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日常品の「型」を打ち抜く 熟練職人の技

2014年09月19日 14時05分 JST | 更新 2014年11月17日 19時12分 JST

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取材・執筆・撮影 :益川量平

 牛乳などの紙パック、キャラメルの箱、名刺......。私たちの身の回りには「抜型」を用いて作られる製品がたくさんある。抜型とは、クッキーの形を生地からくりぬくように、狙った形に紙などの加工材料を打ち抜く道具。早稲田鶴巻町にある出田(いでた)抜型製作所代表取締役、出田敏明さん(76)は、今では数少なくなった熟練の抜型職人だ。「職人が作りだす細かい型は機械じゃ真似できないよ」と微笑む。

 出田さんは、大分県日出(ひじ)町から23歳で上京し、抜型職人の見習いをはじめた。「職を転々としていたときに職業安定所で勧められ、抜型職人の道に入った。気がついたら抜型の世界にどっぷりとはまってしまった」。40歳のときに独立を果たし、本のカバー、飛び出す絵本、少年雑誌の付録など、紙を中心とした抜型を制作する会社を立ち上げた。会社には6人の職人がいる。

 発注元が作成した製品の図の通りにベニヤ板にレーザーで溝を入れる。切り抜く部分の溝には、刃物を、折り目をつける部分の溝には鉄製の罫(けい)を組み込み、型を抜き出す。刃は多くの種類の中から使い分け、食品のパッケージを作るには、紙粉が飛び散らない刃を、薄い紙を扱うときには破れないように薄い刃を選び、厚い紙には厚い刃を選ぶ。刃の厚さは0.5mm、0.7mm、1mm、1.5mmの4種類。臨機応変に刃を選ぶ正確な「眼」が必要とされる。

 ベニヤ板の溝に刃を組み込むため、刃の形を変形させるのには数時間かかる。「求められたものは完璧に作らなければならない」。怪獣のキャラクターなど複雑な形をした抜型をつくるときは3日間作業を続けることもある。

 「適切に刃を選び、刃を曲げる技術を身に着けるには10年かかるとよく言われた。実際、技術を身に着けるのに長くかかったよ」。手のひらには、作業中についた傷跡がたくさんある。経験や技術、思い出が刻まれた手は職人の証だ。

(2014年8月12日「Spork!」より転載)