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社長が代わっても「隠す文化」から抜け出せない東芝

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東芝が、原発事業で数千億円の損失を出す見込みとなり、今期(2017年3月期)の決算が最終赤字になる可能性が高まったと報じられている。

今年3月に、原発事業で約2500億円の減損を行って損失処理を行う一方、医療機器子会社をキャノンに約6655億円で売却して財務体質を強化し、その資金を好調な半導体事業の投資に回した。その半導体部門の好調等で、今期は1450億円の黒字に急回復する見込みを公表していた。

それが、一転して、巨額の損失を出し最終赤字に転落する可能性が高まったというのだ。収益回復の見込みを前提に、最安値155円から反騰し、475円まで買われていた東芝株は、12月27日、28日と、連続ストップ安で311円まで売られている。

東芝会計不祥事追及で独走してきた日経ビジネスのオンライン記事(NBO)【東芝、原発事業で陥った新たな泥沼】によると、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が2015年末に買収し、子会社化した米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)について、買収後にWHがS&Wの経営状況を見直したところ、原発の建設プロジェクトなどでコスト超過が判明。資材や人件費などが想定よりも大幅に増え、その結果、S&Wの資産価値が当初の想定から大きく下がり、多額の損失計上が必要だと判断したとのことである。

2006年に約6000億円を投じてWHを買収し、買収価格とWHの純資産との差額、約3500億円の「のれん」を計上していた。買収後、リーマンショックや原発事故などで経営環境が激変したのに、一貫して「原子力事業は好調」と説明し、巨額ののれん計上を正当化してきた東芝だったが、16年3月期の2500億円に続いて、17年3月期でも数千億円の損失を計上することで、会計不祥事表面化後にも続けていた説明が全く誤りであったことが示されたことになる。

上記NBO記事では、東芝の子会社WHがS&Wの買収を決断した理由に関して、以下のように述べている。

原発建設の現場では「コストオーバーラン」が深刻な問題になっていた。WHは米国内で4基の原発を建設していたが、規制強化による安全対策や工事の遅延などでコストが増大し、事前の見積り額を超過するようになったのだ。発注元の米電力会社はWHに超過分のコスト負担を求め、一部は訴訟に発展。工事を担当するCB&IとWHとの間でも、負担割合などをめぐって争いになっていた。

こうした係争が深刻化して損失計上を迫られれば、WHの収益計画を見直さざるを得なくなる。すると、のれんの減損処理が現実味を帯びる。こうした事態を回避するために、東芝はS&Wを買収することで関係を整理することにした。

(中略)

つまりS&Wを買収することが、電力会社との関係を修復する条件だったのだ。前述の東芝関係者は「S&Wを買収しなければ、WHは2015年中に減損処理に追い込まれていたかもしれない。資産査定などの時間は限られていたが決断せざるを得なかった」と振り返る。

そのような事情から、東芝がS&W買収・子会社化を発表したのは2015年10月28日だった。その直後の11月に、日経ビジネスが、(【スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽 内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損】【スクープ 東芝、室町社長にも送られた謀議メール 巨額減損問題、第三者委の調査は"出来レース"だった】)等のスクープ記事を連発した。それによって、第三者委員会発足前に、当時の東芝執行部が、米ウエスチングハウスの減損問題を委員会への調査委嘱事項から外すことを画策し、その東芝執行部の意向が、東芝の顧問である法律事務所から第三者委員会の委員の弁護士に伝えられ、原発事業をめぐる問題が第三者委員会の調査対象から除外されたことが明らかになった。

しかも、その中で、当時の田中社長が、社内メールで「今回の課題は原子力事業の工事進行案件と初物案件(ETCなど)であって、それ以外は特に問題がないという論理の組み立てが必要だ。そうでなければ、会社の体質、組織的な問題に発展する。」と述べていたことも明らかになった。東芝内部者からの告発によると思われるスクープ記事で、問題の本質の隠ぺいの事実が否定できない事態に追い込まれていったのとほぼ同じ時期に、東芝執行部は、S&W買収によってWHの減損処理を必死に先送りしようとしていたのである。

