、40歳以上を被保険者とする公的介護保険制度も施行された。高齢化による介護ニーズは一部の高齢者の問題ではなく、日本社会の普遍的な課題になったからだ。

高齢社会において求められる医療の役割も変化し、急性期医療の需要に対して慢性期医療の比重が高まっている。高齢社会では、高度医療を担う大学病院等の特定機能病院などの大病院だけではなく、高齢者の慢性疾患にきめ細かく対処する「かかりつけ医」や在宅診療などを行う地域医療機関の役割が非常に重要だ。

最近では、高度医療機関が地域医療機関と適切な役割分担をし、円滑に本来の機能を果たすために、大病院の受診にはかかりつけ医の紹介状の提出が必要になっている。

平成27年6月、厚生労働省は『保健医療2035提言書』を出し、2035年までに必要な保健医療のパラダイムシフトのひとつとして、『キュア中心からケア中心へ』を挙げている。

そこには『疾病の治癒と生命維持を主目的とする「キュア中心」の時代から、慢性疾患や一定の支障を抱えても生活の質を維持・向上させ、身体的のみならず精神的・社会的な意味も含めた健康を保つことを目指す「ケア中心」の時代への転換』を図ることが掲げられている(*1)。

高齢社会を誰もが幸せに過ごし、望むような最期を迎えるためには、医療と介護の連携が不可欠だ。急性期医療の対応だけに留まらず、その後の「看護と介護」の体制を一人ひとりの状況に合わせて構築することが必要だ。

高齢者の場合は、若い人の急性期医療とは異なり、治療中の体力の衰えから他の部位の機能低下が著しく進行することが多いからだ。医療の目的は病気やケガの治癒だが、緩和ケアなども含めた、その先の人間本来の「生活の質」の回復を図ることが何よりも重要だ。

「医療」と「看護」は車の両輪だが、それぞれの機能は異なる。金井一薫著『ナイチンゲール看護論・入門』(現代社白鳳選書14)には、『医学は病気をある部分に生じた異常機能ととらえ、病変の除去や機能の改善を目指すのに対して、看護は一部の臓器や組織に現れる病変だけに眼を向けず、人の生命力全体の動きや状況を読み取る』と述べられている。

慢性疾患を抱えながら生きる高齢者が増え続ける長寿時代には、「看護と介護」という「ケア」の充実がますます重要になるだろう。

(*1) http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/assets/file/healthcare2035_proposal_150609.pdf

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(2017年12月26日「研究員の眼」より転載)
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