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「忘却と風化」を超えて、「脱原発」へと舵を切る年に!

2017年01月05日 20時53分 JST | 更新 2017年01月06日 00時17分 JST

新しい年を迎えて「変化」の風を感じます。

私たちの記憶の中に、「3・11」と「東京電力福島第一原発事故」は、どれだけ鮮明に刻まれているのでしょうか。今年は、「原発事故を繰り返さないために、脱原発への選択を刻む年」となるのか、あるいは「原発事故の忘却と風化が完成し、原子力産業と共に奈落に落ちる年」になるのか、私たちは正反対の力がぶつかりあう重大な分岐点に立っています。

2011年3月11日。東日本大震災と共に、未曾有の全電源喪失という「制御不能状態」に入り、次々とメルトダウンに陥った東京電力福島第一原発事故から5年10カ月が経ちました。この間、日本政府は「原発再稼働」を次々と進めていく一方で、海外への「原発輸出」を、総理自らトップセールスをしてきました。脱原発を願う世論が根強いことに相反して、明らかに「忘却と風化の完成」に近づきつつあり、「第2の重大事故」に向けて突き進んでいると感じます。

ただし、福島第一原発事故の衝撃は、原発ビジネスを根本的に変えつつあります。原発を手がけることの収益より、リスクの方が大きくなり、壁に突き当たっているのは明らかです。昨年、不正会計に揺れて巨額の損失を計上したばかりの東芝が、事業再編過程でも手離さなかった「アメリカの原子力事業」の買収で、今度は苦境に立っています。

東芝は不可解な「巨額損失」の経緯解明を (日本経済新聞 2016年12月30日)

会計不祥事で再建中の東芝に、新たな巨額損失の可能性が浮上した。昨年末に子会社の米ウエスチングハウスを通じて買収した、原子力発電所の建設などを手がける米企業で想定外のコストが生じ、数千億円規模の減損損失が発生するおそれがあるという。

財界トップを輩出した名門企業は重大な岐路を迎えたといえる。東芝の経営陣にまず求められるのは損失額の一日も早い確定と、なぜ巨額の損失が出る見通しになったのか、経緯の解明だ。

東芝の説明によると、原発をめぐる安全意識の高まりから、米社の手がける原発建設のコストが予想以上に膨らみ、巨額の損失につながったという。

だが、原発の安全性に厳しい視線が注がれるようになったのは最近の話ではなく、東京電力福島第1原発事故以来だ。昨年末に買収を決める時点で、考慮に入れるのが当然の要素だろう。

東芝の不可解な「巨額損失」を生んだ背景には、日本政府があくまでも国策として原発護持を進め、衰退期に入った原子力産業の「守護神」として前のめりであることと無縁ではないと思います。1月3日には、不正会計問題で「粉飾の疑い」との記事も出ています。

東芝、400億円粉飾の疑い 監視委、検察に調査報告へ (朝日新聞2017年1月3日)

東芝の不正会計問題で、2014年3月期までの3年間で400億円規模にのぼる決算の粉飾をした疑いがあるとする調査結果を証券取引等監視委員会がまとめたことが関係者への取材でわかった。監視委は、歴代3社長が不正会計に関与した疑いが強いとみている模様だ。

東芝に何が起きているのかは、これから注目していきたいと思います。それでも、再稼働、原発輸出と足早に歩を進めようとしている「原発護持」の国策は容易に変わりそうにありません。アメリカの原子力産業をめぐるニュースより前に、イギリスの原発建設への国をあげた融資のニュースが目をひきました。75年前の日本が、巨艦大砲主義から脱出することができず、「硬直した既定方針」を変えられずに泥沼の戦局に入っていた姿と二重写しになります。

英原発計画、日立など支援=資金1兆円規模-政府:(時事ドットコム2016年12月15日)

政府が、日立製作所などの日本企業が英国で受注した原発建設に対し、政府系金融機関を通じた資金支援を検討していることが15日、分かった。国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行が原発の建設や運営を行う現地法人に投融資する案が有力だ。政府支援で明確な姿勢を示し、日英の大手金融機関に参加を促して、1兆円規模の資金供給の枠組みを来年中にも構築する。来日中のハモンド英財務相は15日、東京都内で記者団に対し、英国が原発建設計画について、日本政府、日立、東芝と資金支援の枠組みを協議していることを明らかにした。

衰退期にある原子力産業の「守護神」と化した日本政府は、福島第一原発事故の処理さえままならないのに、「原発輸出」によって「世界の原発リスク」さえ引き受けようというのでしょうか。ところが、日本の国策としての「原発輸出」も、ベトナムでは見直し、撤回へと反転し始めています。福島第一原発事故を直視すれば、当然のことだと感じます。

ベトナム、日本の原発建設計画を白紙撤回 福島の事故で計画変更の結果...(ハフィントン・ポスト 2016年11月23日)

日本とロシアが受注したベトナムの原子力発電所の建設計画が、白紙撤回された。福島の原発事故を受けて安全性を見直した結果、建設費用が膨大になり、財政難も追い打ちをかけた。「成長戦略の柱」として官民一体で推進してきた日本の原発輸出が頓挫することになる。

ベトナムの国会は11月22日、日本とロシアが受注した南東部ニントゥアン省の原発建設計画を白紙撤回する政府案を、90%を超す賛成多数で承認した。(中略)