今回、原子力事業で更なる巨額の減損の見通しが明らかになったことで、東芝の再建は極めて厳しい状況に追い込まれることとなった。

債務超過を免れるための資本の増強も検討されているようだが、特設注意市場銘柄に指定され、12月19日に、その期間が来年3月まで延長された東芝は、公募増資を行うことは困難で、金融機関に支援を求めても、主力事業の2つのうちの原発事業が巨額の損失を出し、現時点では好調な半導体事業も、巨額の投資を継続しないと競争に取り残されかねない、というのでは、金融機関が資本増強や巨額の融資に応じることは常識的には困難だろう。2日間の株価の暴落も、そのような惨状を見越してのものといえる。

今回の突然の巨額損失の公表に関して、16年3月期決算の段階で、正確な金額は確定できなくても、損失の発生の可能性を何らかの形で決算に反映させられなかったのかという点は、会計処理上の問題として検討する必要があろう。

また、会計処理として問題がなかったとしても、17年3月期で黒字転換の業績見通しを公表していたのに、一転して巨額の損失を計上して赤字転落の見通しになったことで、投資家、株主の利益を著しく損なったことは事実であり、今回の問題も、広い意味での「東芝会計不祥事の続篇」と言うべきだろう。

そして、今回、明らかになったことは、結局、東芝という企業は、社長が誰に代わっても、「隠す文化」の組織的体質から脱却できないということだ。綱川智社長は、会見で、「コストを見積もったのが10月初めでWHが再び資料をチェックして報告したのが12月初め。私は今月半ばに報告を受けた。」と述べたという(日経)。会社の屋台骨を揺るがすほどの事態が生じているのに、最近までそれを知らなかったと強弁してはばからないというのが、東芝の社長が歴代共有してきた特質のようだ。

先月、一連の東芝会計不祥事の追及で、誌上で内部告発の募集まで行ってスクープ記事を連発し、独走してきた日経ビジネス誌から、12月19日号で特集する「次代を創る100人」のうちの一人の東芝の綱川社長について、記事の執筆依頼が来た。これまで東芝を徹底批判してきた私が同社の現社長についてコメントするとすれば、極めて厳しい内容になるのは当然だ。それでも良いのかと聞いたら、「構わない」とのこと。以下は、私が寄稿した綱川社長についての記事の全文だ。

2017年は、東芝が本当に変わることができるか試される1年になる。会計不祥事では、「偽りの第三者委員会」を使って問題の本質を覆い隠したので、結局、抜本的な改革はできず、組織にしみついた「隠す文化」は変わっていないのではないか。

多くの企業不祥事に弁護士として関わってきたが、教訓として活かしていく企業と忘れ去ろうとする企業の二つに分かれる。2007年に一連の食品不祥事で危機的事態に陥った不二家は前者だ。不祥事を風化させず、取組みを継続していくため、「食品安全の日」を設け、毎年、社員全員による行事を開催している。これまでの対応を見ると東芝は後者の典型のように思える。ブランドと信頼を失墜させた不祥事を次の世代へと語り継いでいくことは経営陣の責務でもある。

創業141年、培ってきた技術の底力を活かすためには、組織を根底から変える姿勢を世の中に見せることが不可欠だ。

発売後に送られてきた同誌を見ると、他の99人についての記事は、ほとんど例外なく、賞賛と期待に埋め尽くされており、まさに「次代を創る100人」に相応しい。その中で、私が書いた綱川社長に関する記事だけが、異彩を放っている。

日経ビジネス編集部は、今回の原発事業での巨額損失公表を見通していたわけではないだろう。それにしても、同誌の徹底した東芝批判の報道姿勢には、改めて驚嘆させられる。

(2016年12月28日「郷原信郎が斬る」より転載)