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新専門医制度は若手医師の柔軟なキャリア形成を阻害する

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先日、当院の2年次研修の女性医師から進路の相談を受けた。彼女は神経疾患、特に神経障害後のリハビリに関心を持っていた。彼女の父親が脳出血で後遺症を残しており、学生の頃から神経組織の可塑性やリハビリテーションの可能性について父親と一緒に情報を集めていたそうだ。そして、将来はリハビリの研究がしたいという夢を抱いていた。私は彼女とリハビリの臨床研究でエビデンスを積み重ねることの重要性や、iPS細胞の進歩、ロボットスーツの将来性などについて語り合った。

彼女は神経学的診察や脳卒中の急性期診療も身につけたいので、急性期病院である当院で1, 2年修行してから、リハビリを研修できる施設に移るというキャリアプランを考えていた。彼女のように高いmotivationを持って、領域横断的にキャリアを積もうとする若手医師が、将来の日本の医療を多様な形で発展させていくだろう。私は彼女のキャリアプランを応援したいと考えた。

当院では初期研修の2年間で全身管理能力や一般内科疾患の初期診療の能力を身につけることができるので、彼女の将来を考えると3年次からは神経疾患診療に集中して研修するのが合理的である。しかし神経内科が内科のsubspecialtyとなっている新専門医制度の枠組みでは、それが困難かもしれない。また、リハビリテーション科は基本領域なので、彼女の考えるキャリアプランでは、専門医取得が遅れてしまうかもしれない。もしその間に出産や育児の時期が重なった場合には、キャリアを断念しなくてはならない可能性もある。

実は彼女は近々結婚する予定もあって、もし来年度からプログラム制の新専門医制度が始まると、専門医取得が困難になるのではないかと不安に思っていた。多くの同期医師が専門医を取得する中で、自分が専門医を取得できないことには、引け目を感じるという。私はその気持ちがよくわかったので、「専門医取得にこだわらずに、自分の信じた道を進むのがよい」と彼女にアドバイスすることを躊躇した。

日本専門医機構のHPによると、専門医は「標準的医療を提供できる医師」と定義している。まず19基本領域のいずれかの専門医プログラムに入って「標準」的医師になることを要求する管理制度である。しかし、医療は日進月歩で「標準」はどんどん変化していく。各診療科の扱う診療範囲の「標準」も変化していくことだろう。

あえてその時点の「標準」から逸脱して、リスクを取って新しい道を切り開いていく志の高い若者が、医療の革新的進歩を実現させてきた例は少なくない。もし新制度が現在計画されている基本領域-subspecialty構造のままで始まると、日本の医療の進歩が阻害されてしまう可能性がある。

新専門医制度は、自分の将来を真剣に考えている若手医師達に閉塞感を感じさせている。前途ある若手医師の夢や熱意を支援する制度となるように、基本領域-subspecialty構造のプログラム制を根本的に見直す必要がある。

(2017年5月24日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)