ベトナムのニュースサイトVnExpressによると、日本とロシアのコンサルタントは、建設費用が当初見込んでいた100億ドル(1兆1100億円)から270億ドル(約3兆円)に膨らむと試算、発電単価としても割高となることが予想された。2015年末に負債が1600億ドル(約17兆7000億円)に膨らみ、財政再建を進めるベトナムにとって、巨額の設備投資は重荷になった。

日本政府とは正反対に「福島第一原発事故」を教訓化する動きが各国に広がっています。昨年に政権が交代した台湾は、「2025年までの原発ゼロ」をめざす方針を明らかにしています。

原発ゼロ「必然の流れ」=福島事故が契機-台湾経済部長:(時事ドットコム2017年1月1日)

台湾の李世光経済部長(経済相)は2日までに時事通信の単独インタビューに応じた。民進党・蔡英文政権が推進する脱原発政策について、李氏は東京電力福島第1原発事故が大きなきっかけになったと指摘し、台湾の将来にとって「原発ゼロは必然的な流れだ」と強調した。

昨年5月に発足した蔡政権は2025年までに原発をゼロとする目標を掲げている。現在3基が稼働し発電量の14%を占める原発を順次停止し、再生可能エネルギーの割合を現在の4%から20%に引き上げる方針だ。10年に満たない短期間での目標達成を疑問視する声が少なくないが、李氏は「現在の技術をもってすれば実現は可能だ」と断言。

台湾は、福島第一原発事故を教訓化して、再生可能エネルギーの活用に全力を注いで「原発ゼロ」を選択すると旗幟鮮明にしました。原発事故の当事国である日本が、国内外で原発護持にしがみつこうという姿勢とは正反対です。

昨年末には、ついに巨額の税金を飲み込んできた高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定し、核燃サイクルの破綻が明らかになりました。ところが政府は、失敗を認めずに「核燃サイクルの護持」に拘泥しています。

官房長官、核燃料サイクル推進は「重要」 もんじゅ廃炉決定で (日本経済新聞 2016年12月21日)

菅義偉官房長官は21日午後の記者会見で、政府が同日の関係閣僚会議で高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を正式決定したことについて「結果として当初期待された成果が出るに至らなかったのは事実」との認識を示した。一方で「我が国が高速炉を実用化していく上で貴重な経験とデータが生み出された」とも述べ、今後も核燃料サイクル政策と高速炉開発を推進していくことが「極めて重要」だと話した。

こうした政府の姿勢と軌を一にして、東芝や日立と並ぶ日本の原子力産業大手の三菱重工業が、経営再建中の仏原子力大手アレバに出資することが決まっています。昨年の法改正で国の関与が強まった日本原燃も共同出資の検討が始まっています。官民一体となって、原子力産業のサバイバルを目指しているのでしょうか。

仏アレバ支援の「真の狙い」 三菱重工と2018年「核燃サイクル」問題(J-CASTニュース 2016年12月18日

経営難に陥っている仏原子力大手アレバに対し、三菱重工業と日本原燃(青森県六ヶ所村)が出資する方向で調整している。同じ「原子力村の住人」として、世界的に原発需要が低迷する中、手を携えなければ生き残れないところに追い込まれているということだが、核燃サイクル維持のためというのが「本命」との指摘もある。(中略)

三菱重工としては、「目先、投資の回収の見込みはない」(三菱関係者)としても、世界で原発を売り込んでいくために、アレバに手を差し出すしかなかったというのが、業界の大方の見方だ。(中略)

日本の核燃サイクルは、「要」とされた高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まり、大きな曲がり角を迎えている。2018年は、非核兵器保有国の日本がプルトニウムを持てる裏付けである日米原子力協定の期限で、核燃サイクルのつまずきを受けてプルトニウムをどうするかという問題を突き付けられている。「米国との協定継続の交渉の上で、核燃サイクルの旗を降ろせない事情があり、そのためにも、アレバとの提携が『実績』として重要」(全国紙経済部デスク)という見立てだ。

昨年10月の新潟県知事選挙は、「脱原発派」の米山知事の劇的な勝利に終わりました。(「太陽のまちから」2016年10月16日「原発再稼働を認めない」 新潟県知事選挙米山氏の勝利の意味は限りなく大きい )

日本が脱原発に舵を切れない理由は、「原発護持派が強すぎる」のではなく、野党が「脱原発で結束できない」という点にあります。今年こそ、日本でも福島第一原発事故の教訓に学び、違いを超えて手をとりあう脱原発を実現する政治的な結集をもって、「国策変更」の鍵をまわす時だと考えています。

昨年秋、俳優の中村敦夫さんから久しぶりに連絡がありました。

東京電力福島第一原発事故から時間が経過し、風化し始めている人々の記憶に警鐘を鳴らすべく書き上げた一人芝居の脚本を見せてもらいました。さっそく、2月12日夜、世田谷区の私の会で上演してもらうことにしました。事前申込み制なので、参加希望の方はどうぞ。

朗読劇 線量計が鳴る―元原発技術者のモノローグ―&新年の集い・懇親会

昨年8月刊行で「脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか」(ロッキング・オン)を世に問いました。具体的に地域を、社会を、制度を変えるためのリアルな行動と、これまでの政治的な歩みをふりかえり、「NOよりもYESを!」と呼びかけています。ぜひお読み下さい。

脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか?』(ロッキングオン)

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