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スマホが子供の故郷(ふるさと)をつくる~流山市で始まるジモト発想のICT教育~ (後編)

2014年04月09日 14時10分 JST | 更新 2014年06月08日 18時12分 JST

千葉県流山市で開催された小学生によるマッピングパーティー、『マッピングパーティーながれやま2013』実行委員長の尾崎えり子さんとの対談です。後編では、マッピングパーティーに参加した親子の反応や、今後のICT教育の可能性について話し合っていきます。

マッピングパーティーの概要や開催までの経緯は前編をご覧ください。

■ 予想外に多かったお父さん参加者

酒井 実際にイベントに参加した保護者の方の反応はどうだったでしょうか。

尾崎 実は、驚いたことに、お父さんと子供での参加が全体の半分くらいになったんです。市の子供向けのイベントって、ついてくるのはほとんどお母さん。お父さんがついてきたというのは新しいと思いましたね。お父さんの感想を見ると、「子供がいつも遊んでいる場所なんて知らないから、"ここでこんな遊びをしているんだ!"ということを聞けただけでも新鮮だった」と。 そういうお父さん方の意見があったことも特徴かなと思います。

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酒井 お母さんも含め、参加者の方の満足度は全体的に非常に高いですね。行政の視点で見ると、子供の遊び場が可視化されれば、危険なことがないようケアすべき場所が明確になるという良さがありますよね。

尾崎 そういう見方もできますね。子どもたちの秘密基地って、親も知らない森の中とかだったりもするんです。誰の目も行き届かないところはけっこう危ないですが、 「危ないから入るな」っていうのは本末転倒です。そういうのが出てきたら地域パトロールが巡回ルートに入れるとか、大人がちょっとフォローできれば、街としても面白いですね。

■ スマホを通して再発見される故郷(ふるさと)

酒井 参加した小学生の反応はどうでした?

尾崎 「自分にとっては当たり前の場所でも、人に紹介するとしたら、と考えながら歩くと、まったく景色が違って見えた」と。ふだん自転車で普通に通りすぎていたところも、「うわあ、もしかしたらここって私の秘密基地かも」と捉えることができたようです。そうやってみんながどんどん秘密基地の情報を投稿していくんですね。すると、「おねえちゃんがこの場所を投稿したんだ」とか、「あ、この近くに友だちがいる」とか、オンタイムに動いていくのも、やっぱり新鮮で面白かったようです。

酒井 スマホを通して、自分達の故郷を再発見したんですね。僕はそういうところがこのイベントのユニークな部分だと思っています。最初からICTありきじゃなくて、もともとやっていた教育活動にICTをからませたら、凄く拡がりが出て楽しくなる、結果的にICTも良く分かる、ということなんじゃないかと。実際、子供の感想の中に、「衛星につながっているのを初めて知った」っていうのがありましたよね。

尾崎 防災科研の方が、スマホの使い方と一緒に、子どもたちにもわかるようにGPSの仕組みを説明してくださいました。「君たちがどこにいるかっていうのは宇宙で把握してるんだよ」と言うと、子どもたちは「ええっ、何も見えないけど!」みたいな反応があって。GPSで実際とは別の場所が表示されると、「なになに、宇宙が混乱してるの?俺ここにいるんですけど!」と言って、スマホを振ったりとかしていて。正確ではないにせよ、何とつながって、どういう仕組みで自分たちはオンラインになっているのかっていうのは、感覚的に理解していました。

end

■ ICTは、ハサミに似ている

酒井 マナーについてはどんな話をしましたか?

尾崎 個人情報というものが漏れたらどう危険なのかと、他の人にどう配慮するかがメインです。人の名前って入れていいかな?血液型は?みたいな身近なところから。ヤフーさんがクイズ形式で楽しく説明してくださいました。 写真の撮り方についても、知らない人や、よその家を勝手に撮っちゃいけないよね、という基本的な話です。

酒井 中には、なんで撮っちゃいけないんだよ、別に人が写っててもいいじゃん、みたいに思う子もいませんでしたか?

尾崎 小学生はとても素直ですよ。「ぜんぜん知らない人が自分の家に入ってたり、自分の写真を知らない人に広められたら怖いよね」というと、「怖い怖い」と。

酒井 なるほど。今Twitterの炎上が問題になっている層は中高時代からスマホを持ってSNSデビューしていて、マナーに関しては「別にいいじゃないか」という感覚が強いと思うんです。もしかすると、小学生くらいからちゃんとICTに接していると、かえってそれは防げるのかも。

尾崎 漢字の書き順に小学生は疑問をもたないじゃないですか。ある意味、すべてを素直に受け入れられる年齢ですから。だからこそ、マナーも当たり前のものとしてスムーズに入っていくのかもしれないと思いました。

酒井 親の管理下で小さい頃からたまに持たされて、危険も含めて教わるものってありますよね。もしかしたら、スマホも中高生になってフリーハンドで持たせるよりも、そのほうが安全かもしれないですね。

尾崎 ハサミに似てますよね。ハサミって人を傷つけるリスクはあるけど、とてもクリエイティブなものを作れるし、人を助けることもできる。ICTも一緒で、そういう正しい使い方を感じてもらうには使ってもらわないと意味がない。

親や学校の先生の言うことを聞きにくい年齢になる前に、ちゃんと自分の中でルールを、枠を作ってあげておくのが良いんじゃないかな、と思います。

■ ジレンマを解消するために、できること

流山市のマッピングパーティーは、小学生にICTに触れる機会を提供しつつ、地域が元々抱えていた課題をきちんと解決しているという点で、とても示唆に富む取り組みです。

「スマホは中学生、高校生になってから」という考え方もあります。ただ、中高生が何の予備知識もなく、いきなりスマホを持ち始めたからこそ、様々な事件が起こっているともいえます。

流山市のような取組みが拡がっていき、ハサミや包丁のように、小さいころから少しずつ、ICTの正しい使い方を覚えていけることが望ましいのでは、尾崎さんとの対談を終えて、そう感じました。

一方で、そもそも教える側の親世代もICTやスマホがよく分かっていないのが実情でしょう。だからこそ、「分からない、危険なモノは遠ざける」という対応しか実質的に取らざるを得ない状況が生まれています。

教育分野での取り組みだけでなく、スマートフォンやWebサービス自体がそのようなジレンマを解消するために提案できることも、まだまだ残されていそうです。