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「彼女いるの?」という聞き方、ちょっと変えてみませんか?

2017年08月05日 01時38分 JST

職場や飲み会でも一度は必ず聞かれる「彼女(彼氏)いるの?」。

LGBTと呼ばれる人の中には、その一言によって「嘘を積み重ねる」きっかけになってしまうことがあります。

相手のプライベートを知ることで信頼関係が深まり、仕事がしやすくなるということはもちろんあると思います。しかし、そこに様々な「想定」がないと、人間関係に思わぬ亀裂を生んでしまうことがあるのです。

■要求される「異性愛を前提としたプライベートの開示」

私の友人のAさんは、「彼女いるの?」という一言から、職場で「嘘を積み重ね」はじめているうちの一人。

今年から金融業界で営業として働きはじめたAさんは、私と同じく「ゲイ」ですが、そのことを会社ではオープンにしていません。

Aさんに4カ月を振り返ってもらって浮かび上がってきたのは、悪気なく要求される「異性愛を前提としたプライベートの開示」でした。

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(Aさん)

新卒研修では、話し方が柔らかいからというだけの理由で、同期から「オネエのAくん」というあだ名をつけられました。普段は軽く受け流していましたが、同期100人ほどが集まった親睦会で大声で呼ばれてしまった時は、周りの不穏な空気を感じ「オネエじゃないよ」と苦笑いをしながら否定しました。

居酒屋で店員を呼ぶ際に使うボタンが硬く、Aさんが押せなかった人の代わりに強めにボタンを押すと、周囲の人から「本当に男だったんだね」と言われたそうです。

配属先で初めて自己紹介をした後、一番最初に先輩から投げかけられた質問は「彼女いますか?」でした。同性のパートナーと付き合って約4年になるAさん。「彼女は、いません」と答えました。

取引先との飲み会で突然「お前は童貞か」と聞かれ、「違います」と答えると、「その答え方じゃダメだよ〜」と言われ無理やり風俗へ誘われました。その後もゲイをネタにするような発言があり、Aさんが「ひとそれぞれですよね」と言うと、「ノリが悪い」と一蹴されました。

「仕事においてゲイかどうかは関係ない」「仕事にプライベートを持ち込むな」という意見もあると思いますが、「本当にそうでしょうか」と、Aさんは疑問を呈します。

確かに、相手のプライベートを知って、自分のことを話す中で生まれてくる信頼関係はあります。

「勤務中に何度『彼女いるの?』と聞かれたかわからないし、飲み会では異性愛を前提とした下ネタを共に楽しむことを強要される。しかも、『これを言ったらセクハラになるけど』とか『パワハラになっちゃうかもだけど』と、ある一定の理解が進んでいるが故に、それが枕詞のようになってしまっているようにも感じます」

「コミュニケーションをとる上で、お互いに人格をつかむことが大切だということは一致しています。性のことってプライベートなことだからこそ、その開示によって信頼関係につながったと"演出する効果"がある気がします」

■経営者の視点も、労働者のまなざしも変わりつつある

Aさんの例以外に、同じゲイでも、また他のセクシュアリティの人にも様々な困りごとがあります。それは大きく2つの面に分けられるのではないかと思います。

ひとつは、男女分けが前提となっている設備などの「ハードの面」、もうひとつは"周囲の目"と表されるような、周りの認識など「ソフトの面」です。

当事者が「見えにくい」ので、問題はなかなか顕在化されにくいですが、だからこそ「誰もが働きやすい職場」とはどんな所なのか、想像力をはたらかせながら、当事者がどこに困りやすいのかを細かく把握してハードとソフトの両面で取り組む必要があります。

そんな企業のLGBTに関する取り組みは、ここ数年で増加傾向にありますが、最近はさらにそれを後押しする機運も高まってきています。

例えば、5月には経団連が企業のLGBT施策について調査し、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」という提言を発表しました。

調査では、回答した233社のうち(経団連会員企業1385社、156団体)、90%以上がLGBTの取り組みの必要性を感じ、約80%が何らかの取り組みを実施、もしくは検討している状態であることがわかりました。

今回の調査結果を見て「予想以上だった」と話すのは、政治・社会本部主幹の大山さん。

「それぞれの企業で取り組みの必要性を理解した上で「ぜひこの提言を参考にしていただいて、横展開していただきたいです」

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(左:経団連 政治・社会本部主幹の大山みこさん、右:政治・社会本部長の岩崎一雄さん)

経営的な視点も大切ですが、働くひとりひとりからの視点もとても重要です。

以前から、性的指向及び性自認に関する差別・ハラスメント禁止に取り組んできている連合は、昨年の8月にLGBTに関する意識調査の結果を発表しました。

調査によると、職場におけるLGBTの割合は8%で、大手広告代理店の行った調査とほぼ同じであることがわかりました。「職場におけるLGBTへの差別をなくすべきという回答が約8割だった」など、調査についてはこちらの記事にまとまっています。

調査から約1年が経ちますが、総合男女平等局総合局長の井上さんは「反応はものすごく大きかった」と話します。

「これまで差別されていたのが、我慢しなくて良い、おかしいことを『おかしい』と言える時代に変わってきた。それは明らかに昔の排除の社会から比べると変わっていると思います」

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(連合 総合男女平等局 総合局長の井上久美枝さん)

オリンピック憲章に「性的指向による差別の禁止」が盛り込まれ、東京五輪の「調達コード」という、オリンピックに関係する製品やサービスを提供する企業の選定基準にも「性的指向や性自認に関する差別・ハラスメントの禁止」が取り入れられています。

性的指向のことを英語でSexual Orientation、性自認のことをGender Identityと言うことから、頭文字をとってSOGI(ソジ)、性的指向や性自認に関するハラスメントのことを「SOGIハラ」と呼ぶ動きも出てきています。

冒頭のAさんの職場のように、まだまだLGBTの存在が想定されていない企業も多い現状。こうした動きが、社員にも、お客さんにも、または営業先にもLGBTがいるかもしれないという想定があたりまえになる、その後押しになることを期待します。

■心はフラットに、言葉は丁寧に

当事者の生きやすさは、良い意味でも悪い意味でも、最終的には職場にいる周囲の人の捉え方次第で変わってきます。

Aさんの例のように、飲み会でゲイについて揶揄する人にカミングアウトしたいとはなかなか思えません。逆に、日頃からいろいろな「想定」がある人は、多様性を受容する態度がその言動の端々に現れてくると思います。

例えば「彼女いるの」ではなく「付き合っている人いるの」「パートナーいるの」という言葉を使うとか。そもそもアセクシュアル(無性愛)という、性的指向、恋愛感情をそもそも抱かない人もいます。こういった質問自体が適切かどうか考えることも想定の一つかもしれません。

以前「心はフラットに、言葉は丁寧に」という素敵な言葉に出会いました。フラットな視点で、ひとりひとりに様々な「想定」がある職場というのは、きっとLGBTだけでなく、誰もが生きやすい、働きやすい職場なのではないでしょうか。